きっときっと、大切なコト。
「・・・と、云う訳で。犬夜叉。私はもうお前の事は諦める。」
一瞬。
何を告げられたのか理解出来ずに、犬夜叉は硬直してしまった。
それ以前に、何の前触れもなく彼女・・・桔梗の方からこちらに訪れてくるのは稀な事な上、唐突というのも原因の大部分なのだろう。
1分経過。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、と・・・・・・・」
ようやく思考能力が回復してきたらしく、犬夜叉がようやく重い口を開いた。
それは純粋に驚いての事なのか。それともショックなのか。安堵なのか。
ともあれ、ぐるぐると考えのまとまらない頭の中を必死に鎮めて、犬夜叉は次の言葉を考えた。
「はっきり云えば、お前を好いていた事は事実だが、今は本当にどうでもいい」
ぐさっ。
何かが心臓に突き刺さった気がした。
やはり混乱しているのはショックだったからなのだろうか?
「・・じゃぁ、今は別のヤツが好きって事かよ・・・・」
「・・・・まあ、そう云う事になるな」
あっさりと云われ、何とはなしに犬夜叉は複雑な心境に陥ってしまった。
そりゃあ、自分は桔梗を選んでおきながら、結局最近はかごめにしか目がいってないし、現に桔梗の事だって、今の今まで本人の存在を認めるまで綺麗さっぱり思考の中から消え去っていたくらいだ。文句は云えまい。
実際彼も、所謂二股状態は、彼の元々である律儀さと誠実さの所為で心苦しくて仕方がないし、これまた彼の元々である独占欲の強さが影響して、彼女等に付く悪い虫は徹底的に排除したがる所もある。
だが、前の通り、犬夜叉は、悪い虫が付いて欲しくない対象から、無意識に桔梗を外していた節がある。
かごめが聞いたらじゃあ何で私の時はあんなにガミガミ怒鳴るのよとでも云われそうだが、とにかく彼は既に、かごめに関しては鬱陶しい程口煩いくせ、桔梗のことは?と訊かれたら今や返答に困ってしまう程だった。
一言で云うと、これも薄情な話だが、犬夜叉としてもあまり桔梗に未練があった訳ではない。
「・・・・まさか、その好きなヤツ・・・って奈落とか云わないよな?」
あり得ないとは思いつつも、一応答えによっては敵対しなければいけなくなる可能性もあるので確認する。
案の定、呆れた表情付きで、桔梗はそんな訳万が一でもないだろうと即答した。
「誰があんな喰えもできなそうな若布頭の殿気取りなどに惚れるか」
気持ちは分かるが若布頭はちょっと酷いよ。桔梗さん。
腰に手をあてて一つ溜息を吐き出すと、犬夜叉はそれまで腰掛けていた御神木の根元から立ち、桔梗を見据えた。
「・・・じゃあ、敵同士になるって事はねえんだな」
どういう形であれ、彼女と対峙するのだけは、いくら今どう思っていようが過去の蟠りは消えないのと同じく、感情だって少しは残るのだから、できる限りあって欲しくない。本当の意味で安堵した・・・・ら。
意外にも、返って来た言葉は
「いや、多分間違いなく敵対するな。それも全力で」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「―――何で?」
もうそれしか頭の中に浮かんでこない。
「当然だろう?お前はかごめを好いているのだから」
さも当たり前のように、さらりと爆弾発言を吐かれた気がした。
いや、気がしたじゃなくて、本当にした。
(俺がかごめ好きだったら桔梗に不味い事?さっき俺、思いっきり未練無ぇって云われたって事は・・・)
回答に行き当たるまでに大分時間を要した。さっきから本当に調子が崩れて・・・いやそれよりも。
犬夜叉は、頭の片隅で自分の理性とか常識とか、そういうものが今から言葉にしようとしている事を止めておけと必死に伝えているように思った。だが、確信するまで気になっていそうなのも事実で。
「お前・・・・・・・・・女だよな?」
「同性が同性を愛するのは何か罰がある事か?」
問題無いだろうとでも云いたげな桔梗の表情が目の端に映った気がするが、犬夜叉にはもうそんな事どうでもよかった。頭の中で色々葛藤が始まってしまった犬夜叉を他所に、桔梗は更に告げる。
「今日のは宣戦布告を兼ねた訳だ。言っておくが私は冗談は云わんぞ?」
駄目押しのような言葉が終わるか否かの内に、桔梗はくるりと踵を返した。
その動作で犬夜叉もはっと我に返る。
「桔っ・・・・・・・・・!」
「云ったからな?次会ったら覚悟しておくんだな」
艶やかな笑みを口の端に湛えると、彼女は空気のように溶け消え、やがて見えなくなった。
残された犬夜叉はと云うと。
(同性愛って・・・・・。嘘だろ?あんだけ嫌ったような素振り見せといて・・・・・)
頭の中で色んなものに対してショックを受けて、立ち尽くすばかりなのだった・・・・・・。
【終】 ちょっと待たんかい。
楽しかったの一言に尽きます(色々つっこみどころ満載)。はっちゃけすぎです。ごめんなさい。
最初考えてたのから相当掛け離れてます。でも犬かご桔はこんな感じにぎゃあぎゃあやってるのを書きたかったので、ある意味本望かもしれませぬ・・・・(それにしてもフザけすぎ。)
えっと。一応、この同盟参加して下さってて、サイトをお持ちの方だけ持って帰っていいです。
てかこんなの誰が欲しがるか!!!(一人突っ込み)