俺がそのとき思ったのは。

このどうしようもない大人を何とかしてくれ、だった。








何となく、話をきりだしたときから、余裕なさそうな顔してたけどまさか。
その直後にいきなり抱きつかれるとはさすがの俺も思ってなかった。
俺は勿論、すぐさまそのボケた頭を蹴り飛ばして離そうと思ったんだけど。
腰にしがみついてくる、俺よりずっと長生きしている筈の大人が鼻をすすったのを聞いて、どうにも居た堪れなくなって、結局されるがままというかなり情けない状態を維持するハメになっている。
何かすげー理不尽。

きっかけは、あれだ。
俺が、街でよく行く店の(多分同い年の)子に告白されたことを何の間違いかこの大人に話してしまったことだ。
俺はあんまり見た目の違いとかわかんねえけど、結構可愛い子だったと思う。
ふわふわした、背中まであるライトブラウンの髪とか、緊張して赤くなってるほっぺたとか、好奇心旺盛そうな真ん丸の、髪と同じ目の色した子。会計を済ますときに何回か会話したことはあるけど所詮それだけ。特にプライベートで会ったとか、そんなことは一度もない。
だから、何でそれなのに俺のことを好きだなんて言えるんだろう、と思ったこともあるけど。

俺は一応、その場で、本当、俺にしてはすごい丁重に断りを入れた。
色恋沙汰の話は苦手だ。なんつーか、嫌いじゃないけど、むず痒くなる。
自分がする側だとしたらもっと苦手だろうな。

その子のこと、嫌いじゃなかったけど、だからって好きでもない。
ていうか、あんまり知らない子のこと好きになれるって感覚もよく分かんねえ。
第一に、俺にはそんなことしてる暇はなかったから。

好きって言ってもらえたことは、純粋に嬉しかった。嫌われるより全然いいだろ?
でも、それだけ。

そんなこと思ってるから、アルに「兄さんって乙女心が分かんないよね」って言われる自覚はあるけど、仕方ねえだろ。本気で分かんねえんだから。
最初、その子はちょっとだけ痛そうな顔してて、すげー悪い気になった。
でも、すぐに立ち直ったみたいに、いつも店に立ってるときみたいな笑顔に戻って、「ありがとう」って言った。

・・・・・強いな、って思う。
何で女ってのはこう、強い奴が多いんだろう。
勿論力が、じゃなくて、気持ちっつーか、精神的な強さっつーか。
ああいうのは、男じゃ絶対歯が立たないって気持ちになる。
でも、立ち直ったからって、すぐに何でもないことに出来る筈ないのはよく分かってる。
ちょっと前まで、ずっと一緒にいた奴がモロにそのパターンだったから。

俺がいなくなったら、この子も泣いちまうのかなって思うと、すげー申し訳なくなったけど。
結局、俺に出来ることなんてないんだ。むしろ、半端な情は余計にこの子のこと傷つける。
何だかもどかしい気持ちになりながら、俺はその場を後にして。

何となく。
そう、本当、何となくで、うっかり某大佐に喋ってしまった。
そしたらこいつ、告白されたくだりまではにやにやと嫌な笑い浮かべながら聞いてたくせに、申し訳なくなったっていう俺の主観を喋りだした瞬間、いきなり勢いよく椅子引いたと思ったら、その無駄にでかい体でアタック食らわせてきたもんだから、咄嗟に受身も取れずに座っていたソファに前倒しにされた。
そんで、冒頭に戻る訳だが。

「・・・・・・オイコラ馬鹿大佐」

離れろ、と俺が目の前にある黒髪を一房引っ掴んで引っ張ると、呻くようにくぐもった声が「痛い・・・」と文句を洩らす。
おーおーそうかよじゃあ離れろよ、って何余計力込めてんだ離せ馬鹿野郎!
「〜何だよ俺が悪いってのかよ!何か文句あるならとっとと言えよ!」
「・・・・・別に、悪くはないが」

やけに口ごもる大佐に俺の方は本気でキレそうだった。
ただでさえちょっとへこんでるのに何でコイツの方がへこんでんだとか理不尽になる。
俺がいい加減、本気でコイツを蹴倒して離そうかと本気で思い始めたとき。
「きみが」
「あぁ?」

「君も、そのうち、そうやって異性に興味を持っていくのかなあ、と思うと、無性に寂しくなった」
「・・・・・・・・・・・何ソレ」

俺的には、何でそこまで話が飛躍すんのかが全然分かんねぇ。
つか、寂しいって・・・・・

「何、じゃあ大佐は俺にどうして欲しい訳?俺のこと好きとか言い出すなよ?」
「いや確かに好きだけどそういう意味では皆目」
即答するくらいだったら最初から言うなよとか内心で思いながら。
俺はあからさまに疲れてます、とばかりに溜息をついた。

「じゃあ、何か。俺はアンタ生きてる間ずーーーっと好きな子見つけんなってことかそれ」
「・・・・・・・・・・・・・・あれ?」
「あれじゃねえよ」
思わず右でつむじの中心に肘鉄を入れてやったらさすがに痛かったんだろう、やっと手を離して、代わりに打った頭のてっぺんを押さえながら少し涙目で俺を睨んできた。
・・・・いや、さすがにさっきのは痛かったかなって思ったけど今のはあんたも悪いんだからな!?


無言で睨み合って約10秒くらい。
やっと痛みが治まってきたらしい大佐が頭から手を外して、少しだけばつが悪そうに目線をそらすと、多分照れてるんだろう、「すまん」と小さく謝罪して頬をかいていた。
「いや、なんていうかだな。実際子供はいないんだが多分あれだ、結婚式に娘を送り出すのを惜しむ父親の気分というかだな」
「とりあえず突っ込みどころ満載だけどな。まず俺はあんたの子でもないし『娘』じゃねえぞ?」
「分かってる。だから不思議だ・・・・」
本当、心の底から心底不思議がってます、とばかりに首かしげる大佐に俺は思わず噴出した。
自分でやっといてそれはねえだろオッサン。

だからじゃないとは思いたいんだけどさ。
「・・・まあ、俺も今はやることあるから、暫くはそんな相手見つけるつもりねーから」
なんて、この大人にリップサービスしてやったのは、絆されたから、なんかじゃ断じてねえからな!


・・・・・・多分。








 * * * 
30突入のいい大人が子供に泣きつく図なんて、と思って半分にゃんぐ設定で書いてやろうかと思った一品(笑)
・・・・・・一応擬似親子感情だと言い張ってみる。大佐は娘に対する感情(笑)をエドに抱いてるがエドは大佐に母性抱き始めてるといとんでもないオチでした(うわー)副題はエドだってモテるんだぞ!という主張(笑























平和だからといって必ずしも平穏だとは限らない。(※タイトル)





ざざ、とノイズ交じりのアナウンス放送から聞こえるのは、東部解放連盟だのというご大層な名前のテロ組織名。
野太い男が、大まかに言えば列車の全車両を取り押さえたから大人しくしていろという旨を告げていた。
恐怖する親につられて泣き叫ぶ子供に、それを必死に泣き止ませようとする親。
どうにか開口の手立てはないかとおろおろするばかりの男性。
何が起こったか、未だに自身の身で実感できていないらしい女性。
様々な人間の起こす雑音や悲鳴、テロリスト犯達の怒号ひしめくとある車内の少し奥。
ここだけはまるで別の空間ではないかというくらいに落ち着き払った二人の声があった。
“彼等”は同時に溜息をつくと、

「今年通算何回目?」
「8回目」

という、一見意味不明な会話をしていた。
その落ち着き払った様子が奇異に見える一端でもあったが、何より“彼等”の出で立ちから、妙だった。
赤いロングコートに黒の服、意思の強そうな金眼と同じ色の金髪を三つ編みにした、『ちょっと』小柄な少年と、その少年の軽く倍ほどある鈍い色を放つ鎧の“少年”。
「そもそもだな、東部は治安がいいだの何だの言ってる割に端々まで体制が行き届いてないのがいけないんだ。
あの野郎、自分の目が届く場所は抜かりねえくせして手抜きばっかりしやがって・・・・」
ぶちぶちと少年が文句を言うと、彼よりも少し高めの声が
「大佐だってきっと尽力尽くしてるんだよ。
それにほら、この団体さんの名前、最近の新聞では見たことないし、きっと出来たばっかりなんだよ」
と返す。
どの道、人々が混乱の中にいる最中の会話としてはそぐわないものには変わりない。
「それよりも兄さんの日ごろの行いが悪いせいじゃない?」
「はァ?」
兄さん、と呼ばれた少年が不可解だとばかりに眉根を寄せて首を傾げた。
「トラブル体質なのは元々だったけど、最近更に磨きがかかったっていうかさぁ。・・・・たまには大人しくしてたら?」
「なっ・・・・・んだよそれ!んなこと言うなら俺と一緒に行動してるお前がトラブル体質だって可能性もあるだろ!」
「まっさか。ぼくは兄さんみたいに喧嘩っ早くないもん」
「〜ッ!お前何か最近嫌味っぽいぞ!」
「まあ、計画性がない兄さんの相手してたらこうならざるを得ないというか・・・」
「おい、お前ら!いつまで呑気に喋ってやがる!」
突然の横入りの声に、二人は同時に会話を止めてそちらを見る。
予想通り、手にはライフル携えた、街の裏路地辺りに溜まっているならず者のような顔立ちの男に二人ははぁ、と同時に溜息をつく。
その様子に、怒り半分、たじろぎ半分の男が金髪の少年の方へ銃口を向ける。

その様子を見ていた乗客たちは一気に息を飲み、中には「そんな子供にまで手を出すな!」と果敢にも男達へ叫ぶ人間もいる。
しかし、当の銃口を向けられている少年は男を指差しながら呆れた目で鎧を見ると「ほら」と言う。
「日ごろの行いとかはさておいて、すぐ目ぇつけられんのはお前が原因なんじゃねえの?」
「うーん、それは否定できないかも」
「おい、こら!勝手に喋んじゃねえっつってんだろ!」
「大体、もうボキャブラリーもそろそろ尽きたっつーか、何か別のこと言えって話だよな」
「仕方ないんじゃない?大体どの列車テロも目的一緒なんだからさ」
「ッてめぇ!」
自分の存在を無視して淡々話続ける二人に業を煮やした男が銃の引き金に手をかける。

撃たれる、と何人かの乗客は次の瞬間に起こるだろう惨事を想像して咄嗟に目を伏せた、が。

ご、と鈍い音がした。

明らかに銃声ではない。
恐る恐る目を開いた乗客たちの目に飛び込んできたのは、目を閉じなかった乗客たちの呆然とした表情と、列車の床に倒れ伏した犯人たちと
――未だ言い合いを続ける鎧と少年の姿だった。
「あー、何かすっげぇ腹立ってきた。それもこれも司令官のくせに治安維持の一つや二つ出来てないあの野郎の所為だ!
どうせこれだって片付いたら駅んとこで待ち構えてんだぜ!あーもうヤダヤダ!」
「一つや二つって・・・・それが難しいんじゃないか。
どの道こうやって関わっちゃったんだから司令部出頭は免れないんだからね。いい加減腹括りなよ」
「・・・いいよな、お前は他人事でさ」
「他人事じゃないよ。今からどうせどっかの誰かさんの片棒担がされるんだからさ」
「んなに言うんならお前はここにいてもいいんだぞ」
「だーめ。それで事態がこれ以上大きくなっても困るし、誰かさんが大怪我したら嫌だし」
「アル・・・・・」

ある意味では二人の世界、というやつなのだろう。
蚊帳の外にされた人々にはたまったものではないが。
「き、君達・・・」
「え?・・・あ、すいません」
ぺこ、と鎧が声を掛けてきた乗客の一人に小さく会釈をする。
顔は見えないが、その声音からして少年だろうということは何となく分かっていた。

実際に声を掛けてみると、とても人懐こそうな、非常に好感を持てるリアクションが返って来たので、その乗客は無意識に強張っていた頬を緩めた。次の鎧の少年が言葉を発する瞬間まで。
「悪いんですけど、今から前の方行ってちょっと暴れて来ますんであと30分くらいこのまま席の方でじっとしててくださいね。もしかしたら振動とかあるかもしれませんけど全然お気になさらず」

そのとても人懐こそうな声のまま。
・・・・恐らく表情にしてみれば満面の笑みを浮かべていそうな声音で、そんなことを言われてしまえば、無理もないのかもしれない。
気にするな、と言われて気にせずにいられる人間がいるだろうか、いや、いない(反語)。

しかし銃を向ける人間をものともしない人間にそんなことを言い返せる勇気のある者は残念ながら、その場にいなかった。
「そういやネームバリューとか試したことないけどちょっとやってみっか?」
「『あのエルリック兄弟です』とか名乗るの?やだなぁ、それ何かぼくまで暴れん坊みたい・・・」
「んだとぉ!?」

そんな会話をしながらすたすたと前の車両を開けていく二人に声を掛けられる者など、いる筈もなく。
前、そして更にその前と順々に銃声が鳴り響いては(時々天井側からも聞こえていたが)消えが繰り返され。

程なく、普段通りの運行で列車は無事、駅へとついたのだった。















ぱーん。

一瞬、何事かと思う音。
列車テロを差し押さえた後なので余計に身構えてしまったが、次の瞬間、髪に落ちてきた髪テープやら紙吹雪やらでそれがクラッカーだということき気付き、エドワードは怪訝そうな(+嫌そうな)顔で、中身がなくなったクラッカーを片手に、にこにこしながら肩に外套を掛けた噂の司令官を見上げた。
「・・・・やっぱいた」
呻くエドワードを尻目に、何のことか分からないとばかりの表情のまま、おめでとうと司令官・・・・ロイは言った。
「あ、大佐」
遅れて出てきたアルフォンスが見知った顔を見付けてかしゃりと首を傾げた。
「やあ、アルフォンス。この度は事件解決の為の早急な対応、感謝するよ」
「俺には言わねぇのかよ!」
「おや、言って欲しかったのかい、鋼の。案外可愛いところもあるん」
「イーエ全然全クコレッポッチモ思ッテマセンヨクソ大佐様?」
引き攣りまくった、お世辞にも笑顔とは言いにくい絶妙な顔で言い放つエドワードに軽く肩を竦めて見せたロイにアルフォンスがようやく至極まともな質問をぶつける。
「大佐、それ何ですか?」
「ああ、これか」
少し奥の方で呆れた視線を寄越しているホークアイの姿を見ていれば何となくろくでもないことだろうとは思うのだが。
「君たち、今年検挙してくれた列車テロの数は覚えているかね?」
「したくて検挙したんじゃねぇよ!8回目だろ!?」
「そう、8回目」
勿体ぶったようなロイの言い回しに、腕組みをして片足で小さく地団駄を踏んでいるエドワードは「早く言え」と言わんばかりの目でロイを睨む。
「何とだ!列車テロ事件の検挙数だけ挙げてみれば、未然に防いだことに対する褒章・・・まあ、これは君達は興味ないだろうね。問題はその回数だ。何と今回で30回突破だ、おめでとう」
「う・れ・し・く・ね・ぇ」
大袈裟な身振り手振りで言われて余計に腹が立ったらしいエドワードが噛み付くように言い切ると人の悪い笑みを浮かべたロイが空のクラッカーを振りながら
「そんな訳でささやかながらも祝ってやろうとこうしてわざわざクラッカーなんぞを用意してだな」
「そんな要らんモン用意するくらいならもうちょっと有意義なものを用意しやがれこの給料泥棒!」

と、そんな会話をしている中。
アルフォンスは、乗客の保護と事情聴取を行っていたホークアイに近付いて、
「真相は?」
と訊ねる。
すると、すっかり呆れきった溜息と苦笑付きで、ホークアイは返してくれた。
「仕返し、ですって」
「はぁ・・・・・?」
「前回、嫌がらせ合戦してたでしょ?エドワード君が逃げ切ったの、悔しかったらしいのよ」
「・・・・・・・・大佐って」
アルフォンスは少し言いよどみ、やがて溜息混じりの声で言った。
「案外というか、そういうとこめちゃめちゃ子供ですよね」
「そう、子供なのよ・・・・・」

そうして未だ言い合いを続ける二人に目を向けると同時に溜息をついた保護者二人。

とりあえず、東部は(治安の絶対的平穏はともかく)今日も平和です。






 * * * 
実はまだ続いていたという(SS倉庫ロイエド4番目参照)驚愕のオチ。嫌がらせ合戦ファイナル手前くらい。
書きたいことありすぎて詰め込みすぎた・・・・。









照れてるか素かで大きく意味が異なります。




「大佐大佐大佐ー、ちょっと聞いてー」

「・・・・なんだね、見ての通り今忙しいから出来れば後にしてもらいたいんだが」

「大丈夫、多分一分くらいで済むから大佐は座ったまま何のリアクションもしなくていい。聞くだけでいいし突っ込みも要らねぇ。聞いた後聞かなかったことにするのも可」

「・・・・ふむ(ペンを置いて)君がそこまで言うからには何か重要なことか?云ってみたまえ」

「うん(すうっと息を吸い込んでゆっくりと)俺は、やれば出来るのに本気か冗談か知らねえけど極力仕事を手ぇ抜くように努力とかするし女の人に声掛けられたら脊椎反射の勢いで胡散臭ェ笑い浮かべるし雨の日無能とか云われて部下にまでさんざ馬鹿にされる、20代に足の小指だけで辛うじて引っ掛かってるようなマスタング大佐のことが気になってしょうがないです。ぶっちゃけ何でこんな存在自体が嘘くせぇ奴にこんなこと言わなきゃなんねえんだとか思ってたりもするけどそこはまあアル曰くセンス無ぇ俺の眼が問題あるってことにしといてだな」

「・・・・・・・・・貶したいのか好意を伝えたいのかはっきりしたまえよ」

「うん、まあそんな大佐だけどなんか大好きみたいです?」

「ああ、どうも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと待て今何て」

「うん、だから人間的にどうしようもなさそうで野心塗れの正直絶対アルには見せたくないくらいに最悪の性悪根性してるあんたのことどうやら俺はかなり本気のレベルで好きっぽいですってさ」

「いやそのやたら他人事のような口調やら8割以上貶されてるような告白の内容やらが激しく気になるんだがそれはまあこの際置いておいて、だな(こほんと心なしか赤くなって咳払いして)君の言う好きっぽい、とは?」

「・・・分かんねぇけど。家族愛とかじゃないのは確かだな。自分でもどれに当てはまるか分かんねえし。まあとりあえず好きっぽいってだけ言いたかったんだ」

「いや、だからいい加減好きの後にぽいとつけるな。好きで終わっておけ頼むから」

「んじゃ好きだと思います」

「一緒だ」

「我侭だな、俺が好きっぽいつったらぽいんだよ断定しきれるほどはっきりしてねえし」

「じゃあはっきりさせて云いに来たまえよ!」

「いやそこはまあ大佐の無駄にポジティブな晴天脳味噌でどうにかフォローしろよ」

「・・・・・告白にかこつけて馬鹿にしているだけなんじゃないかと私は今心の底から疑っているのだが」

「あっ!酷ぇ!俺が一世一代の告白をこんな三十路手前の以下略な大佐にしてる時点で青天の霹靂だぞ!?俺の気持ち疑うってのかよ!」

「疑うも何も君のその躊躇ない貶し文句を聞いていたら好きと云われたことに嬉しさを感じる前に盛大に泣きたくなるんだが」

「じゃあ泣け」

「はいそうですかと簡単に泣けるか馬鹿者」

「んじゃ泣きたくなるなんて云うな」

「・・・・・・・・・・・・・ハイハイそれは申し訳ございませんでしたね(棒読み)」

「ともかくだ、そんだけだから。さっき云った通り突っ込み不要。じゃ、そういうことで」

「あ、おい鋼の」


ばたんっ


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何なんだ一体・・・・」

「照れてるのでああいう言い回しになってしまったんじゃないですか?エドワード君、照れ屋ですから」

「ああ、そうかもしれんな」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「ところで中尉、君にもいくつか質問したいんだがね」

「なんでしょう」

「いつからここにいたとかむしろ何処から聞いていたとかそういう質問はしないでおこう」

「賢明ですね」

「・・・・・とりあえず、その手に持っているダンボール箱は何だね?」

「追加書類です」

「・・・・・・・・私の記憶が正しければ、そんなありえない書類の山は一時間前には陰すら無かったと思うのだが」

「書類が子供を生んだんじゃないですか?」

「・・・・・君の口から冗談を聞けるとは思いもしなかったんだが、全く嬉しくないよ、ホークアイ中尉」

「私も嬉しくありません。いいから早く目を通して頂けますか?追いかけるんでしょう、彼」

「何故私が」

「あら、では本意も追求しないままエドワード君をまんまと逃走させるおつもりですか?らしくもない」

「(ぴくっ)・・・ま、あ。そうなのだが」

「それに、はっきりとさせておいた方が大佐ご自身の心境もはっきりと優れると思います」

「(溜息)分かった、追いかける、書類も片付ける。これ以上の追加は?」

「ありません。万が一、翌日に雪崩れ込む痴話喧嘩対策にと多目に入れてはいますが」

「ちゃっかりしてるな君は」

「恐れ入ります」

「(再度溜息)では、君のご期待に沿えるように頑張らせてもらうよ」

「お願いします」




つまりは大佐は二人の金髪美人にはこれから先も頭上がんないんだろうなーと(笑)











巷によくあるバカップル的ろいえどを書いてみようという試み。

テーマ:出来る限り最大限に乙女江戸。
(注釈:大佐から告白の両思い、アル公認)









大佐定時間近の執務室にて。
「ね、ねえ、大佐・・・・」
「ん?(書類に目を通しながら)」
「あの、えとさ、なんていうか、その・・・・」
「・・・・鋼の?(態度の変化に疑問に思い手を止める)」
「うん、あのね、えっと・・・・・」
「・・・・・・・」
「抱いて」

ごっす(←机に思い切り頭ぶつけた)

「うわ、大丈夫大佐どうしたんだよ!」
「はははははははは鋼の?」
「何笑ってんだよ、真剣に言ってんのにさ」
笑ってるんじゃなくてだな!・・・(溜息)君は少し自分の発言に責任を持ちたまえよ」
「責任って何だよ(むっとしながら)まるで俺が無責任な発言してるみてえなんだけど」
「してるよ」
「してない!」
「してる。・・・・まったく、そんな言い方では誰でも誤解するだろう」
「誤解って?」
「そういうときは、抱きしめてくれと言うべきだと私は言ってるんだよ」
「どうして?」
「どうして、って・・・」
「だから俺“そういう”意味で言ったのに。そりゃ俺なんかの体じゃ大佐も満足できないかもしれないけど俺頑張るから、だから大佐、俺のことセクシャルな意味で」
わー!!!!」(エドの口押さえ)
「むぐ。」
「・・・そういうことを安易に言うんじゃない。」
「(大佐の手を退けて)やっぱ、嫌だったのか?」
「・・・・嫌なら最初から君に好きだなんて言わないよ。それだけはない。でも、君の要望も叶えかねる」
「やっぱ、男で子供だから?(しゅんとなる)」
「(なだめるように撫でつつ)そうじゃな・・・いや、ある意味そうだな。君はまだ子供だし、同性同士のそういうものをよく分かっていないように思えるんだよ」
「そんなことない!」
「だったら、だからこそだな。私は君に無理強いさせたくない」
「無理なんてしてない!」
「今はそうでも、いざ直前になるとほぼ間違いなくそうさせる可能性が高い。要らぬ傷も君につけたくないし。だから、駄目だよ」
「〜〜〜」
「(苦笑して額にキスして)君にはまだ早いんだよ、精神的にではなく、身体的にね。重ねて言うが君が嫌なんてことは間違ってもありえないよ」
「・・・・・本当?」
「これについて君に嘘は言わない」
「これについては、ね(苦笑)いいよ、じゃあその言葉信じとく」
「ありがとう。・・・・それにしても、どうしてそんなに急いだように言い出したんだい?今までそんな兆候少しもなかったじゃないか」
「ん・・・・・。俺、大佐に何にも返せねぇし、俺のせいっていうか、で、女の人との付き合いも全部やめたって、聞いたから。女の人の代わりになれないかなって思って。一番マシに出来そうなのが」
「これくらいしか思いつかなかった?」
「・・・・うん」
「(少し考えて)気持ちは嬉しいけどね、鋼の。私はそんな風に、合意はあっても半ば無理やりのような体の関係は好まないよ。それに。君が傍にいてくれるだけで私は嬉しいんだよ」
「!大佐・・・・・」
「鋼の・・・」
「(おずおずとロイに抱きついて)ありがと。大佐のそーゆーとこ、大好き」
「私は君のどんなところも愛しているよ」
「恥ずかしーヤツ・・・」





これ書いた当時の私の感想が凄まじかった(笑)と、鳥肌が・・・・!!


















何設定なんだろうこれ・・・・


巷でよくあるろいえど両思い設定を冷静に語ってみよう〜本人編〜


「ていうかさ、おかしくねぇ?」
「・・・・主語をつけなさい主語を」
「だってさあ」




 * * * * * * * * * * *


俯いたエドワードの髪が、彼の表情を隠すカーテンのように彼の顔を隠してしまった。
そのため表情は見えない。
それなのに、ロイには何故かそれが泣いているように見えた。
「だって・・・」

か細く震える声が、続ける。
「俺、男だし、14も年離れてるし、機械鎧だし・・・・こんなじゃ、大佐となんて釣り合わないよ・・・」
「鋼の・・・」


 * * * * * * * * * * *




「ってさ。別に否定はしないけどおかしくねぇ?」
「・・・・何処がだね。何か、私がその手の趣味の人間とでも」
「そんな変態だったら最初から大佐には近づかない。
じゃなくてさ、何でここで俺がテメェに合わせられなくて悩まなきゃなんねえわけ。逆ならともかく
コラコラコラコラ。その言い方じゃあ私に非があるようじゃないか」
「そう言ってんだけど」
「・・・・・・・・(さめざめ)」
「だってさぁ、よくも考えてみろよ?
俺は最年少国家錬金術師として、高給取りの天才だと世間に認められてるだろ」
「研究費として出されているから給料という表現も変・・・いや、まあそういうことにはなるか」
「で、自分で言っちゃなんだけど顔はそこそこいいだろ?」
「黙ってればな」
「うるせぇよ。で、結構一途な方だからどっかの誰かと違って浮気なんて絶対しないし」
「・・・・・・随分と含みがあるように聞こえるのは気のせいか?」
「おんやぁ〜?含みがあるように聞こえるってことは心当たりでもおありになるんですかねぇ?大佐殿は」
「そ、そんなものないに決まっているだろう!」
「じゃあ問題ねぇだろ〜?(にやにや)」
「ぐっ・・・・」
「それに引き換え大佐は・・・」
「な、何だね」
「出世街道まっしぐらとは言われても、ここ4年ほどは出世の兆しはなし、仕事しなさ過ぎて部下には泣かれるわ女の人とはとっかえひっかえデートするわ30の大台に乗ったから後は老いるだけの身・・・・」
老いるだけとか言うな!(泣)まだまだこれからの男盛りだ!」
「ワースゴイデスネタイサー(棒読み)」
「・・・・・・・・・・・(さめざめ)」
「ま、でも。佐官から将軍になるのって並大抵じゃ難しいって言うし、仕事はサボるけど一応期限内には済ませてるらしいし、女の人をとっかえひっかえって言っても深い付き合いはしないらしいし、体力とか知識が衰えてる訳でもないし・・・・・お互い、気にしなきゃいけねぇ要素なんてないよな。俺も大佐もさ」
「鋼の・・・・」
「大佐・・・・・」
「言っていることは大変素晴らしいが、それまでに私を突き落とそうとしたのはわざとだな?
あ、バレた?
「・・・・後で覚悟しておきなさい・・・・!」