気まぐれだけれど限りなく本気の気持ち。
「・・・・・・・・・・かごめ」
「う?」
呼ばれてかごめは、現代から持ってきていたお菓子を口に咥えたまま、少年に向き直った。
その顔には薄っすらと、何か真剣な面差しがあることに気付き、かごめもつられて真面目な顔になった。
こう云う顔を彼がする時とは決まって、余暇を楽しむ自分等の邪魔者・・・・こう云う場合はまず間違い無く、己の力量と相手の力量を見極めきれずにむざむざ無駄死にしにくる雑魚妖怪の類が来る時に限られる。
だが・・・・・・・
「・・・犬夜叉・・・・・何か来るの・・・・・?」
実際、彼女も自覚は無いとはいえ巫女の力は並以上に持っているし、邪気だって感じられる。
何かが来れば、まず彼と同じくらいの速さでその気配を察知できる筈だ。
だが、彼の向く先には邪気どころか寧ろ清らかな気配さえ漂っている。
彼の警戒の色からして妖怪の類なのだろうが、かごめは一瞬彼を疑い・・・そして、思い出した。
以前にも彼女等は、巫女や法師の法力を好んで喰う鬼やら洞窟の形をした妖怪やらと出会っているのだ。ならば妖力の代わりに人間から奪った霊力を自分の力として使う妖怪が居ても可笑しくは無い筈。それならばまず彼女等の仲間である弥勒や珊瑚を呼んできた方が得策なのではないだろうか?
そこまで思考を巡らせて、かごめは咥えていたお菓子を急いで飲み下し、彼等を呼びに行こうとした・・・・が。
ぐいっ・・・・・
「っ?!・・・・犬・・・・・夜叉・・・・?」
突然、引き戻されたかと思うと、次の瞬間には、かごめは彼の腕の中に居た。
不思議そうに見上げる彼女に意味ありげな笑みを零すと彼は、あいつらは呼ばなくてもいいと、かごめを更にきつく抱き締めた。
ますます訳が判らないも、普段そっけないを装う彼が進んで自分から彼女を抱き締めてくるなんて事自体が稀で、かごめは半ば、その状態に酔いしれるようにされるがままになっていた・・・が。
ひゅんっ――――!
突然、何処からともなく飛んできた矢をかわした時、はっと気付いた。
「き・・・・桔梗・・・・・?」
音も無く降り立ち、彼女と対峙する彼に視線を馳せ、かごめは不安げな瞳を向けた。
(もしかして桔梗・・・・犬夜叉のこと・・・・殺しに・・・・?)
当人同士にとっては間違っているような、そうでもないような事がかごめの脳裏に過ぎった。
その間にも、彼・・・犬夜叉と桔梗の睨み合いにも等しい無言の攻防が展開していた。
「さっき・・・・・」
先に、桔梗が口を開く。
「かごめに何をしていた・・・?犬夜叉・・・・」
おおよそ彼女らしくない、明らかに怒気を含んだ声に少しも動じるような気配を見せず、犬夜叉は更に手前でおろおろしていたかごめを再び抱き締め、答えた。
「見りゃ判るだろーが。それともその体になってから頭の方まで土だらけになっちまったのかよ?」
・・・・事実上の宣戦布告。
この場にもし、彼等の力量、過去をかじった程度でも知っている者が居れば誰かは必ずこう漏らしたに違いない。
桔梗は眉根が跳ね上がらせ・・・ついでに引きつった笑みも見せた。
「上等だ・・・・」
「・・・・・?あれ?(何か違うんじゃ・・・?)」
今更ながら、何か話が根本的に可笑しいと気付くかごめ。
きょとんとした瞳を彼に向け、かごめは首を傾げて尋ねた。
「・・・なんで喧嘩売ってるの?桔梗に・・・・」
余りにもズレすぎたかごめの質問に、犬夜叉本人含め、桔梗までもずるっ、と肩を落とした。
『って、本気で気付いてなかったのか お前っ?!』
さすがに天然ボケとかいうレベルをとっくに超えているであろう鈍感さに、彼等は声をハモらせた。
同時にそうツッこまれてかごめはびくっと肩を竦める。・・・その態度に犬夜叉は他に何も云えなくなってしまった。
「まぁハッキシ言ってないヤツの方が悪いけどな」
ぼそっと呟き、再び桔梗に向き直ろうとした時・・・彼は、腕の中の温もりが瞬時に失せた感覚を覚えた。
それもその筈だ。一瞬の隙をついて桔梗がかごめを掻っ攫ったのだから。
「あ゛ってめ よくもっ・・・・・」
「油断していた方が悪い。いつまでもその状態で話すな。気分が悪い」
そう愚痴る割にはその彼女の腕にはかごめがちょこんと収まっている・・・・・。
その後ろには死魂虫数匹が絡まりあって待機している。しかもそのまま後ずさっていく桔梗。
あからさまな桔梗のその態度に、犬夜叉は眉を顰め・・・・間合いを図ろうとする、が。
ひゅっ! ・・・ざくっ!
乾いた空気に、素早く引いた彼女の矢が放物線を描くように真っ直ぐ、彼を狙ったが犬夜叉は間一髪でそれを免れた。
「犬夜っ・・・・・・」
心配そうなかごめの声が掛かるが桔梗は素早く彼女の口を塞ぎ、自分の代わりに時間稼ぎのつもりか死魂虫を犬夜叉に放る。だがそれも彼は片手に重心を掛けて体を捻ると同時に鉄砕牙を抜き、一、二匹の死魂虫の胴を薙ぐ。
時折桔梗が矢を数発、撃ってくるがそれもかごめを抱えていて狙いは正確ではない。
「ちょっ・・・桔梗っ!」
「少し黙っていろかごめ!・・・もう少しで終る・・・」
「そんなっ・・・・」
傍から見たらこれほど莫迦らしい闘いも無いだろうが本人たちは至って真面目だ。
それに触発されてなのかは定かではないが、かごめが悲痛の叫びを上げる。
だが次の瞬間、かごめは桔梗の腕を抜け出すと、その闘いの真中に飛び出した。
驚き、両者共、振り上げていた刀も、構えていた矢も下ろした。
「かごめ・・・・・」
攻撃が当ると認識していて、無意識で庇っていた顔を上げて、かごめは両方に悲しげな眼を向けた。
「・・・・ねぇ」
動揺で動けずにいた犬夜叉と桔梗に、かごめはゆっくりと口を開いた。
その様はまるで、何か自分よりも幼い者に優しく声を掛けてやるような声と顔で。
「二人とも・・・何かよく判んないけど、私が居るから、闘わなくちゃいけないんだよね・・・?」
寂しげに、かごめの顔が揺れる。
「私さえここに居なければ・・・やっぱり二人は仲がいいままだったのかな・・・?」
・・・・・いや。
それは少しは当らずも遠からずだがかごめの考えている事と事実は何かが確実に噛み合っていない・・・!!
思いっきり否定したいのだがかごめの雰囲気がそれを許さない。
その間にもかごめは言葉は続けようとした、が。
「・・・・そんなんじゃ、ねぇ」
かごめの言葉を制し、犬夜叉が搾り出すような声で言った。
彼の言葉にかごめは少し顔を歪め、何かを堪えるように自分の制服のスカーフを、血の気が失せるほどきつく握り締めた。
その様はまるで、何を言われても平気を振舞えるよう準備しているようにも思える。
「遅かれ早かれ・・・・いつか必ずこうなる筈だったんだ・・・・俺は、お前が好・・・・」
「やっぱり私の所為なんだっ・・・・」
「?!」
気恥ずかしさの所為で声が掠れていたのが原因か、彼女の耳には彼の言葉の片鱗しか聞き取れなかったようだ。
元々大きく、好奇心に満ちている筈のその眼に、大粒の涙が零れた。
「莫迦者!誤解されてどうするのだ!」
桔梗が忌々しげに舌打ちして彼をごく普通に罵る。
そして彼女に近付こうとした 直後・・・・・・
「ごめ・・・・ごめんねっ!二人ともっ!私もうこっち来ない!四魂の欠片は仲良く二人で集めてっ」
「かごめ――――――?????!!!!!」
頭の中で何やら自己完結させてしまったらしく、かごめは泣きながらそのまま井戸へと駆けて行った・・・・。
じゃぁそのあと、一体どうやって収拾をつけたかというと・・・・・・
一応のところ、両方が折れて、かごめの前だけでは『まだ』仲がいい二人を演じる(かごめにはもうそんな事はないと言っただけ)ということでその場は収まり、桔梗はまだかごめがごねるといけないから、と結局帰って行ってしまった。
そして取り残された犬夜叉とかごめは・・・・・・
かごめは犬夜叉に抱きすくめられて。犬夜叉は、彼女の髪に顔を埋めて。
それぞれ何となく、格好のつかない状態で愚痴りあっていた。
「・・・別に私に気を遣わなくてもいいのよ」
「気なんか遣ってねーよ。掛け値無しの本能のまんまだ」
「・・・・・何云ってんのよ ばかっ」
「おーおー。莫迦で結構。ついでに云うならその上に『かごめ』付けろよ」
「あたし、そんなに莫迦?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どーいう解釈でそうなるんだよ。じゃなくて、俺はお前に・・・・・」
――そこまで言いかけて、ふと、近くの茂みから気配を感じ、犬夜叉は暫し硬直し・・・・
あんまり躊躇わずに、その辺の拳大の大きさの岩を、かごめにバレないように軽々持ち上げ、気配の元へ無理のある体制にも関わらず、ほぼ普通の人間の投げる剛速球並のスピードで投げつけた。
何か鈍い音がしたが、それはそれで人のいい所を盗み見などするから天誅が下ったとでも云うのだろう。
三つの気配のうち、何処ぞの色魔とさえ云える法師を狙ってぶつけたのだから。
「・・・・・・・・・・・・・・?」
勝ち誇ったように薄笑いする彼にかごめはきょとん、と彼の腕の中で首を傾げたが、その顔は、デバガメして彼の無言の制裁を受けた人の居る場所には向けられぬよう・・・唇を塞がれた・・・・・
【終】
・・・・駄目だ。私もしかしてギャグの方が書き易いんだろーか・・・?(汗)
てか何故ギャグにしようと決めたらひたすら全てをギャグにしようとするんだろう 自分・・・・・
そんなこんなで キリ番5000申告者無しだったので権利譲渡いたしました水瀬さんリクの「犬夜叉×かごめ←桔梗でギャグ」。ってかギャグじゃなきゃこんな話書けないよ(笑)シリアスだとどうなるの?これ・・・・・
天然ボケかごめちゃん・・・・私大好きよっ☆桔梗がおバカさんなのも好きvでもこれはちょっと壊しすぎだよね(大汗)。
ちょびっと反省してます(ちょっとかい)。でもまさかあーゆー同盟は作ったけどこういうリクエストしてくれる方がいるとは思いもしませんでしたよ・・・やりますね・・・水瀬さん・・・(ごふっ)いや、すごーく楽しかったですよ。書いてて。
特に意味もなく盛り上がってしまったアクションシーンとか(笑)やれば出来るじゃん自分っ(ちょっと感動中)
リクエスト無くても今度続編書いてみたいですわv(いや、ハマるな。そこ)
弥勒様・・・・・・・・名前こそ出ていませんがご愁傷様。まぁあれだけ派手に騒いでたら幾ら何でも来るわなぁ・・・・・
それより犬夜叉・・・デバガメ居ると知っておいて続行するなよ。このかごめバカさんめ!!!(笑)
ちなみに文章の書き方が何処ぞの某FFサイト様に酷似してますなぁ 今回・・・・・。
ともあれ、リク有難うでしたっ☆
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