骸
雪は静かに降り積もった。
少女は涙を流すことなく、一つの墓標の傍にゆっくりと腰を降ろした。
少し寒い。
手を擦って、白く変色した指先に息を吹きかけて、持ってきた花を墓標に手向けた。
本当は大嫌いで、こうやって墓参りに来ている今も別に何か特別な感情がある訳でもない『筈』だった。
なのに、どうしてなのだろう?
今頃になって、急に胸が押し潰されたように苦しくなった気がした。
はらはらと音もなく降り積もっていく小さな妖精達は、手向けたばかりの花束や、少女の黒髪に降り立った。
「結局、あんたの骨しか見つからなかったわ。…蛮骨」
墓の下で二度目の眠りについた彼に、少女は話し掛けた。
「ねえ、あなたは幸せだった?もう一度、この世に蘇って…」
返ってこない言葉の先に、今は何処を旅しているとも知れない、彼等と同じく無理に同じ容姿で蘇った巫女の姿を見ていた。
殺生は罪だと云うが、ならば果たして彼等の命はどうだったろうか。
彼等は天寿をまっとうして命尽きたのではなく、人の裏切りによって命を落とした。
たとえ、生前は極悪人の集団だと罵られていようと、彼等は必死に生きていたのに。
たとえ、残虐だと云われ続けていても…
「あんたは…逃げれば助かったかも知れない命を、仲間の弔いだって、あそこに留まってたんだよね」
少なくとも、彼等…蛮骨は、仲間を大切に思っていた筈だ。間違いなく。
墓標の真上の木の葉が雪の重みに耐えられなくなってばさばさと落ちた。彼等が蘇った時、使った四魂の欠片は汚れていたけれど、少なくとも今はきっと、全員安らかに眠れたのだろう。もしかしたらそれは負けた悔しさを抱えたままだったりするかもしれない。
再び死ぬ事への恐怖心を抱いたままでなのかもしれない。
確かめる術はない。
彼等が何を思って二度目の眠りについたのかも、自分のこの狂おしい感情の名を知る術も。
あるいは同情なのかもしれないが、どちらにしろ知るべきではないから都合が良かったのかもしれない。自分の中の想い人の為にも。
少女の肩に、ふわりと紅い衣が掛けられて、少女はその方向を向いた。
予想した通りの顔を見つけ、少女はその心情とは裏腹に、柔らかく微笑んで見せた。
雪よりも綺麗だと思える白銀を持った少年に小さく礼をいうと、少女はすっと立ち上がり、自分のすっかり冷えてしまった手を、脱ぎたてで暖かいその水干の着物に入れた。どことなく落ち着く匂いが、少女の鼻先をくすぐる。
少年は口数少なく、「帰るぞ」と手を差し伸べて、少女を促した。
視線を逸らせて云うあたり、きっと照れも混じった心情だろうと思う。
少女はまだ少しだけ冷たさの残った白い手でその手を取ると、場違いな声音でそっと、彼に小さな声で告げた。
「犬夜叉は、私より先に死んじゃ駄目だからね」
と。
季節外れまくってます。でも静かな雰囲気で、軽く血の連想が出来そうなもの書きたかったんです(何それ)。
少女、少年で、(犬夜叉は最後名前出たけど)名前書かれてないですけど、
まさか誰と誰のことか分かんない人なんていない…ですよね?どうでもいいけどこれはカップリング何さ?!
蛮かご?!犬かご?!ひょっとしたらさりげなく桔かご?!(大笑)
何かねー。突っ込まれる前に自分で突っ込んでおきます。
七人隊の骨ってさあ・・・蛇骨とか煉骨とかなら回収可能かもしれないけど、蛮骨のは無理だろ〜。
・・・・でも私は蛮骨のが書きたかったの。以上ッ!!(強引)
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