時世の鏡








お前が死んだって聞いた時、俺はすごく後悔してた。

・・・いや、自分がしていた事を悔やんじゃいない。もしあそこに俺がいなかったら、かごめを・・・・・・かごめだけじゃなくって、弥勒も、珊瑚も、七宝も、雲母も、見殺しにしちまうところだったから。

どう言えばいいかわかんねえよ・・・。

これほどまでに、体が二つあればいいのにって思ったこともなかったし、お前が命の危機に立たされているときにのろのろとしていた自分を殴り飛ばしたくなるくらい悔しいのも確かなんだ。

癪だったけど、殺生丸に、助けられなかったのは俺だって言われたときは、心に空洞ができたんじゃねえかってくらい悲しかった。俺は結局、二度も奈落の野郎にお前を奪われちまったのかって。かごめの寂しそうな表情が日ごと増えていくのと同じくらい、俺はずっと上の空になっていった。かごめがどうでもいい訳じゃない。ずっと気になってたし、そんな表情させたくなかったんだ。
でも、どうにもならなかったんだ。かごめを傷付けてるって気付いていても、かごめは最後には俺の所に絶対に帰ってきてくれるって甘えがあったから・・・・かごめにずっと甘えてたんだ。
お前のこと、ずっと考えてたって、かごめは黙って待っててくれるって。

それで、お前のことずっと考えてた。


なぁ。
お前は蘇って、ずっと欲しがっていた何者にも縛られない自由を手に入れたんだよな。
あの時みたいに、いつ死んでしまっても構わないみたいな表情はしないよな。

もう俺みたいな、境遇が似ているからって寄り掛かりたい休み場所も必要、なくなっちまったのか?
それとも、もうそんな場所を手に入れてしまってた俺を、心から憎んでいるのか?


昔の俺なら、きっとこんな風になんて考えられなかったのかもしれねえ。
かごめと出会って、俺は変われた。


だから、桔梗。


お前にも、変わって欲しかったんだ。

俺と、お前は似てるから。あいつらにはさんざん、いい加減かごめを泣かせるなって怒鳴られるけど。
せめて俺がお前に会いに行っている時くらいは、安心してもいいんだって伝えたかったんだ。

結局、それは空回りして、挙句にかごめを傷付かせてばっかりだけど。
いい加減、かごめかお前か、どっちにするか決めろって言われたことなんて耳が腐るほど何回も聞いた。


なあ、桔梗。
もし、俺がお前のこと好きだったけど、今はかごめのことをどうしようもなく大切に想ってるって言ったら・・・俺を軽蔑するか?

そんな俺が、心からお前の幸せ願ってるって言っても・・・世迷言を言うなって、言うか?


いや、そんなの、どうだっていいんだ、本当は。

だから、どうしようもねえ二股男とか言われちまうのは分かってるんだ。
それでも、どちらも本当に手放したくない、大切な人だから・・・・幸せになって欲しい。



俺の、お前への最後の我侭だ。




たとえ、俺がお前と一緒に行けなくなっても、お前には幸せになって欲しい。














【終】

桔梗とかごめちゃんは、同じ魂ではあるけど、全く違う。
だから、生まれ変わりであるかごめちゃんを大事にするとは言わない。それはどちらに対しても失礼なことだから。
大切だからこそ、自分の元を離れたほうがいいと思う。それは自分にとって、何よりも辛いことだけれども。

でも、二人に出会えたことに、犬夜叉はたとえ最終的にどんな形になろうと、後悔しないと思う。

と、まぁ今の犬夜叉見てたらこういうイメージが。
そうじゃなくても原作で一時期桔かごに目覚めた(笑)犬かご派の子が増えたってのもいるからねぇ。
犬夜叉は、桔梗のことをどうでもいいだなんて思えないけど、でも今はかごめちゃんの方が大事かな?(疑問形で)っていうのが、今の犬夜叉に感じる桔梗とかごめちゃんへの想いです。私的には。
(H15.11.25)


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