マテリアORヴィンセント?










美少女忍者こと、ユフィ・キサラギは、今まさに、二回目の人生最大の選択を強いられていたりする。
あ、ちなみに一回目ってあたしが6歳の時にオヤジにおやつの時間にケーキとプリン出されて、食べれるのはどっちか一個って言われた時ね。

・・・・なっ何さ!あたしにとってはその時何より重大な事だったんだからねっっ!!

ま、ともかく。
そんなピンチに陥っちゃってる訳なのですねぇ 何処ぞの暑苦しいガンマンの所為で!
ていうか、ヒトのちょっとした悪口を現実にしないでよね 融通効かないって云うか!!

そんなことを考えながら、またちらりと目の前の光景に目をやる。そして溜息をひとつ。

え?どんな光景かって?
だ・か・ら、何処ぞの間抜けガンマンが、あろーことか民間人に拉致(って、まあその相手もムキムキのむっさいおっちゃんだけどサ)されて、武器取り上げられてる上に縄で面白いオブジェみたくがんじがらめにされてんのと、その隣で薄っすら綺麗な笑み浮かべてる姉ちゃん・・・っていうか兄ちゃんの手の上にある、すっごい珍しい『マスターまほう』のマテリアいっこ。

交渉をしかけてきたのはこっちのね・・・兄ちゃんだった。
あたしが、珍しいマテリア探してるってのを、どうもヴィンセント辺りからちらっと聞いたらしくて、アイツの代わりにこれを受け取ってだってさ。要するに、それって一種の人身売買?

いつもだったら、んなもんたとえどんな相手だろうとふざけんなって言いたいところだけど、今のあたしはそうは思わなかった。ずっと苛々してたし、何より関与してんのがヴィンセント【アイツ】だもん。







ちょっとだけ、今日のお昼からのこと聞いてくんない?

この、すっごいマニアックな雰囲気漂いまくってる町についたのは、今日のお昼ちょっと過ぎくらいだった。
そん時すっごいお腹減ってたし、とっとと腹ごしらえしたかったけど、何かやけにティファとクラウドが苦い顔して入りたがらないから大分説得すんのに時間かかった。・・・・なーんか、嫌な思い出あるらしくって。
でもなんか話すのすっごい嫌がってて。

あたしも別にそんなに気になってた訳でもないし、お腹減ってたからその辺の定食屋に入った。
その時一緒に居たのはあたしとヴィンセントと、クラウドとティファとナナキだったんだ。
他のやつらは・・・・まあ、ちょっとした用事があるとかって、明日中には戻るとか何とか言ってどっか好き勝手行ってて。んでケット・シーはタイニーブロンコの中に転がってて。まあ、実際暇だったわけよ。ここに寄ったのも、一番近いからって理由だったし。

で、定食屋出てすぐ、だったかな?
なんかむっさいおっちゃんとやたら綺麗な姉ちゃんが、あたしらに気がついて近寄ってきた。
で、近くに来て気付いたんだけど、その姉ちゃんって思ってたの、実は男だったらしい・・・・・・・・・・・えっと、オカマ?(笑)

あっちは割と嬉々とした感じなんだけど、ティファとクラウド・・・・とりわけクラウドは、何かもう関わるのもいやっていう感じのオーラ全身から出して逃げようとしてたけど結局話し掛けられて嫌々って感じ隠さずに立ち止まった。

・・・・クラウドー・・・あんた何されたかはユフィちゃん野暮じゃないから後でそれネタにしてからかうまではしても(十分野暮)聞きはしないから事情ってのは知んないけど・・・・それ失礼だと思うよ あたし。

何か言い合ってたのは聞いてたんだけど、あんまし興味なかったし、よく覚えてないから会話は省くわ。
ただクラウドがうんざりしてて、ティファはナナキに何のこと?って聞かれてすっごい挙動不審やってたのだけは言っとくね。
あと、その綺麗な兄ちゃんの連れのむっさいおっちゃんが、じっと何か言いたそうな目でヴィンセント見てたけど、どーも穏便な目には見えなかったから、全然気付かない鈍感の代わりにちょっとだけ背伸びして、隣でおっちゃん睨み返したりした。

その時は別にこれといって変わったことはなかったんだけど、夕方頃になってちょっと変わった事があった。
その日だけだから仕方ないって、夕方一軒だけの宿に二部屋借りた。
んで、それからちょっとしてヴィンセントとあたしが喧嘩した。

や、喧嘩自体は割としょっちゅうだったんだけど、今回は珍しくヴィンセントから喧嘩売ってきて、んで売り言葉に買い言葉でどんどんエスカレートして、しまいにゃナナキに諭される始末だし。
そういや、もう喧嘩した内容なんて覚えてないや。どうでもよくなってるから。
でもそのときはすっごいムカついてて、最後に多分捨て台詞で
「ヴィンセントなんか格好いいからって怪しげな人にでも攫われちゃえー!!」
とか言って、それにクラウドにすかさず
「それ罵ってるっていうより褒めてるって要素の方が強くないか?」
とかつっこまれてそっか、って思い直してヴィンセント見たら何かちょっと赤くなってるっぽいし、恥ずかしくなってバカッ!とか叫びながらクラウドのみぞおち目掛けて煙球投げて宿の屋根の上に登った。

此処なら多分、暫く誰も来ないだろうし、心配もされないだろうしって思った。
ていうか煙球投げた時、煙出る直前に何か肋骨折れるよーな不吉な音したの・・・・・気のせい・・・だよね?(汗)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とりあえずごめん。クラウド。














んで、それから何時間経ったか知んないけど、肌寒さを感じで小さくくしゃみしたので目がさめた。
ていうか、寝てたんだとかも思いながら伸びをして、そして町に目をやった。

・・・・おー。さっすがマニアックなトコだけあって夜の方が活発って感じ?
呑気な事小声で呟きながら見てたら、ふと何かが小走り気味でこっちに来てるのが見えた。

小走りしてても全然可愛げのないあのシルエット、どっかで・・・・・
とか思っててふと、今日の昼に会ったむっさいおっちゃん達を思い出した。
あいつらかぁ、とか思ってたら、やっぱあいつらの目的地はこの宿屋だったみたいで、しかもいきなり客室側の壁に張り付いて、微妙に中を窺いながらなんか囁きあってた。何?物盗りでもおっ始める気?

だったらあたしの荷物だけでも取ってこよっかなって思ったけど、どう考えてもあの面子に勝てるのを揃えるつもりだったらマッチョのおっちゃん達じゃ役不足だよなって思い直して見物することにした。
今日泊まってるの、あたしらだけみたいだし、第一知り合いっぽかったのにそんなとこに物盗りなんてする馬鹿いないわな。
・・・あー、でもここスラム外だし。荒んだ生活送ってるやつもいるのかも・・・・。

そんなこと考えてたら、何か宿からがたがた騒がしい音がしてきた。始まったみたい?

どうやら入られたの男部屋っぽい。てっきりティファの方に入るかと思ったのに。
何人か吹っ飛ばされる。多分クラウドのリミット技でも喰らったかな。ティファも騒ぎに気付いて来みたいだけど宿のおっちゃん宥めてる・・・かな?あ、ナナキ吠えてる。・・・んでヴィンセント、さっきから何もやってないみたいだけど何してんだろ。

音だけだからやっぱよく分かんないや。
とかやってたらいきなりおっちゃん達退散するし。
もういいかなって思って、あたしはようやく部屋に戻った。おっちゃん達が退散した直後でもあるから、屋根から飛び降りた形のあたしに窓の近くにいたナナキが相当ビビってたけどとりあえず無視して現状を見てみた。

・・・・・て、あれ・・・・・・・・?
「クラウド・・・・・何か一人足りなくない?」

そうだ、ヴィンセント。なんか音しないなって(まああいつ普段から無口だし存在感ないけど)思ってたら本人がいない。
「あいつらが・・・・連れてった。アイツ鍛え甲斐ありそうだとか美形だからとか何とか言ってたが」
クラウドが苦々しく答えた。

何する気なんだろ?
「クラウドッ!あいつら追っかけないの?!」
でも返ってきたのは結構あっさりした答えだった。
「ここは夜中は無闇に歩き回らないほうが別の意味で身の安全なんだ。あいつらの場所は分かってるから明日の朝早くにでも行っても遅くはない・・・筈だ」

筈ってなんだ。しかもその間は何だ。
つっこみたいとこ満載だったけどあえて呑み込んで、代わりに訊いた。
「じゃあ、そいつらの場所教えて。あたしだけで十分だから」


ちなみに、クラウドの言う『別の意味での身の危険』は出てすぐ理解できたからあえて黙っとく。
ていうか思い出したくないから訊かないで。








まあ、それから今に至る訳。
例のおっちゃん達は、兄ちゃんの後ろで待機してる。ヴィンセントの武器はその一人が。縄の端っこをもう一人が。
思ったんだけど、ガンマンやってるからって武器は銃だけじゃないじゃん。
ヴィンセント、一応獣とか悪魔みたいなの(?)にもなれるし。なのになんで抵抗しない訳?

一種の苛つきが、あたしを支配していく。
さっきからあたしを挑発するみたいに、マテリアをこれ見よがしにちらつかせる兄ちゃんの言動もそうだけど、さっきの、クラウドの無頓着な言い方とか、何より今のヴィンセントの態度が一番ムカつく。

「・・・・ヴィンセント捕まえて、何がしたい訳?」
「あら、聞かなかった?彼、美形だし寡黙だし・・・何より強そうだから、スカウトしたいの。
 あのつんつん頭のぼうやには一度訊いたけどNOだそうで」

楽しそうに言う兄ちゃんの言葉がますますあたしを苛つかせる。でも、ぐっと我慢して続ける。
「はっ・・・そりゃぁ随分と強引な『勧誘』だね。生憎だけどそれ、世間一般じゃ犯罪だよ?」
「まぁ、そうなるでしょうね?何日掛かっても説得するっていう手もあるし?」

「あ・・・・・そ。」
言うと同時に、あたしは兄ちゃんの手の中にあったマテリアを奪うように取った。
そして、少し呆然とした表情の兄ちゃんに、余裕の笑みを返した。
「何?商談成立ってやつじゃん。・・・・ま、あたし たかがおっちゃんの4人や5人に簡単に捕まって、挙句抵抗も何もしないような奴助ける義理もないし?マテリア欲しいし。合理的じゃん」
「ユ・・・・」

ヴィンセントが何か言いたそうに口を開き、そして閉ざした。
兄ちゃんがにこりとあたしに微笑んだ。
「そう。じゃあこのヒト、こっちでどんな風にしても?」
「どーぞご自由に?あたしの知ったこっちゃないし」

そしてあたしは出口に歩き出す。ゆっくりと。一歩、また一歩と。
兄ちゃんが嬉しそうにヴィンセントへと向き直って、男達もまた、そちらに気をそらせた。
(今だっ!)

手のひらにこっそり留めてた手裏剣を投げる構えに持ち返して、振り向きざまに投げた。
それは狙い違わずヴィンセントの縄に切れ目を作った。そして、もうひとつの手のひらで転がってるマテリアで発動させたサンダーでヴィンセントの武器を持ってるおっちゃんの腕をちょっぴり痙攣させた。
気が緩みまくってたおっちゃんはまともにそれを喰らって、銃を落とした。

それは丁度縄を断ち切ったヴィンセントの手の中に戻って。
「ヴィンセント 今!」


あたしの言葉と同時に発砲音。
怪我人は出なかったけど、その時のヴィンセントの凄まじいこと。
あたしは暫くあいつ怒らせないでおこうと思った。多分また懲りずにやるけど。






「んで?ヴィンセント。あんたならすぐ逃げれただろうにどーして抵抗しなかった訳?」
そうやって、やっと訊けたのはその一戦があってちょっとしてからの、帰り道だった。
ヴィンセントはすっごい気まずそうに俯いて話したがらないけど、余計気になる。
「な・ん・で・な・の・か・な?」

あたしとしては最大限に優しーく訊いたつもりだったんだけど、何故かヴィンセントは固まる。
しっつれいな。
「・・・・だし・・・・」

やっとぽそっと言ってくれたけど聞こえない。
今度はぎゅ〜っとほっぺたつねって大きい声で言えって言ったらようやく観念したみたいに言い始めた。
「宿で、『昼間隣に居た娘に危害を加えられたくなかったら大人しくしろ』といわれて・・・・」

ちょっと待て。もしかしてコイツ・・・・・
「んで?それからずーっと大人しくしてた訳?要するにあたしの為だって律儀に?」
こくり、と頷くヴィンセントにあたしはただ脱力するばかりだ。

あ・・・・あああ阿呆かコイツ!!!!

いや嬉しいけど!めっちゃ嬉しいけどさ!!
律儀にも程があるだろ!てかあたしが無事なの分かった時点で反撃しろよ!!

言ってやりたい事は山ほどあったけど言葉にならない。
「ユフィ・・・」

何か困ったげな声が振ってくる。困りたいのはこっちなのに。
とりあえず、思いつく限り罵ってやるのは今日だけ勘弁しておく。

だから。とりあえず今は。

少しだけヴィンセントの体にもたれると、一言だけ、素直に言ってやった。
「ヴィンセント、無事で良かったよぅ」

ようやくって感じであたしの頭を撫でるヴィンセントの手が少し気持ちよかった。


















あの何だか迷惑極まりない集団は、一応あの人らなりにあたしらの仲を取り持とうとしていたらしい、というのをクラウドの口から聞いたのは、それから何日も経った後日だった。

(おまけ) 帰り道での会話 続き。

ヴィンセント(以下ヴィ):そういえば・・・ユフィ。お前手裏剣の狙い正確だったが・・・

ユフィ(以下ユ):あー、あれ?・・・・・・あははっ実はあれあたしが一番驚いてたりするんだよねっ!

ヴィ:・・・・・・・・・・・・・・・まさか、とは思うが

ユ:うん。あれマグレ(きっぱり)。いやぁ、人間集中してたら上手くいくもんだねぇっ

ヴィ:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(絶句)

ユ:どしたの?

ヴィ:そ、それはつまり、下手をすれば私に当たっていた可能性もあったと?

ユ:まあ・・・っていうかむしろ当てるつもりって勢いだったし?いーじゃんっ当たんなかったんだからっ!

ヴィ:それは・・・・私にとっては笑い事では・・・・・・ていうか結果論を云われても・・・・

ユ:いいじゃん とりあえず生きてるし。結果よければ全てよし!あたしもいいマテリア貰ったしv

ヴィ:お前・・・・抜け目ないな

ユ:まあね。




・・・・とりあえず懺悔します。キャラがあまりにも違いすぎです。すいません。
ていうかこの人お題一つ目から深読みしまくってます。馬鹿です。このあとクラウドはとりあえず折れた肋骨(やっぱ折れたんか)をティファに手当てして貰いました。その横ではナナキさんベッドの上でご就寝というなんともほのぼのっぽい構図ができあがってます。
無理があるよねやっぱ。

とりあえずこういうシュチュエーションがやりたくて、ちょっとでも無理が少ない場所ってどこだろうって考えた結果、某濃い場所を舞台に。コルネオの館とか蜜蜂の館はあえて無視の方向で。
とりあえず謝っときます。でも初ヴィンユフィ小説なんで許して。なんて・・・・

後で思い出したんだけど、「どーしてあんたが囚われの姫やるのさ!こーゆー場合女がなるのが一般だろ!」
とか主張するユフィにどうしたらいいものかって感じのヴィンセントっていう図を考えてたのに入れるの忘れてた(爆)






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