主夫とキャリアウーマンの華麗なる新婚生活 〜これも一つのハッピー?ハロウィン〜 |
いい加減、付き合いだって長いのだから彼女の行動パターンはちゃんと分かっているのだ。 ・・・・・・分かっていても、振り回されることを回避出来た試しはないけれど。 「ねえ犬夜叉」 ぽつりと、静かな空間に、少女の声が落ちる。 この後は大抵突然ロクでもないことを言い出すのは分かっているのだが、それでも期待せずにはいられない自分は大概馬鹿なのだろうかと黄昏つつも、犬夜叉は答える。 「何だ?」 「今日ってハロウィンよね」 普通に考えれば、「トリックオアトリート!」という流れだ。 しかしそこで簡単にそちらに流れてくれるかごめだったら自分はこんなに苦労しないだろう。 ぱたり、と栞を挟んで本を閉じる。そしてくるりとこちらに向き直った。 本格的に何かやらかす(もしくは言い出す)前兆だ。 「犬夜叉。デッドオアアライブ」 「・・・・・・・・・・はい?」 「だから。デッドオアドアライブ」 「・・・・・・・・・Once more?」 「デッド・オア・アライブ(生か死か)」 ご丁寧に言い直された。しかも区切って分かりやすく、意訳付きで。 違うそういう意味で聞きなおしたんじゃないと言いたかったがどうせ屁理屈だろうと正論だろうと彼女に口で勝てたことは一度もないので犬夜叉も大人しく口をつぐんだ(学習したということだ)。 彼女がどういう展開を望んでいるのか、分かりたくないが分かってしまい、尚且つそれでも理解したくないという気持ちが勝ってしまった為、誤魔化してみたものの誤魔化されるつもりはないとばかりにはっきりくっきり言われた。 真っ先に思うことは一つだ。 「・・・・ちょっと待て、俺何かお前を怒らせるようなことしたか?」 「別に。あえて言うなら不変的日常の一コマね」 つまり普段と何か変わったことは一つもないということだ。 まさかとは思うがあまりにも不変すぎるので変調をもたせてみたなどと言い出すのではないだろうか。まさかと思いつつこいつなら言いかねないと言い様のない嫌な予感が冷や汗として犬夜叉の背筋を伝った。 それがそのまま表情に出ていた犬夜叉に、かごめは鎮痛な面持ちで顔を横に俯ける。 「犬夜叉が悪いんじゃないの。ただちょっと八つ当たりしてるだけなの」 「潔い分、余計性質悪ィよ。」 真顔で言われて軽くダメージを受ける。いや、軽くなんてものじゃない。 クリティカルヒットだ。精神的にはすでに瀕死である。 「つーか・・・・そこ普通は『トリックオアトリート』じゃねぇのか・・・・」 「普通に言ったらつまんないじゃない。大体私別にお菓子欲しい訳じゃないし」 「つまんなくていい。」 というか、その口ぶりからして、たとえ定例に沿って例の言葉を言ったとしても、『or』が『and』になっているのではないだろうかと邪推までする(要するにお菓子もらっても悪戯する宣言である)。 それが恐らく正解だろうと予測出来るところが悲しい。 予測出来ても回避出来ない自分のかごめ馬鹿っぷりは更に悲しい。 「で?」 珍しく、無邪気な笑みをされて犬夜叉は固まる。 こういう表情をしているときのかごめは他意がない。 要するに本気でデッドオアアライブ(生か死)を選択させられている。 八つ当たりで命の危機に晒される旦那(役割的には主婦だが)なんて全国を渡り歩いて捜してもこのカップルだけなのではないだろうか。 普通に考えて『アライブ』と即答すればいい話なのだが犬夜叉は警戒していた。 何せ『アライブ(生きている)』の意味は広いのだ。 それこそ料理に妙なものを混ぜ込まれたせいで腹痛を起こして腹部が死にそうに痛くなっても、簀巻きにされて玄関に放り出されていても生きているの意味に入るのだから(尚、やけに具体的だが一応犬夜叉は だからと言ってデッドと答えるわけにもいかない。 というか、流石に殺されることはないが(そこは確かだ)悲しいことにかごめは精神的に自分を瀕死に追い込む術は嫌という程持っている。大半が『惚れた方が負け』な内容が多い。 それでも、あえてそれをやろうとしないのは自分への愛・・・・・・だと良いなと最近少し自信がなくなり泣きたくなってくる犬夜叉である。 何か嫌な汗をだらだら流しながら葛藤している犬夜叉に、かごめは小さく息をつく。 「早く答えないと2月14日にアポ○チョコ投げつけるわよ」 「かごめサンそれ行事混ざってる混ざりすぎてる」 一応くれる気はあるのかと思ったが自分が哀れなので犬夜叉は黙っておくことにした。 本気でそんな渡され方したら切な過ぎる。(しかも市販だ。今年までずっと手作りなのに) ・・・・だんだん思考がずれてきたので、これ以上ずれる前にと仕方なく犬夜叉は口を開いた。 「・・・・・ア、アライブ」 どうせ他に答えようがない。 暫くじっと犬夜叉の方を見ていたかごめはやがてゆっくりと犬夜叉の方へ近寄ると、ぽすっと彼に頭を預ける形で抱きついた。 「かごめ?」 かごめの体を支えて、抱きかかえながらも凡そらしくない態度に首を傾げる。 でもきっと、何があったと問い詰めても答えてくれないことは分かっているのだ。 黙っていることを無理に聞き出すのは好きなやり方ではない。 話してくれるのを待つしかない。たとえそれがもどかしくても、普段の言動に隠れて見えない、誰よりも臆病な部分を自分だけに見せてくれる少女に自分がしてやれることなどそれくらいなのだと、犬夜叉は思う。 「今日、一緒に寝るか?」 「・・・・・・・」 顔を押し付けたまま、こくりと首を縦に振る頭を撫でて、犬夜叉はかごめを抱きかかえた。 FIN? * * * * 最初漫画にしようとしたやつの没ネタリサイクル。・・・・したらとんでもないことになった。笑 この設定のお姫様、ツンデレですから。過去に色んなことあったせいで愛情が今日も元気に屈折中。わんこはそれ分かってるので傍から見たら一方的に苛められてるだけなのに嬉しそうにしてる姿がMに見えるという罠。違うんだよ見えないところではちゃんとわんこの方が上位だよ。 そんな感じ(?)な夫婦のハロウィンでした。先取りしすぎ自分。 (06.10.8) 「・・・・・・・・」 しっかりと、離さないとばかりに抱きしめられた腕の中でもぞりと動く。 どうしようもなく、泣き出したくなるのはこんなときだ。素直でない自分なんて捨てればいいのにとは、一緒に過ごし始めた時からずっと思っていたことだ。それでも卑怯な自分は、自分から捨ててくれとは言えない。 枷になりたくないと感じながらも、傍にいてほしいと感じる。 ひどく浅ましい感情だと思った。それでも、自分の傷を理解していた。彼の傷も知っていた。 傷の舐めあいなんて絶対に嫌だと思っていた。だから、傍にいてはいけないのだと逃げたことだってあった。一度は本気で離れようと思った。 しかし結局、離れることは出来なかった。差し伸べてくる手を跳ね除けることは出来なかった。 また、小さく身じろぎする。 昼間、不躾に自分の頬に触れてきた手の感触を忘れられない。気持ちが悪い。 それを塗り替えるように、放り出された犬夜叉の手を取って頬に摺り寄せた。 彼の手だというだけで、不快感なんて沸かない。安心する。隣で、何もしないで自分を抱きしめているだけの青年は、間違いなく自分の変化に気付いていた。それでも話題に触れずにいてくれた。 (まあ、半分は犬夜叉のため、なんだけど) 周囲からは立場が逆だと散々からかわれたりするけれど、自分を支配していいのは彼だけだとかごめは思っている。彼にその気がないから、自然と今の立場に収まっているだけで。 かごめの我侭に、犬夜叉が付き合っている。それだけなのだ。 決して周囲に対して犬夜叉が弱いという訳ではない。もし自分が嫌な目に遭ったなどと零したら、本気で締め上げに行きかねない。過去に似たような前例があるので、余計に言える筈がないのだ。 自惚れでも何でもなく、本当に自分を大事にしてくれている犬夜叉を知っている。 だから。 「・・・・・ごめんね」 小さく音を立てて犬夜叉の頬に唇を落とす。 きっとこれからも我侭を言ってしまう。頼ってしまう。 それでもきっと、この手を自分から離すことなんて出来ないから。 「だいすき」 眠りに落ちる直前に落ちた言葉がちゃんと音になったのか。 かごめには分からなかった。 ただ意識の落ちたかごめの体を、言葉に応えるように抱き返した腕が、あった。 本当は起きてて「うわーかごめからちゅーされたー大好きって言われたー」とか思って暴れたいくらい嬉しいくせに寝たフリして誤魔化してるわんことか。笑 補足すると社内セクハラに遭遇しましたなお姫。 本人割と上の方にいるし実は社長とかその辺の一番のお偉いさんら全員知り合いだったりするんでセクハラかました人は発覚次第左遷or辞職まで即日決行されたんじゃないかなあ。(・・・・・・) それうっかりわんこに言ったらセクハラかましたやつ殺しに行きかねない(そういう意味で前科あり。辛うじて警察沙汰にはなってないよ☆(・・・))ので黙ってたお姫。 なんだよ結局ばかっぷるか!(今更) お姫が武術嗜んでる設定はそういうの撃退(正当防衛)用。 見た目か弱くても熊に勝つくらい強い女の子とかに妙に憧れ感じるのは私だけですか。 |