うぇぶはくしゅログ。




別 離 転 生 転 換 再 生



大好きな暖かい両腕。見慣れたせいで、とても安心できる緋色の衣。
いつも、よく分かんない根拠で自信満々に笑うその表情とか、理由もなく仏頂面を保っている顔とか。
そうかと思ったら、意外に繊細な心の持ち主だったり、普段の態度じゃ分かり難いけれど、本当はとても整った顔とか、綺麗な琥珀色とか、銀色の髪とか、あまり触られたくないみたいだけど、時々隙を突いて触るふわふわの獣耳とか。

私が大好きなこの人は、私がとても大好きな要素をいっぱい持っていた。本当は、こんなやつ、絶対に好きになれないって思ってた筈なのに、その予想はものの見事に裏切られて、すごくすごく好きになっている自分を自覚すると、本当に笑いがこみ上げる。

そして時々、とても悲しそうな顔をするものだから、きゅぅっと後ろから抱きしめたくなる。

でも、寂しそうな表情をする彼にそんなことは出来ない。だって、こんな顔している彼は、絶対に私を見てくれない。
見てくれたって、それは『二番目』だって分かってるの。だから苦しくて、私まで寂しい。

(いぬやしゃ)

このまま何処かへ消えてしまいそうで。

いつもみたいに生き生きしている犬夜叉がとても懐かしい。

口の中で小さく呼び掛けてみるけれど、どんなに耳がよくても、考え込んでいる犬夜叉に、私の声が聞こえる筈はないって分かっているし、私も本当は半分、気付いてほしくないって思ってた。もう、犬夜叉の感情に口を挟むことはしないって決めてたから。
だから、最終的に犬夜叉が桔梗を選んだって、笑顔でお別れできるように、いつも笑っていられるように練習するの。
心中するというのだったら、止めるわ。この気持ちを諦める代価に、死んで欲しくないと願うことくらい、どうか怒らないで。嘲笑わないで。

そっと、私の視線に気が付いて顔を上げる犬夜叉は、少し困ったような表情で笑ってた。
それが、いつもの元気な犬夜叉ではない気がして。このまま、“夜叉”に変わり果てて、二度と姿を見せなくなってしまうかもしれない。
そんなことを考える自分が少し嫌だった。暗くて沈んだ気分は私の性に合わないのは自覚していたし、何より私がこんな気持ちのままだったら、彼が、犬夜叉が、悲しんでしまうのを知っていたから。
「かごめ」
犬夜叉の唇がゆっくりと動いて、私の名前を呼んだ。
それだけで、私は言い知れない感情を持て余して身を震わせた。隣に来い、って目で言われていることは分かっていたけれど、どうしても足が竦んで動けなかった。
いつもだったら、犬夜叉が促さなくても自分から近寄っているから。犬夜叉は案の定、不思議そうに眉を顰めた。
どうした、なんて聞かない。犬夜叉だって、そこまで無神経じゃないから。ただ、決まり悪そうに俯いてしまった。
月が翳って、大好きな琥珀色が、闇色に染まってしまったのが、無性に悲しくて、寂しくなった。頬が、目頭が熱くなっていくのは分かっていたけれど、それが溢れ出す前に私はかくんと膝を折った。
わざとやった訳じゃないけど、それだけで犬夜叉を驚かすには十分だったみたいで、犬夜叉は慌てて駆けつけてくれた。
俯くと、ぽたぽたと透明な染みがスカートに落ちてその色を濃くした。

・・・やだな。
こんなとこ、見せたら犬夜叉が困っちゃうの、分かってるのに。止まらない涙。

困ったような手がそっと、私の肩に触れた。そんなに近くにいるという訳でもないのに、微かに掛かった犬夜叉の吐息に私は頬が一層熱くなった気がした。

駄目。

今、顔を上げたら。

きっと、犬夜叉を困らせてしまうだけだから。


「かごめ」


ぴくん、と体が自然と痙攣する。
ああ、もう。私はこの人がすごくすごく、好きなんだなって自覚させないでよ。別れが辛くなってしまう。

そんな私の心の中の声に気付いてくれない意地悪な犬夜叉は、そっと呟く。呪文のように。
「かごめ、かごめ・・・・」

愛しさを含む声音に、私は震えそうになる。

ねぇ、お願いよ、犬夜叉・・・・・。

私に優しさを与えようとしないで、大丈夫。私はきっと、あんたがいなくてもやっていってみせるから。
「私を甘えさせないで」

辛そうに顔を歪める犬夜叉の表情を見る方が、私はとても辛かった。
「なんで、分かってくれねぇんだ?」

ごめんなさい、愛しい人。私は分かってはいけないの。気付いてはいけないのよ。
黙ったまま、俯いたまま、涙を流したまま。私は冤罪を乞うように、ひっそりと思うの。


時間も、時代も、関係も、想いも、何もかも、なくせたら、楽かもしれないなんて。

そんな悲観は言わないわ。

貴方が悲しむことはしない。私の笑顔が好きと言ってくれる貴方のために、私はずっと笑っていたいから。

だから、甘えさせないで。

たとえ、二度と出逢えなくなってしまっても、私はずっと、貴方の好きと言ってくれた笑顔でいるから。

ねぇだから、泣きそうな顔で私を抱きしめないで、愛しい人。





すれ違い(痛)
かごめちゃんは犬夜叉を第一に考えるし、本当は犬夜叉だってかごめちゃんのことを第一に思っているし、思おうとしてるのです。










あ る 意 味 一 番 大 切 な ヒ ト。






うちの姉ちゃんは、すごい彼氏を持っています。



犬夜叉っていう兄ちゃんなんだけど、犬の耳を持ってる、ハンヨウ(実はあんまり意味分からないんだけどね)で、500年前の戦国時代を生きている人らしい。姉ちゃんは、そこにほとんど毎日通っています。
何でも、『四魂のかけら』っていうものを、仲間と一緒に集めているとか。最初は、タイムスリップとか、妖怪とか、全然信じられなかったぼくだけど、姉ちゃんはいつも、当たり前のようにうちの祠の古井戸から、“あっち”の世界へ消えているし、ぼくだって一度、妖怪に会った。だから、今はもう信じない方がおかしいです。
でも、うちの家族は何ていうか・・・・全員、どこかテンポがずれているから、最初の方から全部受け入れちゃってました。
それってやっぱりここが神社だからっていうのが関係してるのかな?初めて犬夜叉の兄ちゃんが来たときも、みんないきなりの乱入に対しては驚いてても、犬夜叉の兄ちゃんの格好に誰もつっこまなかったし。
・・・まぁ、ぼくもその中の一人だけどね。姉ちゃんやぼくはともかく、じいちゃんやママはもう少し慌ててもいい気がする。

ママなんて、この前犬の兄ちゃんが来たときに、「少しおっちょこちょいだけど、かごめを宜しくね」なんて言って兄ちゃんを真っ赤にさせてた。まるで嫁入り報告をしたあとの親の台詞だよ、それじゃ、なんて思わないでもなかったから、気持ち分かるけど。

・・・・そういえば、犬夜叉の兄ちゃんと姉ちゃん、最初の方はそうでもなかったけど、最近はやたらと露骨にくっついてる気がする。この前だって、姉ちゃんが神社の手前でナンパされてたときも問答無用で犬夜叉の兄ちゃんが倒しに行ってたし、姉ちゃんの帰りがいつもより少しでも遅くなるとすぐに迎えに行ってたりしたし。何より、姉ちゃんが最初の頃よりほんの少しだけ、“こっち”に帰ってくる回数が減ってきた。前は、土日でも時々帰ってきてたのに、今じゃぁその日は絶対に帰ってこないし、テストの一週間前には帰ってきてたのも、4日前に帰ってくるようになった。
弟のぼくとしては、そんな姉ちゃんの(無自覚な)態度をつっこむべきか、祝福するべきか。

一回、血まみれの制服で帰ってきたときは、さすがにママも驚いてた。でもそれより、姉ちゃんが「どうしよう!あっちの世界に戻れないの!!」って錯乱してたから、それどころじゃなかった。しばらくしたら、北条の兄ちゃんからデートの誘いがあって、デートだっていうのにすごく不機嫌な顔して出て行ったと思ったら、いきなり井戸から出てくるし。
あのときは・・・そうでもなかったかな。でも、それから先は、どんなに犬夜叉の兄ちゃんの話題を出しても、やっぱり褒めることはなかったけど、それまでみたいに貶すことは言わなくなった。
ママ的には、あの時点で二人はもう恋人同士って思われちゃったんだと思う。

でも、それが決定的になったのは、それよりもっとあとのこと。
いつもみたいに、“あっち”から帰ってきた姉ちゃんが、夜まで眠っていて、慌てて戻っていった日から。
いつもの調子で出かけていったから、次に戻ってくるのは早くて来週だって思ってた。なのに、実際にはその日の数分後にすぐ帰ってきた。何か、いつもの元気な姉ちゃんからは想像もつかないくらいに落ち込んでいて、ぼくもいつもならからかって声をかけるところを、何も言えずに黙って見送ることしか出来なかった。
ママは、さすが同じ女の人で、すぐに姉ちゃんが何を悩んでいるのか分かったみたいだった。心配になって少し様子を見ようと、姉ちゃんの部屋に行ったぼくを止めて、「お姉ちゃんは今、一人で落ち着いて考える時間が必要だから、あと少しだけ待ってあげて」って言われた。
姉ちゃんの元気がないなんて、気味悪いっていうより味気ない。
じいちゃんもママも、それは同じみたいで、最近は三人だけで食べるごはんも、姉ちゃんが要らないって断った時点で空気が重かった。
いつもママが、姉ちゃんがいつ帰ってもいいようにって用意してる茶碗が、いつも以上に寂しく見えたりもした。

姉ちゃんは、たとえ何処にいたって、家族の中でムードメーカーになる。姉ちゃんが寂しがってたら、皆だって寂しい気分になるし、嬉しそうだったらこっちも嬉しい。・・・ううん。姉ちゃんだけじゃない。うちは、誰かが悲しそうでも、楽しそうでも、それが皆に移るんだ。だから、誰にも悲しそうな顔、してほしくない。


正直言うとね、ぼく、犬夜叉の兄ちゃんのこと、すごく好きなんだけど、同じくらいすごく腹が立つときがあるんだ。
姉ちゃんを嬉しそうにしてくれるのも、兄ちゃんだけど、悲しませるのも兄ちゃんだから。こういうの友達に言ったら絶対に『シスコン』って言われるし、恥ずかしいからぼくも言わないけど、でもそう思ってるのは本当。
だから時々、意地悪したくもなるんだ。「姉ちゃんのこと、好きなんでしょ?」って。

犬夜叉の兄ちゃんが、姉ちゃんのこと、大切に想ってくれてるっていうのはすごくよく分かる。
この前なんか、両足に包帯巻いた姉ちゃん抱えて来たと思ったら、いきなりママに謝ってたし。・・・・姉ちゃんに最初の頃、さんざん言われたせいか、それとも実際に見ていて思ったのか、ぼくの中では兄ちゃんはすごい意地っ張りっていうイメージしかなかったから、そんな姿を見るのがとても不思議だった。別人のようにすら見えちゃったもん(あ、犬夜叉の兄ちゃんには内緒だよ?)。

そういえばこの前、からかうつもりで「犬夜叉の兄ちゃんのどこが好き?」って訊いたら、照れ隠しにぼくの首に腕を回して軽く締めながら、「何マセたこと言ってんのよ小学生ッ」って言われた。でも、そのあとでちゃんと「一途なところ」って答えてくれた。
一瞬、その一途が、姉ちゃんに対してなのかなって思って、姉ちゃんの顔を見ると、少し俯き加減で寂しそうに笑っている顔とぶつかって、ぼくはとてつもなく悪いことしたって気分になった。そんなぼくに気付いた姉ちゃんが、すぐに「なんて顔してんのよ」って笑って言ってくれたから、気まずくならなくて済んだけど、でも少し淋しくなった。

そりゃぁ、姉ちゃんだって、ぼくだって、いつかは自分の好きな人を見つけて、姉弟のことなんて二の次になってしまうかもしれないけど。・・・ぼくだって、ひ、瞳ちゃんと一緒にいるときは、頭の中真っ白になるくらい緊張してて、姉ちゃんのこと思い出す余裕だってないけど。
ママも姉ちゃんもじいちゃんも、ぼくが生まれて今までっていう間、ずっと一緒にいた人たちだから、その一人が取られるって思ったらちょっと悔しくて、ちょっと寂しくて、嬉しかった。
犬夜叉の兄ちゃんに直接なんて言わないけどね。ぼくは、いつか犬夜叉の兄ちゃんが、家族の一員になる日もそんなに夢じゃないと思ってるんだ。
だから、せめてその日まで。できれば、それからも。
「うちの姉ちゃんをよろしくね、犬夜叉の兄ちゃん」

これが、ささやかだけど、ぼくが願ってることです。





なんかノリで草太君視点の話書いてみたけど、やっぱり何かの影響で(笑)兄弟愛ブームのため、こんな話。ていうか私の理想の日暮家。いや、実際にこんな感じなんだろうけど。一応念押しとくと、草太×かごめじゃないよ!?そこまで腐ってないよ!?(爆笑)

ていうか原作の話の裏事情を草太君がことごとく暴露している?しかもアニメ設定濫用?ていうか惚気混じってない?(大笑)
多分、日暮家で、一般的な思考の持ち主は草太君だと思う。日暮家のみなさん、肝据わりすぎですよ・・・(痛)。ちょっと気に入ってたり。










こころも、からだも、たましいさえもすべて、おれの。





大切だから、とか、かけがえがないから、とか。
そんな陳腐でありきたりな言葉だったらいくらでも掛けてやれるけど、それだけで足りるような想いじゃない。
そんなに半端ものな想いだったらここまで真剣には悩まないで済む。それくらいに、盲目的な想いを持っている相手だからこそ、誰にも触れられたくないと我侭を言ってしまう。

無理だってのは分かってる。
でも、感情と理性が一致しないことなんて、俺にとっては日常茶飯事だし、だから弥勒に大人しく頭撫でられてるお前を見るのだけでも苛々する。勿論、弥勒が、そういった恋愛感情を持って接している訳じゃないのは分かってるけど(珊瑚と両想いになってからは態度が相当露骨だしな)それでも、異性に触れられて笑っているかごめの姿を見るのは、あんまり気持ちいいもんでもない。

なぁ、どうせだったら、俺の傍で笑えよ。

自分の独占欲の強さとか、矛盾した感情とかは自覚してるけど。それでも、お前に傍に居て欲しいっていうのは、紛れもない本音だから。
(かごめ)

音にしない唇が象った声。ぴくりと、僅かに痙攣するかごめの肩。
弾かれたようにかごめがこちらを向けば、かごめの不審っぷりに弥勒もこっちに目を向けてきた。
それから暫くじっと俺の目を見て、ついでにかごめの表情を窺うと、ものすごい訳知り顔で、ご丁寧に気配を消して移動する。
何も言葉は発しなかったが、弥勒に『邪魔者は退散しておきます』と言われた気がした。
「犬夜叉?」
きょとんと、かごめが首を傾げた。
後ろと俺とでのやりとりにまったく気付いてないこいつは、多分気配を消したこともあって、弥勒のことを完全に忘れているらしい。
じゃなきゃ、後ろ確認くらいするやつだから。そう思うと、ひどく嬉しくなる俺は、かなりの重症だと今更ながら思う。

とりあえず、黙ったままだとかごめも困惑すると思った俺は、無言で両手を突き出した。
来いよ、なんて。言わなくてもわかる動作。かごめは少しだけ、元々大きな目を更に大きくさせて、でも柔らかい笑顔を浮かべると、大人しく俺の傍に寄って来てくれた。
ぎゅぅっと抱き締めると、かごめの国の洗髪剤とやらの匂いがした。今ではもう、馴染みの匂い。
近くにないと、思わず探してしまうくらいに慣れ親しんじまった、すごく、好きな。
「甘えんぼ」

くすぐったそうに、かごめが言った。
「お前限定だろ」
言い訳のような口調で言うと、予想通り、くすくすとおかしそうに笑う声が聞こえてきて、一層深く、かごめを抱きしめた。
暖かいぬくもりとか、鼻に感じる心地いい匂いとか、一定の間隔で届く心臓の音とか。そんなものがすごく愛しくて、かごめを抱きしめる度にそれを再確認して、余計に放せなくなる。
昔の自分は、ここまで人とか物に執着を持っていただろうか、と少し考えてみる。・・・物は、ない。ある意味では四魂の玉かもしれない。今だと鉄砕牙と答えられそうだけど、とにかく昔の記憶はひどく曖昧になっている。
人・・・は。真っ先に出てきたのは、お袋と、桔梗の顔。ある意味では今でもずっと執着しているけれど。今の俺のかごめに対する依存度では比較もできないことの自覚はあった。いつの間に、ここまで盲目的な感情を育てたんだか、と思うと笑えてくる。
けど、今のこの空間はとても大切な場所。誰かを信じるって行為にすっかり嫌気がさしていた俺を力ずくで“こっち”に引き戻してくれたのはかごめ。

いつのまにか、途方もないくらい惚れてた。

馬鹿みたいだ。昔の俺だったら、『誰も信用しねぇ』の一言で終わらせていたのに。
・・・・・あぁ、そういや、かごめはその言葉すら強引に撥ね退けて、俺を引きずり出したよな。
あのときは、なんで俺のためにこんなに必死になるんだっていうのより、とんでもねぇ奴だっていう感情の方が強かったな。

今じゃ殆ど正反対なことばっかりだ。・・・・かごめが、鋼牙の野郎と喋ってるとこを見るだけでもムカつくし、さっさと自分の手の中に取り戻したいって即座に思うほど。




でもな。

盲目でも、俺は本当は構わない。

そうなることで、かごめを束縛できるんだったら。

かごめがいつか、その口から別離を告げてくる不安に苛まれないで済むのなら。

そうしないのは・・・・・・・結局、望んでないからだ。俺も、かごめも。

かごめは、自由に生きているからこそかごめなんであって、生憎と束縛されて大人しく俺の腕の中にとどまっているようなしおらしい気性でもない。
でも、だからこそ休憩の場所に、俺の腕の中を選んでくれることは、思わず口がにやけるほどにすげぇ嬉しい。
でもって、仕方ないなって表情で、俺のすることすべて受け入れてくれるかごめが愛しくてたまらない。


だから。


「お前を俺の所有物にしたいんだけど?」
「・・・・・今更じゃない?」


そんなことを、さらっと言ってしまうかごめを手放すことなんて、俺にはもう考えつくことさえ出来ない。






何この人ら
(自分で書いといてそれはないだろう)。
基本的に、(時々言わすけど)うちの犬かご、好きとか愛してるとかいう発言はタブー。だから他の表現方法で愛情確認。
でも、それが余計に恥ずかしいことだというのに二人はまったく気付いていない(笑)犬の独占欲は半端じゃねぇ・・・!!(大笑)










犬夜叉とかごめの格闘記録 出張版



そう。それはまさに青天の霹靂と呼ぶに相応しいような、由々しき(?)事態――――

「なんでそうやって私が思ってることなんでもかんでも見透かしてくれちゃうのかしら犬夜叉はっ!」
「んだとこら!俺がどれだけお前のこと嫌いなのか分かって言ってんのかよ!?」

この二人の喧嘩は、すでに日常茶飯事だ。それこそ、弥勒と珊瑚の、もはや場を和ませるためのコントとしか思えないほどお約束なやきもち発生からその過程までを見るよりもずっと前から何度かあったことだ。今更珍しいとは思わないだろう。だが。
問題は、彼等の発する言葉である。かごめはまだいい。甲斐性無し(と、仲間からは半ば確定事項のように認定されている)の犬夜叉が、乙女心もわからずに暴走して、結局彼女の怒りを買ってしまい、そしていつの間にか元に戻っていることなど、既に両手でも数え切れないほどなのだ。しかし、しかしだ。

さっきの犬夜叉の発言は、聞き間違いもしくは白昼夢か?
そう思いたくなるほど最初から小屋の中にいた楓や七宝は平然とそれを眺めている。ここまで危機的に見える光景を見ているにも関わらず、心なしか、両者の目は呆れを表している気がした。
傍にいる珊瑚も、彼と同じことを思ったのだろう。蒼褪めた表情でよろよろと小屋の入り口に手を付くとぼそりと言う。
「明日は世界の崩壊か・・・・・?」

言い過ぎだろうとは思うものの、気持ちが分からなくもないので、とりあえず弥勒は愛妻(予定)の肩をしっかり抱いてやりながら、小屋の中心で行われている未だかつてないほどの大喧嘩の横をすり抜けつつ、七宝の隣まで移動すると、そっと子供に耳打した。
「七宝、かごめ様と犬夜叉に何があった?」
思ったより声が震えている辺り、自分も無意識ながら珊瑚と同じ危機感を感じていたのだろう。
しかし、七宝はどこか諦めたような、諭すような口ぶりで答えた。
「何も。見ての通りの喧嘩じゃ」
「喧嘩・・・・・・・って」

見ても分からないから聞いたのだが。




断っておくがこの二人の、最近の喧嘩になった理由を羅列してみると、七宝を苛め過ぎだとおすわりされたことに対して犬夜叉が文句を言って勃発。公衆の面前で、見せ付けるためという理由だけでいきなり昼間から口付けをかましてきた犬夜叉に対してかごめが一方的に激怒。偶然出会った鋼牙に、いつもどおり愛想笑いで適当に返していたら、いつのまにか本当にそのまま拉致されかけ、鋼牙がかごめに辛うじて丸め込まれて帰ったあと、いつまでも曖昧な態度取るから付け上がられるんだろうがと言い合いに発展。

他様々だが、その喧嘩の寿命が1日と持ったことはない。大体は犬夜叉かかごめ、どちらかがさっさと折れて、とっとと仲直りしてしまうものだ。
何よりも、喧嘩の原因の100%全部を占める理由が、『かごめに何かあったから』というこの男の末期的な少女への愛情は如何なものだろう。何よりそれを周りは黙認かつ公認している事実だ。付け加えて、馬鹿正直なこの男は、嘘でもかごめを『嫌い』とは言えない筈(ここで、言わないではないのがポイントだ)。
そんな、周りから見ていても何であきないのだろうと不思議に思うくらいにべた惚れで、しかも本人たちに自覚もないという者たちが、突然こんな天地が引っくり返ってもありえないだろうと思われていた言葉を使いながらの喧嘩である。彼等の事情や性格を知っている者からしてみれば、恐怖以外の何者でもない。
そう、それは決して言い過ぎでもないまごうことなき事実なのだ。
かたかたと、いくら凄まじい邪気を帯びた妖怪と対峙しようとも怯むことのない勇ましい退治屋の娘は、額に冷や汗を滴らせながら、しおらしく弥勒の腕の中にいた。普段だったら抵抗こそしないものの、少しくらい困惑の表情を作るのに。つまりそれくらいに追い込まれた気分なのだろう。
「いつもいつも、犬夜叉は私のこと考えてくれないのなんて分かっ・・・んない!勝手に突っ走って無茶すればいいのよ!!」
「俺がお前のこと気にす・・・しねぇのなんか今更だろーが!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?

二人の言い合いに呆然と耳を傾けていた弥勒は、ふとその中の違和感に気付いた。
すると、狙ったかのように七宝が注釈をつけた。
「喧嘩しとるのは本当じゃが、実は今げーむの途中なんじゃ」

曰く、思っていることと正反対なことしか言ってはいけないルール。相手が負けるまで続行というある意味すごくチャレンジャーなゲームである。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」

言葉も出ない、とは今の二人の状態だった。
だから、と、七宝と楓の呆れた表情の理由を、彼等はようやく悟った。

ああ、つまり、何か。

喧嘩してるように見せかけて、実はこの人たち現在ものすごい勢いで惚気ていると、そういうことか。


理由が分かってほっとするべきなのか、紛らわしい遊びをするなと怒ればいいのか、もういい加減やめなさいと嗜めればいいのか。
なんとなく、二人の輪の中に入ってはいけない気がするけれど、何か言わずにいられない心境に陥る弥勒と珊瑚なのだった。






最後手抜きました(殴)ごめんなさい。











ウェブ拍手じゃないけど(その予定だったけど先出したものたち)。



あ る 意 味 夜 這 い 。





ああもう。

いい加減に、流されている自分が心底情けなかったけれど、それだけ彼に惚れているということは、案外周りは知らない。
常々、何かある度にこちらが妥協してしまうせいだろうか。どうも自分の彼への恋情が、淡白なものだと判断されている気がしてならない。
いや、そもそも原因の八割方は彼の方に原因があるだろう。

少年が、口付けすることを許してくらいから、自分に対する態度が露骨に変わった。それはもう暇さえあればくっついている上、揶揄されても離れない。
何というか、想い人の少年は、ある一線を一度でも超えてしまえば、あとは躊躇とか体裁だとか、そういう言葉を消去してしまうのだろうかと思った。・・・・・それすらも、本当は今更なのだけれど。
手を繋ぐ事や、抱き合うことが精一杯だった時期がとても懐かしくなる。あのときは自分も随分と慣れていなくて挙動不審に陥ったものだ。
とまぁ、とりとめもないことを考えるのはもうやめにして。
「・・・・・・・退いて」
「やだ」
主語も何もない言葉に返ってくるのは否定の一言だけ。
説得するのが面倒になってきたし、実際のところ、そんなにまんざら嫌でもなかったから放置していたけれど、もういい加減眠いというのが本音だ。
「ここ、私の家で。隣の隣草太の部屋だし。下にはママとじいちゃんいるし」
「お前が声出さなきゃいいんだろ」
無茶言うな、と言いかけた唇が強引に犬夜叉のそれによって塞がれた。
「っ・・・・・・・ふ・・・ぅ」

くちゅりと、淫猥な響きの水音が、真夜中の暗い部屋の中に響いた。
ようやく解放されて、呼吸困難に陥っている少女とは裏腹に、少年は既に次の口付けをしようとしている。
この合間だって、少女が口付けの最中は恥ずかしがって呼吸を止めてしまうことを知っているから、正常な息継ぎになるまで待っているだけのことで、それさえなければこの少年は多分間違いなく1時間だろうが2時間だろうが離してくれない。むしろ絶対。
体力馬鹿、とはよく言ったものだ。彼なりに一応、自分にあわせてくれているのは分かっているので、それは有難い。けれど、これをされなかったらもっと有難い。
ちゅ、とわざと音を立てて犬夜叉は少女の首筋に舌を這わせた。
「んっ・・・・!も、い、加減にして 犬やしゃ・・・・っ!」

ぐ、と押し返すものの、所詮は少女の腕力で少年をどうこう出来る筈もなく。
(・・・・・・あー、もう。いっそ自爆しようかしら)

おすわり、と呟いて。押し倒されてる状態だから間違いなく自分も潰れるけれど、それより何よりとっとと寝たい。
少年がかましてくる突飛な行動のパターンは把握している。こちらが許可しない限り、絶対に襲ってこないのも知っている。
馬鹿のように律儀だから、少女だって惚れている。ここまで大切にしてくれているから、それだけ少年に返したいとも思う、けれど。
「あの、ね犬夜叉・・・あたし、本当に寝たいのよ・・・あんたが四日連続で寝させてくれないからわざわざ戻ってきたのにあんたまで来たら意味ないじゃない」
「何、言ってんだよ、んなことしてねぇ」

とことん自覚のないせりふにかごめは少し泣きたくなった。
数日前。珍しく野宿になったとき。仲間が近くにいるにも関わらず、犬夜叉に襲われた。
いや、実際は口付け以上を許可していないので口付け止まりなのだが。それでも、熟睡している上に周りの気配に敏感な人間だらけという空間でされたことが嫌で、とりあえず気付いてすぐさま起きると犬夜叉を引っ張っていって、人が近くにいるときと、自分が寝ているときには絶対口付けするなとそれだけは強引に確約させた。

そんなわけで、かごめはしょっちゅう起こされている。
犬夜叉の中では、すでにかごめが起きているときにだけしていい=起こしたら問題ないなのだ。
(ていうか、前までそんなにしょっちゅう寝てる時にされたのかしら私・・・・・)

一方的に言い渡して早四日。連続で起こされるということはもうそれしか考えられない。
だとしたらすごく恥ずかしいんですけど、とかごめは誰にとも知らずに弁解のような言葉を内心だけで吐いた。

まぁ、でも。
すごーく幸せそうに自分を抱きしめている少年を邪険にできることなど、勿論出来る筈がなく。
そもそも、周りにはバレにくいが、少女だって少年並に、少年のことを好きなのだ。少年の愛情表現の激しさ故に、気付かれないだけで。
しかし、だからと言って寝ているところをいきなり起こされて、そんなことを毎回されているこちらの身にもなってみろ。恥ずかしくてそのまま寝るなどという芸当ができるものか。

はぁぁ、と。少女は溜息をついた。
(でも)

(仕方ないのよね)


(私だって、犬夜叉にこうしてもらうの、好きなんだから)




いつになったら普通に眠ることのできる日が来るのだろう、なんて思いつつも、それが少し名残惜しいと感じている自分に苦笑して、かごめはそっと首を起こすと、不思議に思って顔を上げた犬夜叉に口付けを贈った。
これで、少しはこちらの苦労が伝わればいいのに、なんて少し意地悪なことを考えながら。







あーうんあのね。精神崩壊が妙な方向に行ったというか。えろブームというか(撲殺)てかえろ違うし。
寝てるときにしないでよ、って言ったら、じゃぁ今度から起こせばいいんだなとかって短絡思考になってる犬が書きたかっただけ(笑)
まぁとどのつまりは姫も犬も、お互い終わってるくらいに相手にめろめろってことで。うん久々に私らしい犬かご(待て)。

とりあえず、『イタズラなkiss』聞きながら書くものじゃないと思いました。(そりゃね)







第二弾。



心 臓 の 音 。(セクハラ)






「恥ずかしいんだけど」

「俺は別に平気だけど」

「あんたがよくても私は恥ずかしいの。誰が来るかもわからない往来でよくこんなことしようなんて思いつくわよ」

「此処はそもそも人はあんまし来ねぇし、来たとしても俺の鼻嘗めんなよ」

「そりゃぁ、分かってる、けど」

もごもごとかごめは口ごもった。
犬夜叉の方は、我が意を得たりとばかりに、ごそごそと、より一層かごめの胸に頬を寄せる。
自分が泣いて嫌がらない限りは、こういうことに関して犬夜叉が容赦ないのは知っていた。
そして自分も嘘泣きなどという芸当、到底できないので、そのまま彼が飽きるまで放置しておいてやるしか術がないのだ。

ちなみに『おすわり』をすれば、もれなく犬夜叉、本気で襲う気満々モードまで付いてくるのは既に検証済みだったので、やろうとも思わない。

(仕方ないか)

かごめは諦めると、無理やり上体を腹筋のみで持ち上げているという体勢を崩し、緑の絨毯に身を任せた。
ぼぉっと眺める先には、平和としか言いようのない青い空。・・・・・胸元に感じる感覚に、何だか変な声をあげそうな自分を必死で押さえつつ。
「・・・くすぐったいから、あんまり動かないで」
「ん」
「・・・っ・・・・・だから、摺り寄せないでよ、ほっぺ」
「ん」

不快感ではないのだけは確かだけれど、ぞくりと背から何かが這い上がってくるような悪寒のような感覚だけがかごめを苛んだ。
人の話を聞きもしないで、なにやら一人満足そうにしている犬夜叉を、かごめは軽く肘で小突いた。
「やっ・・・・・ん、ちょっと、犬夜叉、ってば・・・怒るわよ、私・・・・」
「・・・・・おと」
「え?」

いい加減、少年を退けようとかごめが犬夜叉の頭に触れたときだった。
唐突に、ぽそりと呟かれた言葉に、かごめは首を傾げた。犬夜叉は続ける。

「音が、する。・・・・・・・・すっげ、気持ち良くなる、この音・・・・・」

とくん。とくん。


緩やかに流れる、こころの音。
ああ、とかごめは納得した。あまり過去を語りたがらない少年から聞いた、数少ない話の断片を思い出した。
彼の記憶は常に独りきりの場面から始まっているのだ。一体何年もの間、人と接触しなかったかまでは不明だが、少なくとも、人の歳月でそれは途方もない時間だったに違いない。
その間に、彼は人肌の温もりも、心臓の音さえも知らなかったのだ。比べる人間が居なかったから。
「犬夜叉・・・・・」
「ん?」

遠慮がちな言葉に、犬夜叉が少女に顔を向ける。
嬉しそうに微笑んでいる少年の表情を直に見てしまえば、もうかごめに強く出ることはできない。むしろせめて、せめて、と。
(こんな・・・・犬夜叉が、人の触れ合いを怯えなくていい時がずっと続きますように)






「生きてくれてありがとう」




とびきりの笑顔で、笑ってやった。




本格的にセクハラに発展しそうだったんで(笑)強制的に方向転換。でも書きたかった趣旨だけは書きました。
セクハラしててもそうとは認識されないのが犬だと思う。でものぞきはしてなくてもしたって言われるのが犬だと思う。
だから犬はむっつり助平じゃなくて、弥勒様以上の堂々助平で!!(どんな主張だ)しかも本人自覚なし!!(笑)
つまりは無意識バカップルなのですよきっと。ていうか間違いなく。








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