うぇぶはくしゅログ。



突発ネタ






「かごめ・・・・」
「い、ぬやしゃ・・・・?」

真摯な瞳に射竦められ、かごめはびくりと身を震わせる。
近い吐息が頬にかかり、掴まれた腕は、触れた先から体温を上昇させてゆく。

なんとなく、次の瞬間に何を言われるかを予測できたのだ。
かごめは恐る恐る、しかし臆せず犬夜叉の琥珀色を見返して次の言葉を待つ。

「かごめ・・・・・もう我慢できねえんだ・・・!」

予想通りの言葉。そう、と簡単にも言えず、かごめはそっと目を伏せて考える。
誓約に近い戒め。これを脱したらどうなるかは分からない。
恐れている?それとも触れることしかできないことがもどかしい?

我ながら意地の悪い考えだ、とかごめはそれを打ち消して目を開いた。
切実に訴える瞳に、自分が絆されそうになっている自覚はある。
彼が意識してなくとも、それは十分にかごめの心を打つこととなる。
元々、少年の滅多にないお願いごとに弱いことも分かっていた。きっと少年だって分かっている。
分かっている上で使っているのだから、とても性質が悪いとかごめは毒づく。
「でもね、犬夜叉・・・・・それじゃあやくそく」
「っ・・・・けど!俺はっ・・・・・」

泣きそうに歪む表情に、かごめはほぼ反射的にやばいと感じた。自分の気持ちが落ちる一瞬を、感じてしまった。気付けば掴まれていた腕を、そっと触れ返していた。驚いてこちらを見る犬夜叉に微笑む自分の甘さに少し呆れながらもかごめは口を開いた。
「・・・今回は、私がそうしたいから、お願いした。・・・・・それでいいわ」
「・・・・・!かごめ」
ぎゅうっと抱きしめられて、かごめは息が一瞬詰まる。気付いて犬夜叉も少しだけ力を緩めるけれど、離す意思はまったくないらしい。ふっと力を抜くと、草むらに倒れこむ。深々と生い茂った草のお陰で、振動はほとんどなかった。澄んだ川の匂いと混じって、草の匂いが仄かに香る。
「かごめ・・・・」
意図せず押し倒したような構図になった犬夜叉は、器用に片手で自分の体重を支えたまま、柔らかく、鋭い自分の爪で傷つけないようにかごめの頬を撫でる。見つめられて、今更のように上ってきた羞恥心に、少し触れられた頬を赤く染めるが、そんな態度も犬夜叉にとっては自分の衝動を煽るものにしかならない。額に軽く口付けて、頬に、そして唇に、順々にゆっくりと落とした。
かごめはくぐもりそうになる声を必死に落として、触れるだけのそれに、自分なりに返そうとする。少しだけ強張っていた犬夜叉の表情が、柔らかく緩む。かごめもつられて微笑むと、幸せそうな表情で自分を抱きこむ犬夜叉。胸の谷間に犬夜叉の鼻先が当たり、少しだけ身じろぎしたが、抵抗はしない。上がった顔が、もう一度かごめの唇に触れて、首筋に落ちた。ぬるり、とした生暖かい慰撫にかごめは思わず「ひゃんっ」と小さく叫ぶ。不意打ちのことで、どうも声が抑えられなかったが、犬夜叉が赤くした顔を片手で覆って、ふるふる震えているのを見て、悶えられていることに気付くと、それがたまらなく恥ずかしいと感じてかごめは拗ねたようにそっぽを向いた。
すぐに、困ったような笑いを浮かべる犬夜叉に、正面を向かされてしまったけれど、それでもせめての抵抗とばかりに目を瞑ると落ちてくるのは忍び笑い。
「口付けしてくれ・・・って強請ってるように見えっぞ、それ」
勿論、そういう意図が含まれているわけではないというのに、犬夜叉は気付いている。口調からして明らかだ。しかしそれを言うのは、少なからずそれをこじ付けに行為を再開させても構わないかと暗に訴えていることに相違ない。ここで無闇に「違うわよ!」とむきになって返したら軽くあしらわれて、犬夜叉のペースに飲み込まれてしまうのが落ちだ。だからといって「そうよ」と返しても、結局最終的に行き着く場所は一緒になる。どう転んでも犬夜叉が有利だ。それくらいに、犬夜叉はこの手の駆け引きの仕方が下手を装って巧い。
その冷静さを、もう少し別の・・・・たとえば、奈落と対峙しているときにでも発揮してくれればもう少しやりやすいのに、と思わないでもないが、それが何故か無理だというのがこの少年の特性なのを知っているから口には出さない。
犬夜叉の望む通りに流されてやっても良かった。この少年は殊更自分には酷く甘くて優しいから、少なくとも自分が嫌がっていることは絶対にしない。悪い方向に流れる可能性がひたすらゼロに近いことを、かごめは知らず熟知していたからだ。それでも、従いたくないと思ったのは、単にこの少女も犬夜叉と負けず劣らずの負けず嫌いで、理不尽なものに屈することを知らない気性の持ち主だったからだ。
「・・・・・・・・・・・」

この手の冗談半分の言葉には、無言で返すのが一番いい。下手に何か言って墓穴を掘るより余程利口だ。
案の定、無言で返されるとは思っていなかった犬夜叉が、一瞬、「お?」という表情を浮かべる。隠しているつもりだろうけれど、かごめの機嫌を損ねてしまったかもしれないという不安が混じり始めているそれを、かごめは見逃さなかった。畳み掛けるようにつんと顔をそらして、完全に犬夜叉を見ないようにすると、戸惑ったような気配が伝わり、かごめは思わず笑いそうになる。しかし、ここえ笑ってしまえばこちらの真意もバレて、この駆け引きに負けてしまう。
「かごめ?」
反射的に返しそうになる返事を喉の奥で潰して、かごめは黙って目線を逸らしたまま、犬夜叉の出方を伺った。おそらく間違いなく、犬夜叉は今、かごめの機嫌を気にしている。ボロさえ出さなければこちらの空気に持っていける状態だ。しかし、少し勝利を確信した瞬間に、犬夜叉が最終手段を使ってきたので、それも水の泡と消えてしまったが。
「かごめぇ・・・・・」
甘えるような、縋るような声。何はともあれ、自尊心の高い少年は、この手段が一番かごめに対して効果的であると知っていても、滅多に使わない。他人に依存することさえ抵抗のあった日々を送ってきた少年が、誰かに縋るという行為を容易に受け入れられる筈がないのだ。かごめもそれを知っていたので、タカを括っていた。しかし、それが失敗だったのだとかごめは内心で舌打ちした。

そう。

何も、犬夜叉だけが、かごめに甘い訳ではない。むしろ、犬夜叉よりも自分の方が、彼に対して甘い。
幼少期に、彼がどうして育ってきたかを、図らずも知ってしまったかごめにとって、犬夜叉のその声は決して見捨てられるものではなかったのだ。たとえ演技が入っていると分かっていても放置はできない。母性本能と、恋情が半分づつで交じり合ったような感情をかごめは持て余した。けれど、これ以上意地を張っていても、間違いなく犬夜叉はこちらが折れるまで待つつもりだということも悟り、かごめは不本意だと思いながらも外していた視線を犬夜叉に戻した。
それこそ、ぱあっという擬音さえつきそうな犬夜叉の上機嫌顔に、かごめは何も言えなくなってしまう。弱い自分が悪いのか、それともそれを利用する犬夜叉が悪いのか。少し考えたが、鶏が先か、卵が先かの質問と変わりないと思い直して諦めた。
(ああ、もう。負けでいいわよ、負けで)

半ばやけくそ気味に内心で叫ぶと、きゅうっと犬夜叉の首に腕を巻きつけて、体を浮かせて密着させた。
犬夜叉の、平均より早まった心音を感じながら、自分もきっとこういう状態なのだろうと思いながらもかごめは腕に回す力を強めた。かごめの頬に添えられていた手がそっと、腰に回される。それにしても、片手で全体重を支えたままなのが、辛くないのだろうかとかごめは少しそんなことを思った後、この体力馬鹿にその心配は必要ないかと思い直す。
くすぐったく、もどかしくなりそうな、かかる吐息。重なる唇に眩暈がしそうなほど酔いしれながらも、かごめはそっと目を閉じた。

結局、自分がこの少年にひどく惚れ込んでいる。それを見せ付けられるような行為に限りない幸福感を感じながら。






これ何気に王様ゲームの続き(笑)曰く、「四日間、かごめ様にお触り禁止!!(すげえ笑いながら)」













碧空の彼方へ贈るうた



















ただ、限りなく純粋な気持ちに涙が止まらなかった。



「犬夜叉・・・・」

きゅうっと力をこめて抱きしめる。どうしようもない情動に駆られた衝動。
枷の外れた感情に素直になることは、駄目だと自制をしておきながら、今ばかりはそれを守ることはできなかった。
応えるかのように、少女の背に廻されていた手が息苦しいほどに少女を抱きすくめる。息が詰まるほどの愛情に、少女はそっと涙を流した。
(しあわせ、か)

それはまさに、今のことを言うのではないかとかごめは思った。
しがらみも、ルールもモラルも何もないこの世界で、因果も目的も総て忘れて、ただいとしい者の傍に寄り添っていることが。
自制心はあった。これが許されるものではないことも、そしてこれ以上を望むことも適わない事を。知っていても、それでも溢れ出た恋情を抑えたままでいられるほど、二人は大人ではなかった。それをどう、相手に伝えるかを知らない程に子供であることを思い知らされる。
いや、知ってはいる。それをしてはいけないという頭の中の警鐘に従っていたまでだ。

ただ・・・・ただ、互いのぬくもりのひとつさえも逃さぬようにきつく抱き合い、それだけで満たされる時間。


(自惚れてもいい?)


ただ、こうしている時間こそが、自分にとって最上の幸せであるように。


(あんたも、今のこの瞬間を大切に思ってくれているって)


すべてがいとおしかった。
抱きしめて抱きしめて、思い出したように時折口付けて。時間を共有していることにこの上ない至福を感じて。
それは、自分だけの感情ではないと。彼も自分と同じように思ってくれていると。そう、感じてもかまわないだろうか。

「かごめ・・・・」

静かに、ひっそりと呼ばれた名に、かごめは身を震わせる。
今まで、多くの人間に言われ続けてきた自分のことを指すこの名。ただ、呼ばれただけでここまで嬉しくさせたのは、これまで少女が生きてきたその中でたった一人だった。何かを言いたくて、琥珀色に見つめられて口を開くけれど、何を言えばいいか分からないのことに気付いてかごめは少し口を噤む。犬夜叉は、少し困ったように微笑むと、半開きになっていた唇にそっと、自分のそれを重ねた。
「ん・・・・・」

くぐもった声が喉から漏れる。
言葉がなくても。・・・・・言葉にしなくてもいいことに、かごめは気付いた。

ただ抱きしめ合っていれば、肌のぬくもりを感じていれば。それだけでお互いの気持ちが共有できることに気付いたからだ。寧ろ、自分の気持ちを覆い隠そうとする殻の言葉は不必要だ。そんなもので自分たちの気持ちを押し退けることを、今のこの瞬間まですることはない。
罪悪感は薄れない。今の瞬間も、互いのこころの奥にそっと降り積もるのは分かっていたけれど。
(でも、自分の気持ちも、本当だから)

こいしい。いとしい。すき、だいすき。

言葉はもう、無意味な記号のようで。今のこの瞬間が途方もなくしあわせで。
「いぬやしゃ・・・・・犬夜叉、犬夜叉・・・・」
「かごめ」
完全な、中毒症状。永遠に治ることのない、治す必要のない、しかしとても重症で、厄介なもの。
(ねぇ、私しあわせだよ)

そっとかごめは心の中で呟く。願わくは、自分を抱き締める少年も、自分と同じように感じてくれればと。
きっと。


きっと、このこころは、ずっと前から捕らわれていた。
逃げ出す隙を与えてくれても逃げなかったのは紛れもない自分。少年をいとしいと思い、傍にいたいと願い、安全な世界を捨てたのも自分なのだ。

( あ い し て る )




言葉として発することなく、少女はそれを、唇だけで表せて、そっと少年の銀髪に、顔を埋めた。









あるイラスト見てたら出来た。











約束









*猫かごめ設定。














占い、ジンクス、おまじない。

根拠もないけど可愛らしい、そんなものが女の子は大好きだ。
元来、女性とは殆ど無縁な生活を送っていたし、初めて惚れた女性もそういうものに興味を持たないタイプだったので、とにかく青年の周りにその類のものは存在しなかった。
しかし、つい最近は家の中でよくその“おまじない”を実践した跡らしきものが残っているのを見かける。他力本願が嫌いで、神頼みもしない、そもそも占いを信じていないという青年がしたのではない。同居人の仕業である。
当の同居人である少女は、現在「元気になるおまじない」と、数日前からベランダに増えている観葉植物に霧吹きで水をやっていた。また買ってきたのか、と内心で苦笑しながらその様子を眺めていた。
すると、ひょこひょこと、ケージから出されてうろついていた“ハル”がかごめの服の裾をくい、と引っ張って餌を強請っていた。
「ちょっと待ってね〜」
と、ハルの頭を撫でると、少女は水やりを続けた。ハルは頭のいい兎なので、少女が今は自分に構ってくれないのだと理解するとしゅんと耳を垂らした。
その落ち込み方が非常に“かごめ”と似ていて、“犬夜叉”は思わず咀嚼していたサラダを噴出し掛けた。ペットは飼い主に似るというが、まさしくそれの典型的パターンが目の前にいる、と犬夜叉は微笑ましく思う。・・・・さすがに、自分とかごめは似ていないのだけれど、かごめと自分との場合はペットと飼い主という観念は捨てるべきだろう。第一、かごめは半分獣とはいえ見た目も性格もまるっきり人間である。下手をすればそういう趣味の人間かと変な目を向けられること必至だ。


ひょこひょこと、ハルが今度は青年の方に近付く。今朝は洋食だから、トースト前の食パンがテーブルの上に放置されていた。これくらいなら大丈夫か、と袋を引っ張り寄せ封を開け、パンの耳だけ千切る。そのまま与えると床にパンのかすが毀れそうだったので、ハルをテーブルの上にあげて、そこでパンの耳をやる。与えられ慣れていないものにひくひくと、鼻を近付けてにおいを嗅いだあと、安全なものと判断したらしくもそもそと食べ始めた。普段から、元野生の兎だからと、野菜スティックばかりを食べさせていたからか、少々不服気味に見えたが、かといってどこかにぺいっと放り捨てることもなく最後まで食べきった。
「あれ?」
水やりに夢中になっていたらしいかごめは、顔をあげて初めて気付いた珍しい光景にきょとんとする。無意識のうちに和んでしまう心境を実感しながら、犬夜叉は最後の一口を口の中に放り込むと同時に立ち上がった。食器を下げてかごめの横を通るとき、ぽんと頭を撫でて「ごちそーさん」と言ってやると、さっさと部屋へ下がった。いい加減、準備をしないと出発時間が危ないことに気付いたのだ。
撫でられた頭に触れながら、はにかんで笑うかごめを気配を背後で感じて、思わず構い倒したい欲求に駆られたが、僅かの僅差で理性が勝利し、犬夜叉はさっさと椅子に引っ掛けていたナップサックを引っ掴んだ。
「犬夜叉」

ふと呼び止められて振り向くと、かごめが背伸びして犬夜叉の首に、革紐に通された水晶をかけた。水晶といっても、イミテーションらしく、そんなに値段は高くない代物だろう。
「今日も一日元気でいられますようにって、ね?」
「・・・・お前、最近本ッ当に好きだなこの類・・・・」
一体何に影響されたのだろう。一番かごめと一緒にいる同性といえば珊瑚以外にないが、珊瑚の場合は装飾品と言っても、ファッションの分野の専門的なアクセサリーが多く、弟のことで色々あるせいで、占いの類は面白がっていても実践しようという姿は見せない。やはりテレビの影響だろうか。妙なところでも順応性の早い少女だと、犬夜叉は他人事のように思った。
正直、今まで彼の周りにはそんな可愛らしいことをする存在というのは皆無に等しかった。しかし、意外に不快ではない。勧めるのがこの少女だからだろうか、とも思ったがそれは一応考えないことにした。それにしても、そういうものは大体が破格の値段のものというのが定説だが、かごめは何かと“おまじない”と言う割に金銭面の負担は最低ラインを超えないという質素っぷりを発揮している。こちらに世話になっているという負い目がいまだにあるのだろうが、それにしてもかごめの凝り方もとても珍しい。
しかも、そのおまじないとやらも、自分は二の次でこちらの身ばかり心配するので、そこまで俺は危なっかしいか?と訊いてしまいそうになる。実際は単にいつまでも犬夜叉に健康でいてほしいとか、そんな意味なんだろうけれど。
要らない、と突き返すつもりも、少女を困らせたいわけでもなかったが、犬夜叉は息をゆっくり吐き出し、同様にゆっくりと吸い込む。
「・・・・占いとかまじないとかは」
「利くとは思ってないわ。でも、信じた振りして、それを理由に頑張れるきっかけになるわ」
のめりこんでいるように見えていたので、かごめのこの言葉に犬夜叉は少し面食らった。
僅かに目を見開いた青年を、かごめは少し決まり悪そうに見返した。
「・・・いくら、こんなもに縋っても、どうにもならないことなんていくらでもある。けど、これはおまじないって名前の“約束”よ」
かごめの言うどうにもならないこととは、昔のことだろうかと思うと、何ともいえない気分になる。天然ボケで、世間知らずなイメージが強いかごめのする、こんなどこか諦観したような表情は痛ましく見えて仕方がなかったのだ。
払拭するように、首にかけられたペンダントに触れ、やがてふぅ、と小さく息を吐き出した。
相変わらずきょとんとしているかごめの手を取ると、水晶を握らせる。
「じゃあ、“かごめもずっと元気で笑ってられますように。”これが俺との約束だ」
言った後、少し照れ臭かったが、嘘だと思われたくなくてじっとかごめの目を見つめた。呆然としていたかごめの瞳がじんわりと潤む。頬がほんのり染まり、「えへへ」と嬉しそうに笑うかごめに、犬夜叉はどきりと胸を高鳴らせた。思わず抱きしめたくなる衝動に、かごめに対して何を、と思い直した。

ボーン、とどこかで時計が鳴る。
恐らくリビングのやたら古風な掛け時計が鳴ったのだろう。扉が半開きのままになっていたので。
そこまで考えてはたと気付く。
「あ゛ぁっ!?遅刻っ・・・・!?」
どう頑張っても既に間に合うことは100%ありえない時間。かごめが突然の大声に驚いて、小さく毛を逆立たせたが、今はそれどころではない。
「悪ぃ!俺もう行くから!帰って来んの多分7時過ぎるから戸締りしっかりして痩せ狼が来ても入れるなよ!」
一気にまくしたてると脱兎のように去った青年を、大丈夫だろうかと思いながらも、かごめは犬夜叉に包まれていた手をじっと見つめる。
(あつい・・・・・)
どきどきと胸が高鳴るのを宥める様に、かごめはそっと、自分の手の甲に口付けた。


―――自覚するまで、もう少し?





すっかり自分で忘れかけてました(笑)が、この話って純愛がテーマですよ。










面影を見出す目。




















吐き出した息は、僅かに白い。

乾いて澄んだ空気は、体を芯から冷やそうとするけれど、それを少女は苦としなかった。
普段は程好く桃色の健康的な頬をしている少女も、今は流石に赤らんでいる。時折思い出したように、赤くなった指先に息を吹きかけて、擦っていた。
その姿を見つめる少年こそ、寒暖を殆ど苦に思わなかったが、新緑色の“すかーと”なるものからみえる細い足や、それらの言動を見ていると、どうにも心落ち着かない。一度見兼ねて自分の水干の衣を貸そうとしたことがあったが、「何言ってんの、あんたが風邪引くじゃない」と、慌てて言われた。
この半妖という体で、風邪も何もない。気にするなと、少し強引にそれを、少女の頭に被せて有無を言わせず返却拒否したこともあった。
「まだ大丈夫」などと、傍観具をつける様子もない少女に、それでも普段の少女が放つ暖かな『生』の気が薄まる様子を日毎敏感に感じている少年は気が気でない。あまりに自分に頓着しない少女の言動に、いっそ無理にでも少女を抱きこんで暖めてやろうか、とも本気で考え始める。

少女が風邪を引く?冗談ではない。子供っぽいと笑われてもいい。風邪にだって少女を触れさせたくない。

きゃあきゃあと、季節の移ろいの橙を眺めながらはしゃぐ少女を見つめながら、少年は組んだ腕を解いた。少しだけ早足になると、すぐに追いつくことができた。これは別に、何も考えずに置いている距離ではない。
少女がしたいことを自由に安心してできるため。好きにさせるけれど、少女が危機に陥れば、すぐ助けに入ることができる距離。
自分が少女の傍にいたいという気持ちを全く含まないというと、とんでもない大嘘になるが、好きにさせたい気持ちが強かったのも事実だ。だから今まで黙っていた。けれど、それもそろそろ限界が近い。
「犬夜叉?」
きょとん、と無防備な声が、少年に何かあったの?と問い掛ける。吐き出される息は相変わらず白かったが、傾きかけた光がうっすらと空気すらも穂麦色に染め上げる。
「そろそろ戻らねぇと、陽が暮れる前に戻れなくなるぞ」
言って、ほらと手を差し出せば、握り返す華奢な指先が想像以上に冷えていて、少年は思わず露骨に眉を顰めた。少女が目敏く気付いて手を離そうとするけれど、離れる前に素早く掴み直す。放すことを拒否した少年に、少女が困った表情を向けると、小さく口の端を持ち上げた少年は、掴んだ手を己の唇に軽く当ててみせた。
かぁ、と寒さとは違うもので顔を赤く染め上げた少女は、とても狼狽して、きょときょと、と意味もなく周りに視線を巡らせ、やがて溜息を小さく溢すと、少し俯きながらも少年の手を握り返した。
相変わらずの、可愛らしいリアクションに、少年は緩む頬を抑えられない。笑わないでよう、と頬を膨らませて言われても、それは彼の笑いを増長させる結果にしか終わらない。少女に預けた片手に力をこめながら、あまったもう片方の手で前髪を掻きあげながら顔を隠した。爆笑するほど、とはいかないし、そもそも彼の性質上、もし、しそうになっても抑えるだろう。それが、まさに今なのだけれど。

肩で息をするような笑いに、更に必死になって弁解を試みるかごめが可愛らしくて、愛しい。馬鹿にしたような嫌な笑いではないから、かごめも慌てながらも宥めるような態度で接している。言葉にしなくても、互いにとって安心できる空気を作り出せるからこそ、このひとの隣はとても居心地がいいと、分かるのだ。
他愛のないやりとりのあと、珍しく会話が途切れる。不思議に思って少女を見て、少年は一瞬息を呑む。

山の置くは、既に紫がかっていたけれど、帰り道を照らす光は金にも近くて。それが、少女の顔や漆黒を優しく照らしていて、綺麗だと。
感じて、言葉にして認識するよりも早く、そう思った。当の少女は、目の先で輝き続ける光を見つめていた。はたと、瞳を痛めてはいけないと気付き、咄嗟に水干の袖で少女の視界を遮って、不審げな視線を向けられる前に言った。
「何、見てたんだ?」
「・・・・夕焼け、ね」
わざとらしいにも程がある言葉につっこむことなく、かごめは少し俯いた。足元を見つめて、言いにくそうに黙っている少女に、遮りついでに伸ばした腕を少女の頭に回した。繋いでいた手はそのままで、胸板に少女を誘うと続きの言葉を促した。
「似てるなぁ、って思ったの」
「何に?」
「犬夜叉に」
そっと持ち上げられた、細い腕。繊細な指が、少年の頬を撫でる。瞼の上で動きが止まった。
「あ、でも月の方が似てるかな?・・・黄金色【きんいろ】。犬夜叉の眼の色」
嬉しそうに、笑って言う。なんでもないことに、なんでもないように気付いて、教えてくれて、それを喜ぶ少女。押さえ切れない衝動に、骨が折れるまで抱きしめたくなる。

愛しい愛しい愛しい、いとしい。

自分の感情に飲まれそうだ、と他人事のように思う。どうか、この少女がこの感性をなくさないままでいてほしい、と傲慢と分かっていても望んでしまう。
「お前、何見ても俺だって言うな、最近」
「あーっ笑わないでってばぁ!本当にそう思ったから言っただけなの!」
「わーったわーった」
分かってないでしょ!?と赤い顔で眉根を吊り上げても怖いなんて感じない。
それどころか、微笑ましいとさえ重いながら、内心で呟く。
(分かってるに、決まってんだろ)

何を見ても、すぐ連想出来るのは、自分だ、なんて。

思わず自惚れてしまいそうな告白に気付けないほど、鈍感ではないから。
「それだけ俺のこと考えてるってことだろ?」

耳まで赤くなって、絶句してしまったかごめを見て、犬夜叉はまた、可笑しそうに肩を揺らして、そして言う。
「かごめがそう思ってくれるの、俺はすっげー嬉しい」

俺も同じようなこと思うから、と付け足すと、困ったような笑顔を向けてくれるから。その笑顔が、1秒でも長く続くように願うんだ――。





最初もっと殺伐としてたのに。










突発いんたびゅー。














Q.まずお名前をどうぞ

「犬夜叉」「日暮かごめ」



Q.いきなりですが、お互いを恋愛対象として見始めたのはいつから?

「・・・割とすぐ。弥勒と会った辺り」
「・・・犬夜叉が桔梗と死ぬとか言い出した辺り?」
「って!それってかなり最近じゃねぇかよ(怒)」
「えへv」
「・・・・・・・・・・・・・」



Q.気持ちを告げたことは?

「気付かれない・・・・・(沈)」
「いつのこと?(←気付かない)私は・・・直接的にはまだ・・・」




Q.ご家族は二人の仲を?

「・・・犬夜叉の方は・・・公認なの?あれ・・・(天下覇道の剣)
「公認なんじゃねぇか?少なくとも殺生丸あたりはそう認識してるだろ」
「そっか。・・・うちは言うまでもなく」
「公認だな」



Q.お二人の恋の障害は?

「意地悪ね(苦笑)まず時代の違いに、桔梗・・・・・」
「桔梗 弥勒 奈落 蛮骨・・・」
「え?なんで?」
「・・・・・・・・(そっぽを向く)」



Q.どこまでの関係?

「えっ・・・・(赤面)」
「口付けまで。・・・それ以上は・・・ま、面倒ごとが全部片付いてからだな」
「そ、それ以上って・・・・(更に赤)」
「vV(ぎゅーっ)」



Q.もしもあいてが同性でも愛せますか?

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)」」
「・・・あー・・・まぁ、中、が・・・・かごめなら・・・・・・・・・・・・・駄目だわかんねえ・・・」
「い、いいよ仕方ないわよ・・・(汗)」

*雪真個人誌で一回↑あったが、元に戻るまで犬夜叉は姫に一度も触らなかった(戻ってからはすごかった)



Q.相手を無理やりにでも求める、ということに関してどう思いますか?

「「最低(きっぱり)」」



Q.犬夜叉に質問です。かごめ嬢以外に好きな人は?

「喧嘩売ってんのかてめぇ(怒)」
「怒らないから早く言いなさいよ。桔梗でしょ(つーん)」
「かっかごめっ・・・・(おろおろ)」



Q.ではかごめ嬢は犬夜叉以外で好きな人は?

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おいこら何で視線そらすんだよ!?(汗)まさかお前・・・・・・・!?」
「や、やっだぁ犬夜叉だけよvV(棒読み)」
「嘘くせぇ!・・・・・・・・・・かごめ」「な、何?」
「・・・・・・ちょっとあっち行ってじっくりたっぷりゆっくり話し合おうか?(笑顔)」
「っやだぁ!あんたがそういう顔してるときは絶対えっちなこと考えて」
「ねぇよ?(超笑顔)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・最後まではな(超小声)
「やだやだやだっ!ごめんってば!冗談よ私そんなことしないからはーなーしーてー!!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「いぬやしゃぁ〜!!(照&半泣き)」

*この会話は桔かご前提です。(笑)



――ついでにちょっと二時間ほどお待ちください。(何があった)

仕切りなおし。


Q.どこの中心で愛を叫びたいですか?

「・・・・・は??」
「(息荒い)え、な・・・何?某映画の影響?遅くない・・・?(笑)」
「・・・・かごめの中?」
「ちょっと待ってその言い方だとあらぬ誤解を招くから、ていうか中って何よ!?(赤面)」
「・・・招くように言ってんのに」
「言わなくてよろしい!」




Q.もし、相手が自分以外の誰かなんて目に入らないようにできる道具があれば?

「壊す」
「捨てる」




Q.何故?

「「そんなもので相手を得ても嬉しくない」」



Q.ありがとうございました。最後にひとつ。
あなたにとって、相手はたとえるなら何?

「・・・んー・・・・空気?」
「どういう意味?」
「どうでもいいだろっ(照)お前はどうなんだよっ」
「・・私は・・・趣味?」
「おい(怒)」「あっはははははv」
「笑って誤魔化すな!どーゆー意味かあっちでじっくり聞かせてもらおうか!?」
「!!やだっ!次はぜーったい言わないもん!(赤面)」←さっき言わされたらしい。
「おら行くぞ姫君ー(と、わき腹にかごめ抱えつつ)」
「姫って言うならもう少し丁寧に扱いなさいよー!」
「論点ズレてっぞ。・・・まあいいけど(姫抱っこ)」
「どっちにしても私は言ってあげないんだからぁ!(照れながらぎゅっと)」




――以下、延々無自覚バカップルのトークのため、割愛。
後日それぞれから聴取したところ、
空気→気付かなくても傍にあるもの、なければ生きていけないもの。
趣味→なくても生きていけるけど、人生を楽しく生きれないので欲しいと思うもの。
ということが判明。度合いは違っても、お互い想いあっているということで。

・・・・・ご馳走様でした。




・・・・・・ネタきれたんですよ!!(笑泣)
インタビュー内容、思いつかなかったんでいろんな人に参考で聞いてそのまま採用(笑)協力してくれた人、ありがとうでした(笑)。

















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