今回、会話だけの小ネタ多め。
*今回、エド女体化(エリィ設定)多目なので苦手な人はバックプリーズ。



何の脈絡もなく告白してみた。




「好きだよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「いや、辺りを見回さなくても君しかいないだろう、鋼の」

「・・・・・今の、もしかして俺に言ったの?」

「他にこの部屋に誰かいるというのなら話は別だが」

「・・・・・・・・・・・」

「いや、だから探してもいないから。そこまで嫌かね?(溜息)」

「嫌とかそれ以前に、女好きで有名なタラシが何をトチ狂ってんデスカ、マスタング大佐」

「そうなんだよ・・・・なんで好きになったんだろうね、こんな豆」

「誰が恋愛するにも小さすぎな豆つぶか!」

「まあ、いい。で、嫌をそれ以前の問題にしなくていいよ。不本意ながら君が好きだからね私は。
 ・・・ああほら、現実逃避にきょろきょろしない。往生際が悪いぞ鋼の」

「悪くもなりたくなるわ!脳味噌沸くにも程があるだろ阿呆大佐!!」

「脳波はいたって正常だよ。悲しいことにね」

「野郎に好きって言われた俺の方が悲しいわ!」

「いいじゃないか。むさい野郎にならともかく、この美男に好かれたのだから」

「うっわ、何このヒト。やだねーこれだから自意識過剰な大人って。周りの女のヒトからどんだけよいしょされてるわけ?」

「実力が伴った発言しか、私はしないよ」

「へーへー。大層おモテになるマスタング大佐」

「おや、早速やきもちかい?」

「誰がやくかー!!!」






こんなロイエド書きたい。









最終的に精神ロイ←エドだとしたら。



君以外、愛さないとか

永遠の愛を誓うとか

そんなあいまいで、次の瞬間には消えてしまいそうなくらい脆い言葉はいらない。

浮気の言い訳よりも詭弁で見苦しいから


それよりも

今、言葉をくれたらいいよ

今、この瞬間に俺のことをどう思ってるかだけを言ってくれたらいいよ


それだけで俺は一時の幸せを感じることができるから


そんな遠い未来にまで保険をかけるようなこと、言わなくていい

将来、未完成な俺じゃなくて相応しいヒトを見つけられたらそのヒトと一緒になればいい

そんときに、俺は笑ってあんたの幸せを願うから

あんたがくれた言葉思い出して、幸せそっと思うから



あんたは、好きなように生きてくれよな?





独白。









女体化エリィ設定。



ここにいるのは3日間。顔を合わせる時間はその半分以下。








「愛してるよ」

「398回目」

「・・・・・数えてたのかい?」

「何回云うかなーと思って」

「嬉しいよ、それほど私の愛をいちいち受け止めていてくれたんだね」

「ていうか、云えばいいってもんじゃないデショ。って思うよここまできたら」

「いや、云っても云い足りないくらいに云いたいよ」

「あーハイハイありがとうございますー」

「愛してるよ」

「399回目」

「・・・・君は云ってくれないのか?」

「好きだよ大佐ー。うんもうすっごい好きめっちゃ好きアルの次に好きー」

「やっつけ仕事っぽく云わないでくれるかな?些か傷つくんだが」

「心臓に剛毛生えたような厚顔無恥が何ほざいてんですかマスタング大佐ー」

「・・・・・愛が痛いよエリィ」

「軍【ここ】にいるときその呼び方するな」

「分かってるよ。・・・・・エリィ」

「分かってないじゃん。な、・・・・ッ!?」

「愛してるよ。誰よりね」

「〜〜〜・・・・・・400回突破」

「記念品はないのかな?」

「この程度で記念品なんてぬるいぬるい。・・・でも、ま」

「!」

「・・・・・これくらいは、あげるよ」

「これはこれは・・・勿体無い記念品だな。もう少し味わいたかった」

「ちょっ・・・・!?何寄ってきてんの大佐ッ!もう駄目無理近づくな!」

「そんなに怖がらなくてもいいだろう?何も今から喰べようというんではないんだから」

「あんたが言ったらシャレに聞こえない!!」

「はっはっは、当たり前だろう、シャレじゃないから」

「余計近付くなタラシー!!!!!」






*******
純愛だけど精神的には繋がってます。ほっぺちゅーをセリフだけで表現なんてできません。
ストイックな二人の会話が好き。

脳内設定
性別判明:エリィ12歳
大佐自覚:エリィ13歳
大佐告白:エリィ13(,5)歳
エリィ自覚:同じく13(,5)歳
両思い:14歳(キスとかこの辺なんだろうなー)
手を出すなら18歳終わりかけの頃と思われ。

この設定は、思い切り原作を無視しているの分かりきっているのですごく色々無視。
大佐は想いを告げたと同時に女性との関係を全て絶ち、エリィをすごい猫可愛がり。
知らない人が見たら親戚の子を溺愛している叔父と子供に見える(笑)
エリィにも自分にも目指すべきものがあるからと、両思いが発覚しても啄ばむようなキスしかしたことがない。むしろエド(エリィ)がやきもきするほどにお姫様扱い。
と、こんなところ。










続いてエリィ小ネタ。





「大嫌いになるのと、好きになるのとどっちがいい?」

「・・・・どういう究極の選択だねそれは」

「いいから答えろ」

「・・・・・大嫌い、かな」

「その心は?」

「君の言う好きが、せいぜいハボックたち辺りに使用されるレベルの好きだと判断したから。
 それなら大嫌いだって言われて徹底的に意識された方が嬉しいかな、私は」

「・・・っとに、そーゆーとこは潔いよね、あんた」

「モットーだからな」

「うん。だからそういうとこ大好き」

「・・・・・・・・・・・・え?」

「じゃ、それだけだから。俺アル待たせてるからもう行くよ。また来月の今頃来るな。大佐」

「いや、ちょっと待ッ、その前に今何か・・・・!」


ぱたん。

「・・・・生殺しで一ヶ月、待てというのか・・・・」










情けない大人。エリィ設定。











続々エリィ設定。





「たとえばね、君の個人情報が書類不備でなければこういう風に君と過ごすこともなかったのかと、最近思うのだよ」

「・・・・ふーん。書類不備だったんだ」

「当たり前だろう?仮にも国家錬金術師のスカウトに行くのに『エドワード・エルリック11歳』と書かれていれば子供が出来る錬金術なんて高が知れていると思うのは普通だと思うぞ」

「ま、そうだろうねえ?俺くらい才能溢れてる人間、そうそういないし!」

「はいはい。話を戻すよ。それでね、察してくれたと思うが、書類不備はそこらじゅうにぽこぽこあってね」

「ま、試験の日まであんたが気づかなかったくらいだからね、『この』こと」

「・・・・・・そう簡単に谷間を見せるんじゃない」

「・・・揶揄かそれ?喧嘩してえか・・・そうかそうか、表出るか大佐」

「何年謝り倒したら君の機嫌は直ってくれるのかな・・・。いきなり出鼻を挫かれたのは久々だったからつい言ってしまっただけじゃないか」

「へー。ついで身長はおろか胸の大きさまで揶揄しちゃうくらい動揺してたんだー?フェミニスト様が。それともよほど俺のことガキだからとか思ってたわけ?」

「・・・・・・・だから済まないと何度も」

「あんたの謝罪は嘘くさい」

「酷いな・・・こんなに誠心誠意こめて何年も・・・2年か?謝り続けている私の姿勢を少しは察してくれないか?」

「謝り続けるついでに人のこと口説き落としたの誰だよ」

「私だね」

「即答すんな腹立つ」

「でも落ちたのは君だろう?」

「・・・・・・・」

「ああ、急に振り向くんじゃない。落ちるぞ。その物騒な右腕もしまいなさい」

「あんた、本当腹立つ」

「それはどうも」

「褒めてねえし」

「良かれ悪かれ、君に最大限に意識されていることが嬉しくてね」

「それでいーのかよ国軍大佐」

「大佐としては駄目だろうが、恋人としては最高だろう?」

「云ってろ馬鹿。あんたのは最高じゃなくて最凶なんだよ。」

「・・・ああ、今日も最高に可愛らしいのに口は最強に悪いよエドワード」

「今さらだろ。てか、嫌なら離せ」

「君こそ少しは抵抗したまえよ。“嫌なら”」

「・・・・・そういう言い方するのって卑怯じゃねえ?」

「おや?どうしてだい?私はただ“嫌なら”と云っただけだろう?君が好きなようにしたらいいよ、いつものように」

「〜〜〜そうやって無言で俺らの行動揶揄するのやめろよな!仕方ねえだろ!俺が軍の狗やってる理由はそれだけの為なんだからさ!」

「だから止めていないだろう。でもね、もう少し行動を自重することも出来るんじゃないのか?君らの旅の目的が生半なことでは達成できないことも分かっている。だが、君の場合、要らぬトラブルに自ら突っ込んでいく傾向にあるからね。傍にいるアルフォンスの気苦労が目に浮かぶよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「エリィ?」

「!!」

「っと、危ないじゃないか。動揺するにももう少し」

「そっちの名で呼ぶな。“俺は”エドワード・エルリック。それ以外の何者でもない」

「分かっているよ。だから云ったじゃないか。告白したとき」

「覚えてねえなー、なんのことかな〜?(明後日の方向向きつつ)」

「・・・・・なんなら復唱しようか?『私が告白するのはエドワードエルリックという子供だが』」

「わーわーわーわー!――もがッ!」

「『数年後、必ず戻ってくるエリィエルリックにも、告白するから。そのときは、容赦しないよ』?」

「〜〜・・・・・・あんた質悪すぎ!!」

「君がごまかそうとするのが悪い」

「だっ・・・て・・・・・」

「(苦笑)ああ、そうそう。また話を戻すけれどね」

「ん?」

「恋をすると人間というのは綺麗になるからね、気をつけなさい」

「・・・・もしかしてすごい自信過剰なこと云われてる?俺」

「よく分かっているじゃないか。近々下着のサイズを変えた方がいいよ。そろそろ体のラインも目立ってきてい」

「セクハラ発言すんじゃねえこの馬鹿大佐あぁぁぁ!!!!」







実は始終膝抱っこでの会話(笑)
云うまでもなくエリィ設定でした。









大佐、我慢の限界。






「今の関係を持続することに飽きた。――いや、もう嫌になった、と言えばいいか」

「へ?・・・・何、言ってんの、大佐・・」

「そのままだ。君と、上司と部下の関係を続けるのは、もう嫌なんだ」

「ッ!・・・・・な、いきなりんなこと言っても」

「でも、私はもう限界なのだよ。徹底的に離れるか、手に入れるかしたいんだ、君を」

「はあ!?」

「・・・・・今、私が嫌だと言ったとき、何だと思っていたんだね」

「なんっ・・・て、は!?だって、おれ、が」

「はいはい、一回深呼吸して、落ち着きなさい。はい吸ってー、吐いてー」

「(不服そうに従いながら)じゃねえよ!・・・おれ、てっきりもう大佐が俺のこと見るのも嫌なくらい嫌いになったから、んなこと言ったのかと」

「そんな相手に、冗談でキスするほど私も物好きでないよ」

「キッ・・・(真っ赤な顔で)あんなのキスのうちにも入らねえよ!」

「たとえ指先に一瞬だけでも意識的に唇を合わせればそれはキスになるんだよ、鋼の」

「〜〜〜っ」

「そういうウブなところも可愛くていいと思うが」

「可愛くねえ!」

「・・・・このまま、中途半端になるのが、嫌なんだよ」

「俺にどうして欲しいんだよ!だったら!!」

「言ったろう?もう、上司と部下以上か、以下か。どちらかになりたい」

「・・・卑怯だ、あんた」

「君が、この関係を好いているのは知っている。だから今まで崩さなかったんだ」

「じゃあ崩すなよ、これからも」

「却下。・・・何度も言わせるな。限界なんだ、私は」

「子供の癇癪じゃあるまいし、それくらい我慢しろよ大人だろ!」

「そう言うのなら君こそ、我慢したまえ。“大人”、なのだろう?」

「・・・・未成年に対する大人の義務はねえのかよ」

「生憎、君は軍属で、立派な社会人として認められているし、義務が発生するのは親子間だけでだよ。」

「・・・・・・・・」

「(溜息)そんな顔、させたいわけじゃないんだがね」

「あんたが、させてるんだろっ」

「じゃあ、ふたつだけ、聞かせてくれないか?」

「?」

「まず先に、他意もないから正直に答えてくれ。君はこれ以上と、これ以下。どちらの関係がいい?」

「だから」

「どちらかだ。これだけは妥協するつもりはない」

「・・・・・意地張りが」

「なんとでも」

「・・・・・・・・・・・・以上」

「それが、答えか?」

「そうだよ!言っておくけど他意なしでな!早く次言え」

「じゃあ、それ以上として、それは“恋人”としての関係か、“親子”としての関係か。どちらがいい?ちなみに、親子を選ぶと必然的にアルフォンスも仲間入りだよ」

「アルまで巻き込むな!!」

「君一人だけ引き取ったって確実に納得しなさそうだから妥協したんだが?」

「っ・・・・・・・・・・・・・・へーへー分かったよ!」

「で、答えは?」

「・・・・正直、コイビトとか言われても、実感ない。俺、大佐のこと・・・・・不本意ながら割と気に入ってるけど」

「不本意ながら、ねえ?」

「あんたの言動怪しいから仕方ねえだろ。・・・まあ、平たく言うと、俺はそういう眼であんたのこと見たことないし、見たいとも思ってない。」

「じゃあ?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「家族、としてで、構わないね?」

「・・・・・・・それしか、ねえならな」

「嬉しいよ、鋼の。・・・いや、エドワード」

「なっ・・・!?何だよいきなり!ていうか、あんた俺の名前忘れてたんじゃ・・・!」

「失敬な。いくらなんでも後見人が対象者の名を忘れるわけないだろう。部下だから、そう呼んでいたまでだ」

「〜〜〜」

「そういうわけで、順序が逆になったが、旅が終わったら一緒に暮らそう?アルフォンスも一緒に」

「なんであんたはそう勝手に俺らのことを・・・・・!」

「まあまあ、・・・・・私はね、君と、君の弟と、三人で暮らしたい、だから・・・分かるね?」

「!」

「死ぬことは許さない。アルフォンスも、君も。いいな?弟も、自分の命も守り、無事に悲願を果たせ。
ついでに擬似とはいえ、親子になったのだから、私の言うことを聞いて、ちゃんと休養もしなさい」

「・・・・・・・そんなん、分かってるよ馬鹿大佐!!」


ハメられた、と気付いたときにはすでに手遅れ。





久々に親子ロイエド目指したけど撃沈?(笑)保護者な大佐が見たいんです。











崩壊系自傷焔←鋼。色々痛い。ネガティブエドと自傷気味大佐。







大好き、だから大嫌い






「ねえ、俺はどうしたらあんたに好かれるのかな」

「なんだね、唐突に」

子供の突然の言葉に大人は心底不思議そうに首を傾げて見せた。

「私は、君のことを好いているが、何が不満なんだ」

「違うんだよ」

「違う?」

その様子がおかしいことに、大人はようやく気付いた。

「違うの、なんていうか根本的に違うの俺が欲しいのはそういうのじゃなくてもっと狂ったっていうの?うん狂気じみた感情って言った方が早いなそんなのが欲しいんだよあんたの」

「・・・・ちょっと待て、鋼の、訳が」

「なああんたはどうやったらそこまで俺のこと好きになってくれる?何を差し出したら好きになってくれる?命以下のものしか今の俺には差し出すものないけどその全てをあんたに渡しても好きになってもらえない?あんたに好かれる為に必要な代価って何?あんたへの忠誠心?あんたに捧げる時間?人間としての尊厳?プライド?」

「待ちたまえ!君はさっきから何を・・・・」

「悪いけどアルは駄目だよ俺の命以上だから。他のもので等価に出来ないのかな?ていうかなんであんたの周りの人らはあんたに好きでいてもらえてるの?あの人らはあんたに何の代価を払ったのそれとも俺とあんたは錬金術師だから等価交換が必要なのは俺だけになの?」

「・・・・・少し落ち着きたまえ。君は疲れているんだ」

「疲れてる?落ち着いてない?そう見える?でも大丈夫だよ俺これでもすごい落ち着いてるんだ本当だ心配しなくても足踏み外して階段から落っこちたり間違って本棚にぶつかって本の下敷きになったりしないよ」

「今日はどうしたんだね、本当に」

「どうかしてんのはあんただろそれよりもさあ教えてよ俺には何が足りないの?何を払えばいい何をなくせばいい」

「・・・・・・・・・・・・・」

一息吸い込んで、子供は綺麗な笑顔を作る。

あまりにもそれが綺麗過ぎて、大人は暫く声を出すことを忘れてしまうくらいには、動揺してしまった。

「ねえ、じゃあ命なくしたらあんたに執着してもらえるかなヒューズ中佐みたいに」

どくり、と心臓がざわめく。触れられたくない場所を触れられた不快感と警鐘を告げ続ける己の感覚の二つに苛まれて大人は思わず椅子を倒して子供の右腕を掴んだ。

それでも子供は黙ろうとしない。

「生きてる奴は死んでる奴には永遠にかなわないもんな。だって死んだらそこから動けなくなるからあんたは二度とあのひとのこと忘れないもんそうなったら俺あんたの一番になんて永遠になれないじゃんだったら俺も死ななきゃいけないじゃんどうしてくれんだよ俺は生きてアルを元に戻してやらなきゃいけないのにこんなこと考えさせてさ。でもいいんだそれだけ俺が勝手にあんたのこと好きになったからだから本当は今日だって見届けて欲しくて来たんだあのときみたいにさ」

そうして無理やり掴まれた腕と生身の腕を引き合わせて鋼の腕を鋭く変える。人を殺せる道具にする。

しかしそれで殺すのは目の前の男でもなければ軍の人間の誰かでもなく間違いない自分なのだ。

「サヨナラ」

うっすら笑って男が掴んでいた腕を引き剥がす。

喉に突きつけられた己の鋭く変化した腕が子供の存外薄い肌を浅く傷付けて―――――――次の瞬間には、壁際まで吹き飛ばされていた。

ぐ、と小さく呻いたあと、断罪の間も与えない無慈悲な男の手によって襟を掴み挙げられ、男と同じ目線になる。

「馬鹿か、お前は」

底冷えするような低い声も侮蔑を孕んだ眦も今の子供には全く気にならなかった。

「すべて投げ捨ててまで私に何を求めようというんだ。今まで這い蹲ってまで生きてきた意味は。弟は。生きるために与えてくれた腕で死のうとしたなんて、幼馴染に報告させるつもりか私に」

ぴくりと痙攣したあと、子供は一切動かなくなった。

そうして大人は興味が失せたとばかりに、唐突に襟を放す。

どすりと鈍い音がして子供の体が床に叩きつけられた。一時的に圧迫されていた気管が空気を欲して咳き込む。

自分のことなのに滑稽だと子供は咳き込みながらも笑った。

そんな子供に大人は大仰に溜息を吐き出すと、今度は子供の目線に自分が合わせるように屈み込んで、一句一句を区切るようにしっかりと伝える。

「いいか、私が、好きになった、エドワード・エルリックは、アンバランスな精神で、弟を一番慈しみ、幼馴染を、周りの大人たちを愛し、誰に屈することもない、誰に依存することもない、崇高に近い存在だ。決して俺の気を引くために死のうとするような愚か者ではない」

そうして右腕を大切に抱え込む子供をそっと抱擁すると、今度こそ切羽詰ったような声で言う。

「間違っても死のうとするんじゃない・・・・!」

「・・・・・ごめん」

そんな顔させたいつもりじゃなかったんだ、なんてのたまう子供に嘘をつけと返して大人は一層抱擁を強める。

「君には散々驚かされてきたつもりだったが今回という今回は今までの比ではないぞ」

「うん。軽蔑した?」

「むしろ侮蔑した。そこまで馬鹿者だとは思いもしなかった」

「うん、ごめん」

「だから嘘くさい謝罪はよせ」

「うん、ごめん」

「・・・・・・・・・・・・」


壊れたスピーカーのように謝罪を繰り返す子供に大人はひっそりと溜息をつく。

あんなにがむしゃらに、休むことを忘れたように走り続けるからこうなるのだと。



時々、こういう風に子供が壊れることは、大人はかなり前から知っていた。

何故だか分からないが、こうして子供が壊れるのは自分の傍にいるときだけなのだ。

それは、唯一残る彼の理性が危険なところまで行ったときでもこの大人が止めてくれると思っての無意識的な保険行為なのだろうか。

理由は分からない。こうなったあとの子供にそのときの記憶が残っていたことは一度としてないのだから。


セーブを利かせているほど彼らの目的が緩やかでないのは分かるが、こうして一気に噴出すのであれば大した差はないのにと大人は思う。

そうして、ごめんごめんと謝り続ける子供の頭をぽんと叩いて上を向くよう促して。

光の消えた琥珀色の瞳をじっと見つめて、そらさないまま言葉を告げる。

「俺は、お前をある意味で一番好きだけど、ある意味では一番大嫌いだ」

そうして今のお前は大嫌いだ

そう告げると、子供は嬉しそうに微笑んで大人の腕に大人しく囲われる。

「ごめん」の代わりに今度は「ありがとう」と言って、意識を混濁させる。


ゆっくりと重くなる体を支えながら、今度こそ大人は疲れきった溜息を吐き出した。

「まったく・・・・壊れたいのは俺の方だというのに」

こんなにあからさまに壊れられては、こちらが必死に直してやらねばならないではないか。

「“君”のことは好きだけれど、“お前”のことは大嫌いだよ、エドワード・エルリック」


そうして、次に目を開けたときはどうか弟を最も慈しみ、自分の一番になりたがる君を殺してくれ―――。









君、は前向きに生きる鋼の錬金術師。お前、は過去に囚われ、同族の大佐に焦がれて求めるエドワード・エルリック。
私、はマスタング大佐。俺、はロイ・マスタング。


原作大佐はエドのことを錬金術師として尊敬してるから二人称が「君」で、アニメは術師としてじゃなくて個人として、対等の目で見ているから「お前」っていう二人称なのだという勝手な憶測。本当に執着しているのはエドじゃなくて大佐の方だと思う。
ヒューさんの件をエドが知って日が浅い頃辺りで落ち込みたい大佐よりエドの方が壊れてて壊れられない大佐。ある意味エドに救われてるけど代わりに救ってる。7/16記