何で、こんなことになったんだろう。 はふ、と気の抜けた溜息をつきながらかごめは思った。 お互いに用事が重なって、なかなか会えない日が続いていたので、今日彼と会うことをとても楽しみにしていたはずなのに、喧嘩だなんて。 いつもにも増して不機嫌そうな顔のまま、少し離れた場所の自動販売機の前に立っている後姿をぼんやりと眺めながら、もう一度小さく溜息をついた。勿体無い。一緒にいられる時間は限られているのに、何をしているのだろう。自分も、彼も。 本当にどうでもいいことだった。引っ込みがつかなくなり、事態が悪化してしまい、いつもならばするりと出て来る謝罪もどうしてか喉に詰まって出て来ない。彼の言い方はいつだって横暴で乱暴だが、こちらにだって非はあった。 彼の言いたいことだって、ぶっきらぼうな言葉の端から伝わってきていた。 (やっぱり、謝らないと) 時が経てば、何事もなかったかのようにまた自然に付き合えるけれど、根本的な問題の解決にはならない。彼と一緒にいるときに感じる安心感を、タイミングを逃したという理由でぎくしゃくしたものに変化させたくないのだ。 ジュースを持って戻って来た彼はやはりまだ眉間に2本ほど皺が入っていた。 無言でどかりとかごめの横に座る。いくら口論になったからとはいえ、意地を張って遠くに座られなかっただけマシかもしれない。 「あのね、犬夜叉。さっきの」 ことなんだけど、と言葉は続かなかった。 ずい、と眼前にジュースの缶を向けられて、反射的に顔を引く。 「・・・・・・・・くれ、るの?」 「余ったんだよ、ジュース当たって」 意外に思いながらもかごめがジュースを受け取ると、当たりが出たからもう一本、が謳い文句の自販機を顎で指して、犬夜叉は自分の手の中のジュースを開けた。何でもなさそうにしながら、視線が泳いでいるのはこちらの反応を気にしてだろう。 彼は、かごめが怒っているままなのだと思ったのだろう。だから、自分が自動販売機にジュースを買いに行くことは認識していても、買うところまで見られていないと思ったのだろう。 彼が指差した自動販売機は確かに、当たりルーレット付きのものだったが、彼はその隣の、何の機能も付いていない自動販売機で、かごめの好んでいるジュースを買っていたことを、かごめは見ていた。 指摘すれば、子供っぽく顔を真っ赤にして怒って来ることも分かっていた。 照れる犬夜叉に、どさくさまぎれに「ごめん」と言うことも出来た。 しかし、純粋に彼の好意が嬉しくて、茶化すのが勿体無く感じた。 「・・・・・ありがと」 「・・・・・おぅ」 隣にある肩に頭を寄せて、小さくごめんね、と呟くと、俺も悪かった、と小さな声で返って来て、 かごめはくすっと小さく笑った。 いつもありがとうの言葉 *わんこのイメージは原作初期頃です。なのでちょっとツンデレ入ってるんですが、お姫のリアクションが気になって気になってしょうがない状態。で、すぐバレそうな嘘を咄嗟に言っちゃうのですがお姫にはバレバレでしたとさ。(初出:08.05.07)* |