犬夜叉とかごめの格闘記録 vol.3
好きだとか嫌いだとか、子供がすぐ口にできることは、真実を知れば知るほどに、言えなくなってしまう。
大人がそれだというのなら、子供のままでもいいと思っていたけれど、実際に知ると納得できた。
(言えないものなのよねぇ、案外)
大人になった覚えはないが、色々と人間関係の苦渋を知ってしまったかごめは、ほう、と短く息を吐いた。
すぐ隣には初めて異性として好きになったひと。
雰囲気がないわけでもなく、むしろ雰囲気がありすぎて、ここはひとつ、何かリアクションをするべきかとも思えるほどに久々の甘いムードで。かごめは正直なところ逃げたかった。
・・・・いや、別に犬夜叉が相手なのが不満だとか、嫌いだからとかそういうわけでは決してない。
しかし、しかしだ。
以前はかなり普通に『そういう』雰囲気になり、抱き締める以上のことだってしたこともあるし。今更のようにこれくらいの雰囲気で音をあげるような気性の持ち主でもあるまいに。そうは思うのだが、最近はどうもごたついたことが一気にあって、いろんな意味で本当に大変だったのだ。
最後の四魂の欠片を取りに行く為、あの世とこの世の境へ出向き、無事欠片を取ることに成功し、帰ってきて一息つこうかと思えば間も空けずに犬夜叉は桔梗を捜しに行って翌朝まで帰ってこないわ、そろそろ中間テストが近いからと楓の村へ帰ればやれ妖怪退治だ収穫に手伝えだと引っ張り出される有様で、骨休めにもならない。とはいえ、実際引っ張られまくっているのは、封印前と180度ほど違うと言っても障りのないほど角がなくなった犬夜叉が主である。本人は気付いていないようだが馬鹿力を理由にいいパシりになっている。弥勒は何だかんだで人当たりもよく(猫かぶりが巧いとも言う)村人と差し障りのない会話をして過ごし、珊瑚は楓の手伝いや武具の手入れ、七宝は雲母を連れて村の子供とその辺を駆け回り、かごめは与えられた時間中は現代で勉学に従事し・・・・まぁ、概ね生真面目なのでたとえ押し付けられた仕事でも最後まで完璧にやる少年以外はのほほんと平穏の毎日を送っていたわけであるが。
そしてついでに、お約束で耐えられなくなった犬夜叉がかごめを迎えにいって翌日まで帰ってこず、変な言いがかりをつけられるという微笑ましい(?)エピソードもあるが、あまりにもお約束なので割愛させていただく。実際はかごめ本人の許可がおりるまで忠犬よろしくお預け状態なのに相当の言われようの犬夜叉は少し不憫だが、普段の言動を見ている仲間からしてみれば「ついにやったか」感覚しか抱かないので、実際そういう、いわゆる『いかがわしいこと』をしたところで驚きはしないのだが、ここもまた犬夜叉の変に生真面目な性格が祟っているわけで、本当に不憫としか言いようがない。
ともかく、そこから先がまたえらくハードなことが続き、本当にその勉強の為に戻った期間から先は二人きりになるどころか休む間もほとんどないような日々が続いており・・・・・・つまりは、こういう雰囲気で二人きりになった時間というのは、それこそ本当に久々な訳で。
以前の自分だったらもう少し上手に犬夜叉に甘えられていたかもしれないが、少なくとも張り詰めている空気の中で日々暮らしていたせいでその甘い雰囲気にどうも違和感を感じてしまうのだ。
(昔の私、すごいわ)
と、どうでもいいことに妙に感心してしまう。
いつまでももじもじしているわけにも行かず、しかし心境としては今すぐ全力疾走で仲間の元に戻りたいくらいに恥ずかしいし、ここへ来るまで二人きりだということに気付けなかった自分の鈍さを呪いたくもなった。
しかし、普段どおりで行くというのならば、何故犬夜叉は自分の手を握っているだけで何もしてこないのか。
そんな疑問が頭に浮かび、期待しているみたいな表現に一人で赤くなったあと、そろりと犬夜叉の顔を横目で覗き見た。
そして気付いたのは、そうしても目線すらあわないという事実。犬夜叉の方も微妙に頬を赤くしてそっぽを向いたまま、それでも辛うじてといった感じで手を離さないでいてくれたらしいのだ。恥ずかしいとか、そんなレベルはお互いとっくの昔に超えているので、ただ単に照れくさいのだろうということは悟れたが、二人して照れていては進展するも何もないではないか。
他力本願なのは十分自覚していたが、お互い相手の出方を窺って待機中、といったところ。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
どうしよう。
頭の中に浮かぶ文字はそれしかない。
ちら、ともう一度かごめは犬夜叉を横目で見る、と、今度は同時にこちらをちらりとやはり横目で見た犬夜叉とばっちり目が合い、ばっと同時に目線を逸らした。どうしようという空気が一層強まり、繋いでいた手に力がこもる。冬だから幸いなことに、手の中が汗まみれ、なんていう大惨事にならなくては済んでいるが、湯気さえ出てきかねないほど赤くなった顔はお互いごまかせない。
同時に(相手の表情が)可愛い、などと思いながらもこの先どう動けばいいのかがまったく分からず困惑する。
今更こんなことで動揺してしまうとは。一時期はすごい勢いで迫られたことさえもあるのに不覚。
そんな現実逃避で構成された思惑も、犬夜叉の身動きひとつで起こった衣擦れの音を聞くと、威嚇した猫のように髪の毛が逆立つ勢いで、半分腰を浮かせて(でも繋がれた手のせいで逃げられず)中途半端な状態でかごめは固まった。それにびっくりしたのは犬夜叉だ。とりあえずこのまま無言のままなのもなんとなく勿体無いし、とりあえず抱きしめるくらいしてもいいだろうかと思い、かごめの方を向けば、小動物よろしく思いっきり飛び上がっているかごめ(しかも逃げ腰)がいるのだ。
いや、びっくりというよりは不審と言った方が正解に近い。
「・・・・・かごめ?」
少女に声をかけて、犬夜叉はようやく普段の感覚の一部を取り戻した。顔には出さなかったが(ああ、こんな感じこんな感じ)などと内心で呟きつつ、掴んでいた手をくいと軽く引っ張り、油断しまくっていたかごめは案の定、犬夜叉の胸元に倒れこんだ。
「い、いいいいぬやしゃ・・・・・」
(・・・・・やべぇ)
すごい面白い。
動揺して呂律がまともにまわらず、顔を真っ赤にしているかごめは、本当に気分を“そういうこと(いわゆるベーゼ等々のことだが)”をする前まで気持ちをリセットさせているらしく、初期の反応にとても似ている。というか、まんまそうだ。
(これはこれでいいかもな・・・)
むしろ、今はもうそろそろ順応性の早い自分は感覚が戻りつつあるが、かごめはいまだ感覚が初期帰りした状態なわけで。
初期は、犬夜叉とて最初からここまで開き直ったり云々はなく、手に触れることさえも躊躇う文字通り初【ウブ】な人間(半妖?)だったわけで、まるっきり恋愛初心者のかごめともレベルがどっこいどっこいだったから、均衡も取れていた。しかし、今の状態といえば、たまに照れて慌てるものの、(かごめ限定で)恋愛レベル手練れ(笑)な犬夜叉と、初級なかごめ。
このままでは間違いなく奴に絆されて流されるぞかごめ。
と、突っ込める人間は生憎おらず、あわあわしているかごめの両手を器用に片手で捕まえると犬夜叉はそのまま自分の体に押し付けるようにかごめを抱きしめた。顔が明らかに邪な方向の笑顔を浮かべていたが、そうすることでバレずに済んだ。
「かごめ」
ぴく、と少女の肩が小さく揺れる。ゆるゆると緩慢な動作で首を持ち上げ、困惑しながらもどこか潤んだ瞳で犬夜叉をじっと見つめた。これで自覚ありでわざとやってるなら相当罪つくりだなこの野郎、と思いつつも、犬夜叉は殊更真面目な表情を作る。
自分が必死のときに余裕ある動作をされると、不安を煽られるというのは自分の苦い経験上、知っている。たとえ上っ面を引っぺがせば普通に締まりなくニヤけているだけの自分しかいなかろうと、この場面でフザけてはいけない。かごめの気持ちが追いつくまでは何分掛かろうと待たなくては。
普段からそこまで頭を回せられれば仲間から小馬鹿にされることもあるまいに。しかし、そんなことを出来る気性の持ち主ならば、まず間違いなく桔梗と結ばれた時点でハッピーエンドを迎え、こうしてかごめと向き合い、本気で気持ちのぶつけあいなどしてはいないだろう。器用なくせ、ひどく不器用な性格ゆえの災難だ。しかし、今の状況を考えれば“災い転じて福となる”といった方がいいだろう。
「あ、あの犬夜叉・・・・」
「ん?」
少年の首にかかった言霊の念珠を指先でいじりながら(手は捕まったままだ)、かごめはなんとなくこの状況が居た堪れなくなり、視線をあちらこちらに彷徨わせながら言葉を捜した。しかし、浮かんでくるのは視線の先の珍しい羽を持つ蝶だったり、この季節にもまだ頑張って生きている色彩豊かな草花への関心であるので、どうしても現実逃避もしくは話題の転換を促す言葉にしかならない。
(う〜・・・逃げることばっかなの?私ってば・・・)
思わず頭も抑えたくなるが、両手を拘束された状態でそれが出来る筈もなく、無意味に木枯しが吹き抜けていく。
ああ、そういえばもうすぐ冬ね、などと、また意識がふらりと一人旅を始めようとした瞬間、意識ごと、わしっと掴まれた気がした。
「なに、別のこと考えてんだよ」
拗ねたような犬夜叉の声に、反射的にかごめは顔をあげた。
そして、予想と違わぬ男としての顔はあるが、付属装備として捨てられた仔犬の目をして訴えてくる犬夜叉の表情に、かごめは(う゛)と固まる。犬耳が微妙にへたれているところがポイントだ。哀愁感倍増である。
「えと、あのちち違うのそうじゃなくって!!」
相変わらずわたわたした言動だが、言い返すようにはなったので、ここまでは戻ってきたか、と犬夜叉は口の中で呟いた。
「・・・何?」
「・・・んでもねぇよ」
ふいと顔をそらして、少し横目でかごめの顔を見る。
案の定、「怒らせた?」と顔に貼り付けたような頼りなげな表情で、しかも上目遣いで見られるのだ。
その破壊力を想像してほしい。
犬夜叉でなくともノックアウトだ。自覚がないあたりが更になんとも言えなくさせる。
(駄目だこいつ可愛い・・・・・・・!)
もはや阿呆としか言い様がないかごめ馬鹿だ。しかし、何度も繰り返すがここにそれを突っ込んでくれる人物は誰もいない。
いきなり手で顔を覆い、肩を震わせはじめた犬夜叉に、かごめはますます困惑顔を強める。
「犬夜叉?」
「あー?・・・・・何だよ、かごめ・・・・」
息も絶え絶えに辛うじて返事をすると、あからさまに安堵したらしいかごめは、おずおずと、ようやく拘束を逃れた両腕を犬夜叉の腰に回した。そろそろ免疫力も戻ってきたとはいえ、いまだ恥ずかしそうに頬を染めっぱなしのかごめに、最初は少し驚いたが、やがてふっと笑みをこぼすとその体躯を抱きしめ返す。ようやく抵抗もなく受け入れてくれたことに、がっかり半分、嬉しさ半分でかごめの髪に軽く口付けた。
(・・・あ――この感覚か)
と、かごめはひっそりと、久しく感じていなかった感覚に懐かしさを感じながらも擦り寄った。寒さで少し冷えた肌が暖かさを取り戻す。
研ぎ澄まされ続けていた感覚が融けて行くような、浪費し続けていた精神がゆっくりと回復していくような感覚が心地いい。
ずっとぎすぎすした状態で毎日を過ごしていたせいで、こんなにもゆっくりと二人きりの時間を求めたことはなかった。
桔梗とのことで意地になり、必要性を感じなかったのもあるが、何よりもしなくてはいけないことの為に躍起になっていた。ときには、寝ずの番を決めねばならないほどに張り詰めた時期もあった。しかしそんな状況に陥っても、一人平然と、休みも取らずに動き回っている犬夜叉の心配ばかりしていたためか、自分が疲れていることに気付けなかったらしい。
唐突に訪れた安寧の時間に、少女は今、とても安心している。
息遣いで、手に取るように分かるかごめの様子に、犬夜叉は安堵の息を吐いた。
「かごめ」
ひどく安堵しきった少女に悪いとも思ったが、正直こちらだって十分待った。これくらいは許されるだろうと少女の名を呼ぶ。
ん?と、表情で返すかごめの頬を、鋭利な自分の爪が当たらぬように細心の注意の払って撫でる。くすぐったそうにかごめが目を細め、そして久々の感覚。そっと親指でかごめの唇を辿ると、かごめはかぁ、と頬を染めた。
「・・・・いいか?」
わざと耳元で尋ねると、意地悪、という肯定の“返事”を貰い、ゆっくりと顔を落とす。
そして――――
突如草陰に現れた気配に、犬夜叉は青筋を立てた。
“それ”が飛び掛ってくる前に、かごめを抱えたままひらりと身をかわしたのでかごめに怪我がある筈もないが。
「ふ・・・・・・ふふふふふふふふふふふッ・・・・」
「い、犬夜叉・・・・?」
かごめをそっと降ろすと、鉄砕牙の鍔【つば】を指先で弾き、ゆらりと、どす黒いオーラ(邪気とも言う)を纏わせて、今しがた、獲物を仕留め損ねて再び草陰に逃げ帰ろうとしている妖怪を、据わり切った眼で見つめていた。
ちなみに、ここで余談になるが、妖怪には見た目と能力に比例して、とある特徴が出てくる。
人に近い形を形成している者が、最も格上の妖怪であるのは周知の事実であろうが、そこから下は順に、辛うじて人型で人語を操れるもの、人型ではないが人語を操れるもの、辛うじて人型だが人語を操れないもの、そして、最下層が人型でもない上に人語も操れぬもの。
そう、つまりはさっき乱入してきたのは、人語も操れぬ人型ではない存在。つまり、妖怪のランクで言うと最下層のものであって。
さて、もう一度くらい反芻すれば、犬夜叉の気持ちは分かって頂けるだろうか。
彼は、ここ最近の忙しさのせいで、禁断症状(笑)が出るほどにかごめ不足で。
ようやく好機が巡って来たと思ったら、かごめは久々すぎて言動が初期段階まで退行しているので辛抱強く待って。
ようやくかごめも落ち着いたのでいざかごめ不足を補おうとしたところに邪魔が入り。
それが殺生丸だの奈落だのだったらまだ、頭の中が戦闘最優先状態に切り替えられよう。またそれらより少しは格下でも、とかく歯ごたえのある敵が相手だったらまだ良かっただろう。しかしながら、実際に襲ってきたのは、多分一匹で人間を襲うには実力がままならず、一人きりで森へ迷い込んだ非力な村娘や家畜を盗み食って生きているであろう、言っては何だが鉄砕牙を振るうことさえも勿体無いといえる、そう。
奈落が使い捨てで放つ雑魚の中の雑魚ともいえる存在に、久々すぎて思わず涙すら出てきそうなほど待ち焦がれた逢瀬を邪魔されて。
・・・・・・・くどいほど説明した上だ。どういう心境か、言うまでもない。
ばきりと爪を鳴らすと、容赦もくそもない速度で散魂鉄爪を放ちとどめを刺した後、間髪入れずに乱暴に鞘から鉄砕牙を抜き取ると問答無用で(しかし、前後確認するだけの余裕は残っているようで、ちゃんと何もない方向へ向けて)風の傷を放ち、すでに息絶えて崩れかけていた体を粉すら残さず粉砕した。
(鬼・・・・・!ていうか私の前に夜叉がいる・・・・・・・・・!!)
さすがに口にしてつっこむのは恐ろしく、押し黙ったまま犬夜叉の後ろをびくびくと見つめていたかごめだが、ようやく落ち着いたらしい犬夜叉がふぅー、と重い溜息を落とすと、ひょこひょこと少年の横へ並んだ。
「あ、の・・・・・犬夜叉・・・・・?」
「かごめ・・・・」
「!あ、あの犬夜叉っ!?」
ぐてー、と効果音がつきそうな仕草で圧し掛かってくる犬夜叉をかごめは必死に支えた。
「ど、どうしたの?!さっきの妖怪に何かされた!?」
「されたよ 思いっきりな・・・・」
かごめの肩に顔を埋めたまま、くぐもった声でうんざりと犬夜叉は返した。
「・・・・大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇ・・・・」
さっき邪魔されたことを言っているのだと分かり、かごめは苦笑した。確かに、かごめも少し惜しかったと思ったが、抱きしめあっていた時点で満足していたのでそんなに不満はなかったのだが、犬夜叉は不満おおありらしい。演技ではなく拗ねた声はとても幼く聞こえた。
「はいはい、拗ねないの。・・・・・いいじゃない、そ、それくらい・・・」
「ヤだ」
きっぱりはっきり不満をこぼす犬夜叉は微笑ましいが、一体どうすれば機嫌を治すのかと思う。
いや、ひとつだけ確実に治りそうな方法が即座に脳裏に過ぎったが、正直自分からは恥ずかしすぎてまだできない。
方法が他に見つからないので、とりあえず駄目で元々、『自分から口付け』は一時保留にした。
「えと、戻ったらカップラーメンあるから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ポテチもあるしー・・・・」
「・・・・俺は七宝か」
「〜だ、だって」
食い物で釣ろうとするなと暗に言われ、困惑する。しかも、とどめとばかりに「本当は分かってるくせに」とぼやく。
どうあってもやれ、と言われた気がしてかごめは軽く眩暈を感じた。
(そっそうよね!唇当てるだけでいいんだからっ!大したことないわよ!)
案ずるより生むが易しとはよく言うが、こればかりは故人の言葉もあてにならない。むしろ逆だ。
ついでにいうと、犬夜叉相手に“当てるだけ”で終われるとは到底思えない。
僅かに躊躇い、思案していると
「かごめの唇はやわらか「頼むからそれ以上は喋らないで(涙)」
なんか変なことを言いかけた犬夜叉の口を塞いで黙らせると少しの間黙って見つめあい、やがてかごめは降参、とばかりに息をつく。
「・・・分かったわよ、目、瞑って」
思わず逃げたくなる気分を奮い立たせて、かごめは元々の負けず嫌いも手伝い、なんとか踏みとどまった。
そして、ゆっくりと閉じられた琥珀色の瞳が消えると、つま先で伸びをして、犬夜叉の唇に――――
人というのは、禁欲生活をずっと続けていてはいけないのだという、教訓。
元々、かごめに対して並々ならぬ努力で本能を押し留める犬夜叉の忍耐力の凄まじさは賞賛に値する。
しかし、しかしだ。
犬夜叉とて、半分は妖怪とはいえ、いや、だからこそ。
好きな女子にそういう対象として触れない日々がいかに苦痛か、ということを切々と訴えたいというか。
有体に言うならば、お前それ以上やったらエロ指定になるから、と思わずストップかけたくなるほどの勢いで襲い返しちゃいました、というか。
(でも、たまには時間あけてやってもいいかもなぁ・・・・反応が面白れーし。)
多分、犬夜叉がそんなことを考えているのは内緒にした方がいいだろうし、今後、かごめもうっかりと気を抜けばすごいことになりかねないから気をつけろ、とも言いたいが、生憎と彼女の中に、犬夜叉に対する警戒心というものがほぼ皆無なのも問題と思われる。
(ま、お互い骨休めになった?と思うし、いいか)
と、彼の行動を許容してしまうかごめの包容力の異常なまでの大きさにも多大に問題はあるかもしれないが。
報われていないんだか、報われているんだかよくわからない少年、犬夜叉。
今回の勝負は、どうやら犬夜叉の勝ちで、終わりを迎えたらしい。
とにもかくにも、本人たちがそれなりに幸せそうなので、よしとしよう。
【終】
あー、こんな感じこんな感じ、と思ったのは私です(笑)最近全然小説書いてなかったもんでノリが掴めず。
うちの犬かご一応キス止まりですから!!(だから説得力ないよ)どこまで突っ走ったらいいのか分かんなかったので初期戻りという安全パターンをとりました。いくら習慣付いた行動でも、何週間、何ヶ月単位でやってないと、久々にそれをやるとすごい違和感が生じると思うのですよ。
蛇足注釈:ベーゼ→接吻。つまりはキスのこと。
個人的にお世話になりまくった綺羅さんに捧げます。・・・・・・こんなノリですいません(汗)
よろしければ貰ってやって下さいませ。等価交換にならないかもしれませんが・・・・・・!!(滝汗)
(04.12.18)
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裏発言→ていうかうちの犬ってこんな姫と四六時中一緒で立たないのかしら(待て待て待て待て待て)