過去話










中学の間、何故かずっと同じクラスだった。

特に気にしてはいなかったけれど、“クラスメイト”としての腐れ縁なんて珍しいことではないだろうと思っていた。どうせ、高校に入ったら別れちゃうんだ。そんなもの。

女同士の友達や、男同士の友達なら、もしかしたら違ったのかもしれない。
でも、私にとっては異性の友人は、『どうでもいいもの』の対象だった。
ちょっと特異な人だったけど、それだけ。よく分からない理屈で“アイツ”に嫌がらせをする人間に、成りゆきでとか、たまたま目撃しちゃったからとか、そういう理由で助太刀して、返り討ちにしたことはそりゃあ何回かあった。

でも私にとって、異性という存在は、・・・・まあ、過去に『ちょっとしたこと』があって、忌避するべきものの一つだったのは確かだわ(だからって、意味もないリンチを見逃すような最低人間にはなりたくないだけ)。
だから、それは“アイツ”も一緒。苛められてるからとかそんなの理由にならないわ。困ってるなら助けるけど、仲良くなる義理ないもの。・・・確かに、何回かそんなことがあるうちに、“アイツ”の、結構シビアな過去とかを知る羽目になったりもした。逆に私も、知られたりもした。
うっかり、自分で言っちゃったりもしたけど、慰めるつもりは今もあのときもない。
傷の舐めあいって趣味じゃないから、慰めなんてしない。
ただ、何で“あいつ”の周りの人達が、酷い目に遭ってた“あいつ”を助けてやらなかったのだろうって、ちょっと腹は立ったけど、それだけ。

だって、そうじゃない。“あいつ”は、他の人と何一つ変わらないんだから、特別視する必要ないもの。(どっちかっていうと、環境のせいで素行は悪いけど頭いいんだもの。苦手な数学分野は情けないながら、結構アイツに教えられたりもしたし。逆に教え返したことが大半だけど)

でもそれも、高校に行ったら終わりだって思ってた。

だって、自分で言うのもなんだけど、私には友達が多い。でもそれは、云ってしまえば女子だけに限られる。さっきも云ったけど、『ちょっとしたこと』のせいで、私は恐怖症とまでは行かないけれど、男性というものに対してちょっとした嫌悪があった。

勿論、それだけの理由で男子生徒全員蔑ろになんてしないわ。学級委員だって任されてたのに、クラスを纏める人間が率先して差別してどうするのよ。
そんな訳で、クラスメイトの範疇内だけでの付き合いのあった男子っていうのは結構いる。
けど、結構深く関わり合いになった男子は“アイツ”だけだった。
そういう意味では、あの頃は気付いていなかったけど、私たちは案外、仲がいい部類に当てはまっていたのかもしれない。でも、合えば結構すごい言葉の応酬になっていたし(まあ、それも楽しかったんだけど)、その言い合いのせいで私も随分、いかに少ない台詞の中で相手に大打撃が与えられるかを考えたりしていたせいで、語彙が伸ばされたものだわ。(・・・これはあまりいいことじゃないわね)

話がそれちゃったけど、とにかく、私たちは多少は仲がいい部類なんだと思うけれど、特に約束らしい約束も、将来の夢なんかも語り合うような、一昔前の男同士の青春ドラマみたいなこともしたことはない。だから当然、高校に行けばもう街角で偶然、でもしない限り合わないんだろうなって思ってたんだけど。

一緒の学校に進学してたらしい(それに気付いたのは、合格発表当日。遅すぎる)。
お互い、馬鹿みたいにぽかんと顔見合わせちゃって、合格した喜びも吹き飛んでしまった。
しかもそれだけじゃないのよ、クラスまでまた一緒なのよクラスまで!

思わず「何の呪い!?」と言ってしまうと「こっちの台詞だ!」と言われてその場でまた喧々囂々の言い争いに発展しかけたけれど、そこは私がぐっと抑えたわ。入学式当日から目立つ真似したくないもの。
・・・・まあ、それは多分儚い思いなんだろうなっていうのは、“アイツ”と一緒のクラスになった段階で、想像はついていたけれど。


昔々、妖怪と呼ばれる種族がいて、その血を濃く継いだ者の中に、それが身体的特徴として出て来る者がいる。それが“アイツ”もとい、犬夜叉。
今ではその妖怪と呼ばれている種族は絶滅しているし、その血を継いでる者だって、妖怪にあったと云われている凶暴性や、人肉を好む性質というものは一切ない。ちょっと頭が他よりいいとか、ちょっと運動神経がいいとか、ちょっと容姿が他より変わってるとか、その程度。
でも、これはあくまで定説で、実際のところ、根拠はない。
私としては、頭がいいとか、運動神経がいいとか、そんな言葉が単なる僻みに聞こえて嫌いなのよね。だって、そんなもの、ハンデのある子ならともかく、健常って云われてる人達だったら、努力さえすればそんなものどうにかなるじゃない。
大体、人間で、“一応”頭も運動神経もちょっと人並み以上って定評貰ってる私はどうなるわけ!?

とは思うものの、世間一般で、そういう人達の風当たりが厳しいことはもう当然のことだった。
犬夜叉たちのことは、ひとくくりにして“半妖”という総称で呼ばれる。圧倒的に“人間”の多い社会なので、当然優れている者であろうとも、そういうものは異端視されるらしい。それが当たり前で通ってる社会なんて間違ってるとは思うものの、私一人でどうにかすることなんて出来ないし、犬夜叉一人でどうにかするなんてもっと出来ない。


・・・・・・何となく、犬夜叉のこと護ってあげなきゃって思ってるのかもしれない。
そんなこと、あいつの目の前で言おうものなら『余計なことすんじゃねぇ!』とか悪態つかれて終わりなんだろうけど。そして、私も『素直じゃない!』ってわざと言い返して終わるんだろうけれど。

本当は、知ってる。

犬夜叉の過去なんて、私は知らないし聞き出す気もないけれど。
そして、今の犬夜叉が十分強いことも知ってるけど。
本当は、ものすごい寂しがりやだってこと。知ってしまった。

だから、まあ、仕方ないわよね。

また関わる機会を与えられたっていうのなら、私は多分、あいつを見過ごすなんて出来ないし。
余計なお世話だって毒づかれながらでも、いくらでも首突っ込んで、口喧嘩して過ごしてあげる。
本気で嫌なら殴って拒んでみなさいよって、また言って何回だって余計なお世話するわ。


それに。
腹の立つことに、男女の体力の差を差し引くとしても、(だって、自分より体格の大きい男の人でも二人くらいまでなら余裕で倒せる私にそんなハンデなんていっそ侮辱よ侮辱!)アイツには体力的には勝てたことがないのだ(頭脳的には数学以外は勝てるのだけど)。
それも、『女だから』って手加減された上で、それでも勝てない。

流石に、もう高校に入ったんだから、そんなことをいつまでもしているつもりはないけれど、それでもやっぱり張り合いたいという気持ちはある。だって、楽しいんだもん。
あいつと、言い合ってるの(自惚れじゃないなら、多分あいつも一緒)。

だからきっと、腐れ縁が解けない限り、私は犬夜叉と一緒にいたいと思うし、助けたいとも思う。
慰めるのは、嫌い。犬夜叉が、理不尽なものに負けたって、私が肯定するみたいだから、だから絶対にしてやらない。
慰めるようなことになる前に、私が助ければいいんだもの。


だから、この縁が切れる束の間だけ。


私は、願うの。

こうやって、馬鹿みたいに言い合ったり競い合ったり出来る時間が、
途切れたりしませんようにって。










太陽と蒲公英






(06.11.19)

姉御肌ですごい男勝りな中学高校時代のお姫様です(笑)
でもこれは対わんこへの態度であって、普段は明るく元気で日々健全に生き、色んな人から好意を向けられるけど一切気付けない(笑)女の子ですよ。
実家が日暮神社なのは変更ありません。空いた敷地内でちょっと資格持ってるからと爺ちゃんがやっている合気道とかやってるうちに知らず強い人になってたり。最初は興味なかったんだけど『ちょっとしたこと』がきっかけで男より弱いの駄目だ!と鍛えてたらわんこと関わるようになり実戦経験も踏み(※普通の女の子はありえませんよかごめ様)徐々にレベルアップ中。笑

すごいあっさりした性格だし、世間的に差別が酷いと理解している半妖の犬夜叉に対して『だから何?』とあっさり言っちゃう子です。どうでもいいんじゃなくて他と何が違うのと素で言う子。
付き合いそんな深くないよとか言いながら実は相当ディープなお付き合いしてますが自覚はありません犬かごご両人。お互いものすごいレベルで気を許してますがやはり自覚は(略)

ちなみに友情です。恋愛感情一切芽生えてません。あえて言うなら母性が目覚めかけてます(笑