うぇぶはくしゅログ。


何か個人的にエロ&バカップル特集だったらしい(笑)

目標→エロ雰囲気にオチつける(つけんな)




触れる熱





きしりと響くスプリング。ぴたりと閉められた窓の隙間から僅かに流れ込む夜気。
真っ暗な空間に、二人の異性。

それだけで、心臓はばくばくと暴れていた。



どちらからともなく、存在を求め合うように自然と抱き合っていた。
ひとつ、ふたつの言葉さえあれば、あとはもう何も要らない。
同じ空間で、同じ時を重ねることさえ出来るのならば、それだけで二人は最上の幸せを手に入れられた気がした。
「いぬやしゃ」
甘い声が、少年を呼ぶ。答えるように、少年は少女の髪を梳いて小さく笑いかけた。
お互い、鼓動はとても早くて、思考も纏まらないくらいに嬉しさを感じていて、しかし、この腕を離れることは考え付きもしなかった。
向かい合った顔。交じり合う視線。共有する温もり。


――――共感する、喜び。


きしり、と。少年の身動きに、もう一度ベッドのスプリングが鳴き声を上げる。
体重を膝で支えながら、少年はゆっくりと少女の顔に自分の顔を寄せて口付ける。

額。瞼。鼻の筋。頬、耳の後ろ。・・・・・唇。

「ん・・・・」
唇にそっと重ねると、少女は空気を求めるように小さく声をもらす。
啄ばむような可愛らしいそれに満足したような、とろんとした瞳に少年は余計に愛しさを感じて、口付けの合間にそっと少女の名を呼ぶ。
「かごめ」
呼ばれて少女は嬉しそうに少年の頬へ触れる。少年も愛しそうにその手を包み込む。
やがて少年はゆっくりと身を起こして少女へ覆い被さる様に、体重の負担はかけさせないように肘で上体を起こして重なる。
「犬夜叉?」
きょとん、と音がつきそうな、大きな瞳が少年を見返す。この体勢が、何を示すものか、わからないでもないだろうに。
その無垢な眼に少年は余計、情動を煽られる。

そっと、甘美な果物をつまみ食いするような気持ちで、少年が少女の首筋に軽く甘噛みを施すと、少女の体が怯えたように痙攣する。
どうせ最後まで行き着くことは少年は考えていない。少女を大切に想い、壊したくないと思う反面で何もかもを自分の前でだけ、曝け出させたいという欲求に駆られるけれど、それよりも大きく少年を押しとどめているのは、少女の意思だ。無理強いなど最初から望んではいないのだ。
だからこれは、つまみ食い。
「や、犬やしゃ・・・・・ッ」
怯えたように顔を背けて、少年に触れていた手は退けるが、その身体を押し返すようなことはしない。
少年が、好意ある者に、ひいては自分に拒まれることを恐れていたのを感じていたから、拒むようなことはできなかった。否、たとえそうでなくても少女が少年を拒むことなど出来なかったのだ。
少女の中にあるのは、好いた男に何をされても良いと願う心と、あらゆる倫理や概念、かの巫女に対する罪悪感に縛られ、そうしてはいけないと自制をかける心。それは相反しながらも両立されていた。
そのことも少年はよくよく理解しており、拒む理由の半分ほどが、己の所業にあることも理解していたからこそ、何も言えなかった。
困ったように笑うと、少年は祈るようにかたく閉じられた瞼の上にそっと口付けを送って、せめてとばかりに豊かな胸元にひとつ、紅い印をつけてやる。

ようやくとさりと身をベッドへ沈めると、再び少女の華奢な肩を熱が逃げ出さないよう抱きしめた。

「・・・?」
気配で異変にようやく気付いた少女はゆっくりと瞼を開けて、少年を向く。僅かに湿った瞳が余計に少年の情動を煽るが、そうとは気付かれないうちに少年はその情動を噛み殺してもう一度少女に、少女にしか分からないほど小さな笑いをこぼす。

片方の腕を取り、少年は恭しく少女の手の平に唇をつけて、悪戯っぽく笑った。
「忘れるな」
こうして、ここで少女の存在を求めている者がいるということを。
その枷がこれからの執着へ繋がる。自分という存在を忘れられなくする鎖になる。
空の広さを教えてくれた存在に、なんて仕打ち。口の中で笑いながら少年は自嘲した。


心のこもっていない美辞麗句を吐き出すなんて、到底自分には向いていない。
歩んでいく道の先が照らされていないとしても、確実に足を踏み外すことがないのは、この少女のお陰であり、なくすわけにはいかない。

(そう、どんなことをしても、絶対に)


あいしているひとに、あいしているといってはいけない業。

もう、その想いがどんなに狂って溢れ出そうか、分かっていないのは、お互いに同じ、なのだ。





オチつけれんかった・・・・(沈)








ふに肌




それは何も、犬夜叉に限ったことではないが、男性というものは大体が確実に柔らかい肌が好きだ。

「・・・・・・・あの、犬夜叉 サン・・・・・」
「ん?」
無碍に押し返すことも出来ず、かといってウェルカム!な態度を取るわけにもいかず、かごめは自分を抱きしめてくる少年の腕を申し訳程度に押し返してささやかな抵抗をしながら声を掛けた。
どうせ、嬉しそうな声が返ってくるのだろうと予想していたら案の定、言葉尻の上がった少年の声が小さく返って来た。その声を聞いた瞬間、こちらとしてはノックアウトだ。もう反論する気も起こらない。


後ろ抱きに抱かれて、胸が明らかに犬夜叉の手に当たっている。
勿論、少年が気付いていない筈がない。わざとである。
「・・・そんなに胸好き?」
それは、犬夜叉に限ったことではないが元よりの男性に対する疑問だ。すると犬夜叉は一瞬の間を開けてこの質問に訂正を入れて答えた。
「胸が好きなんじゃなくてお前のだから好きなんだよ」
「さらりと言わないで下サイ。」
さすがに予想していなかったここまでストレートな物言いにかごめは恥ずかしさのあまり、両手で顔を隠してくぐもった声で返した。一方の犬夜叉は不服そうに眉をしかめながら大真面目な表情で言うものだから性質が悪い。
「事実言ったまでじゃねえか。」
「あんた何でこういうときだけ開き直るのよ」
いつもは照れて口付け止まりなんて多々あるくせに。
そう言ってやると、犬夜叉は少し鼻白んだように詰まり、別にいつも照れてるわけじゃ、と言い訳がましくぶちぶちと文句を言い始める。かごめも、照れだけで少年が自分に手を出さない訳ではないということを十二分に承知しているのでこれ以上のつっこみは入れない。
「・・・・・・・・・・・・・・・」

むに。
「!」
唐突に、露骨に触れられてかごめは反射的に「おすわり」と叫びかけたが、「お」も言っていないうちから犬夜叉に口を塞がれてもごもご言うしかなかった。悔しくてばたばたと両足だけばたつかせていたが、それも変なとき器用な犬夜叉に片足で押さえられてしまった。
そのときようやく解放された口で一言文句を言ってやらねば、とかごめが後ろを振り向こうとするより早く、犬夜叉の手がかごめの顎を捉えてくいと後ろを向かせる。


後は、文句を言うのが早いか、問答無用で口付けされるのが早いか。
いや、むしろたとえ文句の方が早かろうが、まず間違いなく口付けされるのは確定事項だったのだ。
「ッ・・・・ふ」
最初、それでも抵抗してやろうと口を開かないようにしていたが、ついと背筋を撫でられてつい思わず僅かに唇を動かしてしまった。しまった、などと思った頃には手遅れだ。隙を逃さず入ってきた犬夜叉の舌の動きにヤラれて―――予想通り、離してもらった頃には赤い顔でぐったりすることになった。
「あ、んた最初の頃、そんなことできなかったくせに」
「慣れた」
けろりと言われては言い返すことも出来ない。
それにしても開き直ると異常なまでの吸収力を発揮するという適応能力の高さを戦闘以外でもいかんなく発揮するのは、発揮される側としては少々勘弁して欲しい。
腰砕けて本当に立てなくなりながらかごめは思う。
しかも、結局うやむやにされた胸触られた云々はいまだにされているし。誰か呼んだらこの現在調子に乗ってる男を張り倒して助けてくれるかなーとか思わないでもなかったがそうしないのは、結局何だかんだ言いながら自分も、(さすがにここまで過剰なものは望んでいないが)少年に触れられることが好きだからなのであって。
「・・・・こーさん」
「ご愁傷様」
なんとも可笑しそうに喉の中で笑いながら犬夜叉は白旗を振ったかごめの体を抱きしめながらその感触を楽しんだ。




「今度、マシュマロ持ってきてあげようか?」
「ましゅ・・・・?なんだ、それ?」
「柔らかくて甘くておいしいお菓子」
「・・・・要らねえ」
「どうして?柔らかいの好きなんでしょう?」
「もっと美味くて柔らかいもの知ってるから、んな代用品みてぇなもん要らねえ」
「・・・・・・・・・・ばか」





触られてくすぐったいしか思わない=まだ清らかというすごい分かりにくい主張。
犬夜叉VSかごめ・・・最近珍しくかご嬢惨敗続きだなあ・・・。










恋愛は惚れられた者勝ち。




「というか、惚れさせた者勝ち?」
「はあ?」
黙りこくって何やら色とりどりの紙面(週刊誌)を読んでいたかごめの唐突に発した声に、犬夜叉は不可解とばかりの声を上げた。
「いきなり何言ってんだお前?」
「あ、口に出してた?」
「思いっきり出してた」

ぱたりと紙面を閉じるとかごめは大して興味もなさそうにいそいそとそれをリュックサックの中にしまい始める。もっとも、週刊誌なのに既に刊行されて二週間以上経っているものを読み返すことの馬鹿らしさというか、不可抗力ながらも現代のニュースについていけなくなっている自分に少しげんなりしているとも言える。

そんなことを少年に愚痴ったところで、何も変わらないので黙っているが。
「何が勝ちなんだ?」
いつもよりも食いつきのいい犬夜叉は、かごめを引き倒して自分の胸の中に収めてやると、他意もなくきょとんと首を傾げて訊ねる。素で、かごめの弱い表情を作るので始末におけない。とはいえ、言うまでもなくそれは犬夜叉から見たかごめもそうであるので、お相子だが。
「・・・・・恋愛特集?で、惚れるより惚れさせた方が勝ちっていうか。なんかすごい今納得しちゃって」
犬夜叉にされるがままになりながら、諦めたように口を開いたかごめに、犬夜叉はますます首を傾げる。
「どういう意味だ?」
「そのまんま。やっぱり、惚れられた人の方が惚れた方より少しは余裕あるのかなって。だから優位にも必然的に立てるというか。・・・あー、何言ってんだろ、私」
自分で何が言いたいのか分からなくなり、かごめは軽く頭を抑えた。
「惚れた奴より惚れられた奴が、ねえ」
感慨深げに犬夜叉が言葉を復唱する間にも、かごめはするりと犬夜叉の腕の中から抜け出る。
「やだなあ、私結構、負けず嫌いなのよ?」
「俺も自他共に認める負けず嫌いだけど?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


ぷっ。


同じことを考えていたらしいのがどうにもおかしくて、犬夜叉とかごめは同時に吹き出して、気が済むまでお互いに笑った。
「じゃあ、両方負けってことで」
「それならまだ、納得できるか」
「でも私、あんたより自慢できるから。あんたのこと好きなの」
「いーや、俺の方が自慢できるな。お前のこと好きなの」
「・・・・私の方が、すきだもん」
「俺の方が愛してるぞー?」




・・・・・・・・・・・・・。

にこにこにこにこにこにこ。



「・・・・・・・・ごめんなさい。負けました」
「うし。じゃあ俺の方が勝ちだな」
「総合的に負けてまで勝ちたいわけ?あんたは・・・」
「お前こそ」
ぎゅっと、もう一度抱きしめられて、かごめはついに降参する。

駄目。この人のこと好き過ぎて勝ちすら譲りたくなるのは末期だわ、と。





「・・・・・・・・・・・ていうか、あそこのすごい惚気しまくっているお二人、誰か止めて下さいよ」
「無理。あの空間に突っ込んだだけでこっちまでやばくなる」
「やばくなったときは私が手厚く包んであげよう!」
「えーい!調子乗るなこのスケベ法師ッ!!」



「こっちは弥勒の方が負けらしいのぅ、雲母」
「み」


そんな会話が蚊帳の外で行われているなんて、ちっとも気付けない時点で、末期だったりするのに気付くのは、随分あとになってから。






誰か砂吐き用のバケツ用意してー。誰だよこんな甘さ通り越して辛いとまで感じる勢いのラブラブ考えたの(お前だ)
やだなあ。うふふあははって砂浜さわやかに走ってそうだよこの二人(笑)










惚気と愛情と親愛と。





「かごめ見たい撫でたい触りたい抱きしめたい口付けしたい・・・・」
「煩悩の塊かお前は」

木の上で器用にごろごろ転がりながら、半ば呪詛のように呟き続ける犬夜叉の独り言に耳を傾けると、そんな言葉が即座に口をついた。
そのつっこみにより、犬夜叉の視線が一瞬だけこちらに向かうが、すぐに興味なさそうに視線は空に向けられる。その視線が如実に、放っておけと言っていたのは分かっていたが、どうにもこのまま立ち去るのはなんとなく癪だ。
弥勒は大袈裟に溜息をつきながら、やがてにやりと意地の悪い笑みを浮かべる。
「は、そんなにかごめ様と触れ合いたいか」
「・・・・・だから何だよ」
既に、会話するのさえも億劫と見える。返答の声音すら覇気がなく、このだらしのない姿を一度でもかごめに見せてやりたいと弥勒は思う(見せるまでもなく、かごめは知っているのだろうが)。
「いや、可哀想な奴だな、お前も。私なんかかごめ様が兄のように慕ってくれているから望まなくてもあちらから触れてくれているというのに」
その言葉に即座に、犬夜叉の眉間に青筋が立ったのは言うまでもない。それを狙って言ったのだから。
それ以前に、こちらに触れてくれるとは言うものの、それは実際、犬夜叉に対して触れてくるときとは感情も回数も圧倒的に異なっているのだが、かごめギレしている少年には神経を逆撫でする言葉にしかならない。
それまで、やる気のない夜行性動物よろしく緩慢な動作しかしていなかった少年の動きが瞬時に獲物に狙いを定めた肉食獣のように早まる。
「喧嘩売ってんのかてめぇ」
「そっちこそ」

感情こそ違うものの、何となく悔しくなって対立。
お互いにそれは分かっているのだが、なんとなく釈然としないのだ。

「・・・何しとるんじゃ?二人とも」
無言で火花を散らしあう男二人に、いつのまにか近くにいた七宝はきょとんと首を傾げる。
しかし、七宝の言葉には答えず、犬夜叉と弥勒はそれこそ決闘前の好敵手と対峙するかのような雰囲気を醸し出していた。
「はっ、珊瑚に飽き足らずかごめにまで手を出そうとしたらただじゃおかねえぞ」
「当然。将来の伴侶と決めているのは珊瑚一人だけです。だが、別の意味でかごめ様は同じくらいに大切な方。お前の邪念まみれの思考に付き合わせるくらいならば私はお前とくっ付くの、認めないぞ」
「お前はかごめの親父かよ。んなことお前にどうこう言う権利ないだろうが。かごめだって望んでるに決まってるだろうが俺と一緒になること!」
「思い上がりも大概にしたらどうです?それでかごめ様が嫌がったらお前完全に情けないぞ?」
とは言ってみるだけである。かごめがこの少年にベタ惚れなのは今に始まったことではないし、多分少年が動きを見せればかごめはすぐに了承するだろう。

「うっせぇ!これでも大事にしてんだよかごめのことッ!だから口づけ止まりして」
「おら、かごめに口付けしてもらったことあるぞ?」



しーん。



飛び入りの声に、思わず口論の声も止む。
誰の声か、は言うまでもない。そのまま犬夜叉と弥勒の口論を聞いていた七宝である。
ぎぎぎ、と鈍い音を立てるような動き二人は七宝を向く。すると、自慢の尾を憤慨したように振りながら七宝が頬を膨らませていた。
「おらだってかごめに口付けしてもらったこと、何回もあるぞ!風呂にだっていつも入っとるし」

単なる子供の対抗意識、恐るべし。

時々あるとはいえ、かごめからの口付けなんて滅多にしてもらえない犬夜叉(が、お返しとばかりにもっと濃い口付けをしているのがこいつだが)が、たとえ子供の言葉とはいえども腹が立ったのは言うまでもない。
そして、トドメの一言。

「いつも一緒に寝とるし、おらの方がかごめのこと大好きじゃ!」

何度も言うが、単なる子供の対抗意識、恐るべし。そして今更だが、かごめのことになると特に心が狭くなる犬夜叉の独占欲も、恐るべし。
「てっめぇぇらぁぁぁ!!!」
ぶつり、と鈍い音を立てて理性の糸が切れた気がした。

やばい、と咄嗟に感じた弥勒は即座にその場を離れて、一応安全地帯と思われる場所まで移動する。
すると、それまで弥勒のいた場所に荒々しく犬夜叉が着地して、一気に睨み付ける(辛うじて殺気立ってはいないが本当に辛うじての話である)。

その場に一抹の緊迫感が漂い、誰か動けば死者さえ出かねないと思わせるプレッシャーが互いの動きを牽制する。その場に
――――

「胸、揉んだことあるけど」
一斉にそちらを向く三人。声の先にはいつのまにいたのか、珊瑚が静かに佇んでいた。
彼女は、無表情に少しだけ笑顔を混ぜたような表情でじっとその三人を見つめていた。

痛すぎる沈黙。先にプレッシャーに潰されそうになっている七宝は喉を鳴らした。



ふと、珊瑚は三人に笑いかける。
嘲笑でも、楽しい笑いでもなく、ただただ勝ち誇ったかのような冷笑。
「お風呂いるとね、そういう話よくするんだ。お互い胸の触りあいっこなんて普通にやってるよ?」

そういい捨てると、珊瑚は颯爽とその場を立ち去る。
残された三人は、というか、犬夜叉は動かなかった。もとい、動けなかった。

「・・・・あー、うん。さすがにからかいすぎた。すまんな、犬夜叉」
「おらも、ちょっと調子に乗っとったかもしれん。すまん」




「俺だってまだ服越しでしか触ってないんだぞ馬鹿野郎ー!!!!!」



硬直から脱した犬夜叉が叫んだのは、10分後。

そんな、かごめ帰郷から、10日経過したとある日の一行の会話(笑)。






というわけで珊瑚ちゃん最強伝説をここに記録いたします(笑)
どっかの木陰にこの言い合いに混ざりたかった巫女様がいるなんてそんなこと ない ヨ(棒読み)












夜中の一人反省会。




「ん・・・・・」
身じろぎした少女に気を遣い、少年は極力衣擦れの音すら立てずに寝床から這い出した。
この状況は確かにおいしいとは思うけれど、長時間このままでいたら毒でしかない。
こちらとしては、少女に何の憂いもなく安眠を与えたいと思うものの、反対に男として、このまま少女をめちゃくちゃにしてしまいたいと願う願望もあるわけで。
いくら自分の所業であろうと、いくら少女が許してくれようと、いい加減な態度を見せる自分にはそうすることを許容される資格もしていい理由もなかった。――勿論、据え膳を添えてくれるというのならば、話は別だが。
故人の残した言葉通り、それは男の恥である。
(っとに・・・俺も大分ヤキが回ったというか・・・・)

不満はない。自分でそう決めて、実行していることだ。時々無性に少女を抱きしめたくなる衝動には駆られるが、大方仲間の存在のお陰で、抱きしめる以上のことを少女にしようと実行に移したことすらない。
(いや、ほらあれだ・・・・口付けとかはするけど、うんそれ以上はまだ・・・)
自分の行動を省みて思わず誰にともなく言い訳じみた科白を心の中でだけ呟くものの、ツッコミのないのがやけに虚しい。いや、たとえ口にしていたところで、かごめと自分しかしないこの部屋の中で誰かにつっこまれるなどというのは勘弁して欲しい。怪しい行動なんてひとつも取っていないが、いいからかいの材料にされるのは火を見るより明らかだった。
「しゃ・・・」
「!・・・・・かごめ?」
唐突に聞こえた少女の声にもしかして起こしてしまったかと思い、顔を覗き込んだが、かごめは相変わらず無防備な寝顔を晒しているだけだった。先程と違うところと言えば、そう。
犬夜叉の水干の着物の裾を「行かないで」と訴えるかのようにぎゅうっと握っているところくらい。
「・・・・・・・・・・・」
無意識だろうが、これ以上にないほど嬉しくさせるその行為に犬夜叉は自然と口元を綻ばせた。
「どこにも行かねえって言ったのに」
こいつの信頼回復するにはまだまだ道は長いな、と犬夜叉は苦笑した。しかし、それも悪くはない。信頼を回復させていく過程で見せるかごめの全てが愛しくて、信用を一つ一つ、取り戻せた瞬間が楽しくて嬉しい。

さらり、と黒髪に指を通すと、かごめ本来の甘い匂いが犬夜叉の鼻腔をくすぐる。
思わず衝動的に、顔を下げるとかごめの唇にそっと触れるだけの口付けを落とす。しかしすぐに、少女の眠りの妨げにならないように顔を上げた。
そんな一連の犬夜叉の動作にまったく気付いたような風もなくすやすやと眠り続ける少女の髪筋を辿り、犬夜叉もようやく諦めたようにもそもそと布団の中にもぐりこむ。

まるであつらえたかのようにすっぽりと腕に収まるかごめの体を緩く抱きしめて、犬夜叉は琥珀色の瞳を閉じる。
・・・・・こんな状態だから、雑念が消えるまで暫く眠れそうもないけれど。
(俺はもう、お前のこと裏切ったりしねえから)

過去を忘れることはしないけど、今に希望を持つことくらい許されるのだと教えてくれた少女に。

少女と生きることが、自分の希望だと伝えられたらどんなにいいだろうと、思わないことはないのだけれど。

きっと少女は言わなくても悟っているだろうし、いいや、なんて思ってゆっくりと意識を離す。


後に残るのは、二つの小さな息遣いと、無意識に繋がれた手のぬくもりだけ。






ここ何処?(だからまた他人事のように・・・・)










置き場所が確定するまで一時保管な猫かごめネタバレ話。




「ごめんね、最後だから、我侭に付き合って欲しいの」

「私、あなたのことが好きでした。・・・ううん。好き以上に、愛してて、愛してる以上に愛してました。愛してます。きっとこれからも、ずっと」

綺麗に笑う少女の笑顔は、今まで見た何よりも綺麗で、哀しげだった。


あの愛らしく、無邪気な笑顔はもう、ない。


「この気持ちを教えてくれてありがとう。最後なのに、こんなこと言ってごめんなさい」


それは“彼”を縛り付けることにしかならないと分かっていても。

どうしても、伝えたかったのだ。

「ッ・・・・馬鹿野郎」

腕に最後の抱擁と、その小さくいとおしいぬくもりを抱きしめて、“彼”は少しだけ泣いた。

出会いも唐突なら、別れも唐突だなんて、反則ではないか。

やっと気持ちに気付けた矢先に、こんな仕打ち。

「あいしてるの。犬夜叉」

「ぁ・・・・・」

するりと、腕がすり抜けて。

少女は綺麗な笑顔を浮かべて“彼”を見つめた。

まるで、二度と忘れまいと、眦に焼き付けるかのように、じっと。



伝えてはいけない。

伝えてはいけないのだ。

どれだけ少女をいとしく思っていても。

「かごめ」

もう、その名で呼びかけても、次の瞬間には二度とこの姿を見ることはできないのか。

呆然と立ち尽くす“彼”に、少女はもう一度近付いて、そっと無防備な唇に自分の唇を重ねて、熱を共有する。

一瞬の、こと。

「最後まで、何もかも押し付けてごめんね?何も返してあげられなくて」


ごめんね。



そう言って少女は笑顔のまま、瞳から雫を零す。
くるりと振り返り、その背はどんどんと小さくなる。

待て、と反射的に声を出そうとして、声が出ないことに気付く。

( かごめ かごめ かごめ )

口の中で叫んでも、声として出てこない。少女の背中はとても小さくなり、やがて見えなくなる。





そうして、暗転。

いや、暗転と呼ぶべきだろうか。それとも、意識を浮上させたというべきだろうか。

汗でじっとりとしたシーツを蹴飛ばして、“彼”は悪態を吐く。

そんな少年を、「どうしたの?」と心配してくれる少女は、もういないのに。

しんとした部屋の中。リビングへ出ても、生き物の気配なんてありはしない。

名残のように、キッチンテーブルに飾られた花は随分と萎んで見えた。

「かごめッ・・・・・・」



ああ、もう名を呼んでも、答えてくれるひとはいないのか。

ようやく、気持ちを認めることができたのに。

ようやく、失いたくない場所を見つけられたと思ったのに。

ようやく、愛するひとを見つけたと思ったのに。





もう、そこには誰もいない。





朝の日差しを受けながら水滴を反射する光が、少女の最後に飾った花の葉を飾っていた。




さようなら。

二度と会えない人。







書きながら少し泣きそうになりました。
猫かごめの話がまったく進まないので、とりあえず先にこの話終了後の犬夜叉の姿をと思いまして。

最後まで泣かなかったかごめ。
負うべきものから逃げてはいけないのだと、分かったから。
愛する人との決別。たとえ二度と会えなくても、その身を死神に委ねるとしても、成し遂げるべき目的があるから。







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