※雰囲気で感じて下さい(短め)












くいと顎を上向けられ、無理やりに視線を合わせられた。
それでも、わずかばかりの反抗だろう。少女はふいと目線だけを逸らす。

それを青年は嗤った。ひどく歪んだ笑みを浮かべている自覚はあった。

「お前は、俺のものだ」

一字一句、聞き洩らすことすら許さないような、はっきりとした口調だ。
ぴくりと線の薄い少女の肩が震える。薄く紅を引いた口元が戦慄いていた。
矜持は高くは無いが、かといって低くも無い少女に度々こうして告げていた。

逃げることを許さないように(逃げる意思すら少女にはないと知っているのに)

逆らうことを許さないように(逆らうなど、一度として少女は行ったことが無いのに)

これは、青年の自分勝手な独占欲を満たす為の行為であることを青年は自覚していた。
きっ、と少女の眦がきつく青年を睨めつけて、ぱしりと顎へと這う青年の手を弾いた。

「たとえこの身が貴方のモノになろうと、私は私だけのものよ」
「は、」

ぞくりと背筋に寒気に似たものがよぎる。己のものになっていながら、
未だ自我を持ち続けるその眼がたまらなく魅力的に感じて、青年は笑みを深めた。

「それでこそ、俺の持つに相応しい女だ」



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深淵に堕ちた
*このドMが(初出:08.05.26)*