ノーマル(バ)カップルシリーズ。
first 煙草×銃(笑)




子供候補。


「俺が夫で、奥さんがリザ」
「ふーん」
「で、家族設定としてお前らが子供な」
「・・・・・・・は?」
「・・・・あの・・・ハボック少尉・・・?」
「勿論お前含んでだぞアルフォンス」
色ボケた少尉は、どこかの中佐を彷彿と思い出させた。
もっとも、彼は『まだ』愛妻家の域にまで踏み込んではいないのだが。
「はぁ・・・」
気のない返事だったが、それでも構わず家族設定とやらを聞かせ続けるハボックに、こっそりと二人は同時に思った。
(てか、暇なのかな 少尉・・・・)

でも。
「全員金髪繋がりだから問題ないだろ?」

屈託のない表情でそう言われてしまえば、嫌とはとても言えないし、悪い気もしなかった。
「じゃぁ、中尉が俺らの母さんってわけか」
「そーそ!・・・ってなわけで、仲立ち、頼むな」
「「仲立ち?」」
「一応、両思いっていうかだな・・・そんな関係だけどさ」
照れくさそうに彼は言う。
「ヒューズ中佐じゃねーけど、子供揃っての家族だろ?」
「てか、何、少尉。中尉にプロポーズでもすんの?」
「あーいや、うん、それはだなぁ・・・・」
困り果てる大人が非常に楽しくて、エドワードとアルフォンスは顔を見合わせてくすくすと笑った。
「でも残念だな〜。俺、少尉はどっちかっていうと兄ちゃんって感じしてたのに」
「あ、僕も」
「・・・・何だよ。アルは俺だけじゃ不満なのか?」
「ちちち違うよ 雰囲気の話してんじゃないっ」
「やきもちやいてるくらいじゃまだまだだな、大将」
「が〜〜!!もう話そらすなよ!今は少尉と中尉の話だろ!」

「私が何か?」

ぎょっとして、兄弟とハボックは同時に振り返った。いつのまにか、三人だけだった休憩室に、リザが来ていたのだ。
もしかしてさっきの話は丸聞こえだったかと苦笑をこぼす三人とは裏腹に、リザは平常通りの対応だった。その様子を見て、もしかして聞かれていなかったのかな、とエドワードは首を傾げた。残り二人も同じ心境らしい。
彼女は、それ以上の詮索はせずに、つづきになっている給湯室に引っ込んで、暫くするとコーヒーの入ったカップを持って出てきた。それを大佐専用のものだと気付いたエドワードは、小走りにリザに駆け寄ると「俺らが持ってくよ。大佐のだろ?」と手を差し出した。
リザは一瞬考えて、それが彼なりの気遣いだと悟ると「お願いね」とそっとカップを渡した。
アルフォンスも、エドワードが「俺ら」と発言した時点で、自分もその中に含まれているのは気付いていたので、指摘される前にエドワードについて部屋を出て行った。
ちゃんとぺこりと律儀な一礼をした後にだ。

そこで少し困ったのはハボックだった。
いきなり二人きりにされて一体どうしろというのだ。と、いうか彼女に何を言えばいいか分からずに少し困った。すると、暫くして、小さな息とともに、彼女の凛とした声がかかる。
「あの子たちに仲立ちをお願いしなくても、私は貴方の言葉さえあればとても嬉しいのだけれど?」
「――え。」

驚いて振り返ると、リザは既に給湯室に引っ込む直前だった。
しかし、ハボックはしかと目撃した。耳まで赤くなっている彼女の照れ顔を。
「・・・女に先に言わすのは、男としては甲斐性無しかね・・・」
複雑な表情のまま、銜えっぱなしで火の点いていない煙草を灰皿に押し付けると、その手で頬を掻いた。
やっぱり聞かれていた、とか、何処から聞かれたのかとか、疑問はあったのだけれど。
「でも、子供にエドワード君たちは、素敵だと思うわ」

これでほぼ全て、解消された。

再び苦笑すると、ハボックは腰を上げた。
「中尉殿はあの兄弟を気に入ってますからね。・・・俺は先に作業に戻ります、ホークアイ中尉」
冗談交じりの敬礼を、見えない相手にすると彼は踏み出した。
ただ、去り際に一言だけを残して、赤面が治りかけたリザを再びその状態に舞い戻らせて。

「そーゆー話は仕事が終わってじっくり。・・・リザ」




「了解、ジャン・・・」

返答が聞こえたかは、彼本人のみが、知る。







阿呆のように甘い話が書きたくなった。
ハボアイは日常茶飯事的にこんなやりとりをしてそうなイメージが。初っ端からリザとか言ってたら兄弟じゃなくても気付くよ、関係。
記入日不明。











微妙に親子設定。



リザ・ホークアイ中尉争奪戦





「こればっかりは譲れねぇぞー?大将」
「こっちこそ。中尉は俺がもらうから」
「子供のくせに何を言っている。・・・・中尉はちゃんと私がエスコートするから諦めたまえよ」

三者三様の面々が、ぐっと睨み、互いに牽制する。――そんな状態が、もうかれこれ三十分は続いていた。時間は既に休憩時間をぶっちぎっていたし、会話の中心にいた人物はとっとと自分の持ち場に引っ込んでしまった。周りでも黒いオーラを発生させている三人にビビりながらも仕事をするファルマン・ブレダ、フュリーの姿がある。
居合わせているだけのエドワードならともかく、ロイとハボックは、後々溜まった仕事に追いやられるのは目に見えていた。大丈夫なんだろうか、と思わす心配せずにいられない。
まあ、それは本人たちが一番理解していることだろうがしかし、だからと言ってこの言い争いから抜けるつもりはないらしい。
曰く、「ホークアイ中尉と今夜のディナーを共にするのは誰か」。

正直に言えば、傍観しているフュリーやファルマンやブレダだって、できることならば混ざりたい言い争いだ。

――他の司令部に比べると、ここ数年は大分平和で穏やかということで、割と女性軍人の多い東方司令部。しかし、所詮どんなに女性進出が著しいとはいえ、野郎が大半を占める軍、の東部を、焔の大佐の補佐官として取り仕切る、凛とした華。
冷静沈着で、冷たい人間に思われがちだが、ふとした瞬間に見せる微笑は誰の心でもすぐに融解させてしまうほどに美しいと実しやかに囁かれる。そんな彼女に、憧れない訳がない。仕事ではとても厳しいが、プライベートでは優しい一面を見せるリザは、特に子供好きという訳でもないが、殊更エルリック兄弟には優しい。彼らが和気藹々と話しをしている場面は、見ていて素で癒される。
その意見はロイもハボックも同じだ。しかしそれはあくまで、エドワードたちを「子供」として認識しているからそう思うのであって、曲がりなりにも(と言うとエドワードに失礼だが)男として認識するならば容赦はない。それ以前に、ロイとエドワードが、ツーショットで顔を合わせた喧嘩をしている間に入り込もうとする人間はいない。
それでも今回珍しくハボックが入っているのは、ひとえにリザの為と言えよう。涙ぐましいことである(当のリザ本人は誰の味方をするつもりもさらさらなさそうだが)。

「街の女性にしょっちゅう手だししてる大佐に中尉は渡せません!」
「あながち、中尉に相手してもらえないからあてつけで付き合ってるだけだったりして?・・・・うっわ大佐サイテー」
「・・・・・やきもちをやくならもう少し色っぽくお願いするよ」
「違うし。つか、鳥肌立っちまったじゃねえかよ色ボケ大佐」
「私も立ったよ・・・・色ボケとは何だい、フェミニストと言ってくれ」
「立つなら言うなよ気持ち悪ぃ!ていうかフェミニストはいいのかよ!」
「無駄だ大将、それに関しては大佐、開き直ってる」
「うっわぁ・・・・ますます中尉渡せねぇー・・・・」
「心底嫌そうな表情で言うのはやめてくれないか」

そんな会話をBGMに仕事を進める面々の表情こそ心底嫌そうだったことに気付いていてもあえてロイはスルーした。

もうそろそろいい加減にしてくれ、と傍観者三名が頭を抱えそうになったとき。タイミング良く入室してきた人物が、三人には後光を放つ救いの女神に見えた(大袈裟な)。
「もう決まりましたか?そろそろ仕事に戻っていきたいのですが」
書類を片手に、必要とあらばロイを執務室に引っ張っていく覚悟であろう雰囲気を纏うリザは、数十分前となんら変わりない光景に小さくため息をつく。
「中尉の意見聞いたら一番早いんだよ!ねえ中尉は誰とがいい?」
やはり、いい加減平行線な会話に辟易していたらしいエドワードが口をついた。反論もなく、うんうん頷いているので、ロイとハボックも同意権だったのだろう。そうねぇ、とリザは珍しく間延びした呟きを漏らす。

「一緒に行きたい、という気持ちを同じだと考えて、消去法でいくなら・・・・仕事を残した人とは絶対に行きません。と、いうわけでエドワード君かしら?」
「やたっ♪」

その一言に撃沈した大人二人を尻目に、エドワードは小さくガッツポーズを作った後、いつ、どこへ行くかや支払いは割り勘だの俺が払うだの、そういうことを流れるような勢いで決定すると、二人して部屋を出て行く。
「大佐、ハボック少尉」
ふと思い出したように、リザがひょいと頭だけ出して、打ちひしがれてどこに設置されているのかも不明なスポットライトの下で項垂れている約二名に声を掛ける。二人が顔をあげると、リザはふっと頬を緩めて言った。


「中央通りの、パスタ専門店に六時から七時まで」

「「・・・・・・は?」」

「・・・・それ以上は、待ちません」


ホークアイ式、“飴と鞭”といったところ。
彼女の真意に気付くと、ロイもハボックもとたんに元気になる。

つまるところは、“親子権利争奪戦”。ライバルを装って、実は子供も勝者へのプライスと気付くとやる気も更に拍車が掛かる。勿論、勝った負けたに関わらず、ご相伴にはありつけるだろうが、悲しいかな、こういうもので最後に来た人間は、誰であろうと少なからず、少しの間は空気に隔てられるという嬉しくないおまけが待っている。

金色の女神と仔猫(それと、必然的に付けられる可愛らしい鎧の子)を賭けて。
「勝負だハボック!」
「望むところっスよ大佐!」
とはいえ、残っている書類量は圧倒的にロイの不利。
しかし冗談ではよくやっても、真剣勝負のときは、「上官命令」と言う名の強制妨害、またはハンディーキャップを行使しようとしないところが、ロイが部下に慕われる所以だ。
勿論、すかれる理由云々だったらギリギリまで書類を溜め込んでも一応は期限を守っていたり、破天荒なことを唐突にするところ等、数え上げればキリがないが、関係ないので今は割愛だ。
バタバタと、凡そ軍人らしからぬ全力疾走で駆けて行った上司と同僚の必死な姿を見ていると、完全に背景と同化していた三人は苦笑するしかなかった。










「協力してくれて有難うね、エドワード君。・・・・尤も、最後でさすがに気付かれたでしょうけれど」
「どういたしまして。別にいいんじゃない?あの人ら勘いいからどの道いつかバレてただろうし。それより中尉、アルも一緒に連れて行っていいの?」

無人の廊下を歩きながら、リザとエドワードの会話は続いていた。
少年の質問に、「ええ、勿論」とリザは微笑む。
「きっとあの二人もアルフォンス君だったら歓迎するわ」
「良かったぁ!アルを宿に放置してたら本の虫になりかねないからさ。あいつ普段散々俺に休めだんなんだ言ってる割に人のこと言えないんだよなぁ」
「そうね・・・宿の部屋になんて一人でいるより、賑やかな場所の方が楽しめるものね。人目が気になるならボックス席を借りる?どうせ大佐が妙なプライドを持ち出して全額出すって言い出すわ」
だから、と茶目っ気服務提案に、エドワードは苦笑して応えた。

さぁ、勝者の女神と仔猫はどちらの手に――?





FIN

この話(ていうかうちの)のロイさんって一体誰が一番好きなんだろう(笑)
余談になりますが、勝利の女神&仔猫ではない。誰かを勝たせようなんて優しくないし不公平しないから。あくまで勝者につく女神と仔猫(笑)
家族設定濫用しまくり。好きなのよ・・・・・。(04.12.6)